第209話 悲しいお知らせ
KnightNightのメインシップが墜落し、大破した。
甲高いベルの音と共に、空に赤い煙が撃ち上がる。同時に、視界に『試合終了 勝者:オケアノス』というウィンドウが映った。
思わぬ決着に、夜暗さんは後ろ頭を掻く。
「Ωアーツ、出し惜しみするんじゃなかった……」
Ωアーツ!? この人がKnightNightのΩアーツ使いだったのか。
「ここからが魅せ場だったのに、残念」
「た、楽しい戦いでした。決着をつけられなかったのが残念です」
夜暗さんは流し目で僕を見る。
「名残惜しいなら今度ウチのコロニーに来なよ。そんで、私を指名しな。NG無しだから、バトルも受け付けるよ」
「か、考えておきますぅ……」
絶対行かない。ホストとか、絶対無理……。
「またね、おチビさん」
夜暗さんは手を振って場を去る。なんか、危ない色気のある人だったなぁ。
「それにしても、まさか単独でメインシップを落としちゃうなんて。さすがだね、ラビちゃん」
今回の作戦の全容は把握している。
まず砂を放射し、敵前線を麻痺。同時に戦場を砂塵で見にくくする。
次にサブシップによる特攻&ソルニャー風船ばら撒き。敵のレーダーの攪乱と主砲の誘導を同時にこなす。
狙撃で主砲破壊→メインシップ突撃→メインシップとサブシップの攻撃で敵艦のフレアフィールドを剥がす→ミサイルで装甲を破壊(侵入経路確保)→ソルニャー風船追加→メインシップから風船に擬態したラビちゃんを射出→敵メインシップに侵入→敵メインシップを内部から崩壊させる。
これが大体の筋書き。
ちなみに今回は砂があったから砂を射出したけど、本来は水で同様のことをやる予定だった。大体のフィールドに水場はあるため、水を吸い上げ戦艦に内蔵した塗料と混ぜて射出し、敵スペースガールの顔面にぶつける予定だった。砂も水も無ければ煙幕を使っていただろうね。
ただ水には戦場に死角を作れないという弱点がある。煙幕は有限だし、戦場の死角が広がり過ぎてこっちもやりづらくなる。砂は無限で拘束力があって死角の広さも良い感じだ。砂がベストだね。
「え? え?? なにが起きたの!?」
「い、いつの間にかうちが勝ってる……!?」
ちなみに作戦の肝の部分は大多数の兵には伏せられていた。少しでも相手に気取られないようにするためだ。
だからオケアノス軍の面々も突如戦闘が終わったことに驚いている。
「まさに怪盗の本領発揮だ」
戦艦を盗む。
あらゆるセキュリティを突破し、目的の宝を盗んできたラビちゃんだから出来たことだ。
ロゼッタさんの指揮能力、イヴさんの操舵センス、ラビちゃんの隠密スキル。全部が上手く噛み合った結果掴んだ勝利だね。
正直僕は主砲を壊しただけで、大した活躍はしていない。
「そろそろかな」
視界が暗転する。
目が覚めると、僕はメインシップのレストルームに戻っていた。目の前にはラビちゃんが立っている。
「どうよシキちゃん! 今回は私の勝ちだねん♪」
Vサインをするラビちゃん。
「今回ばかりは負けを認めるよ」
「それじゃ、ご褒美のちゅ~……」
ラビちゃんはキス顔をする。
僕はラビちゃんの口を手のひらで塞ぐ。
「し、しないよ!」
「んぐぐっ! まったくシキちゃんは照れ屋さんなんだから~」
「――ここにいたか」
レストルームの扉が開き、ロゼッタさんとイヴさんが入ってきた。
「お疲れ。首尾よくいったみたいだな」
イヴさんはタバコに火を点け、ソファーに座る。
「お、お疲れ様です!」
「お疲れい! なになに、祝勝会でもするの?」
「いいや、君達にステージBの結果を伝えようと思ってね」
ロゼッタさんは手に持ったタブレットをこちらに向ける。タブレットにはステージBの結果が映っていた。
僕らオケアノスは完勝をおさめた。一方で、ステージBの火緋色金vsフリーパーチでは火緋色金が勝利したそうだ。結果はタイムアップで、サブシップ2隻差で火緋色金の勝利。
「火緋色金も順調みたいじゃん。いいね……そうこなくっちゃ。この前受けた屈辱、晴らさせてもらわんといかんからねぇ~」
ラビちゃんはメラメラと燃えている。
「僕らの次の相手はフリーパーチですよね?」
「そうだよ」
「フリーパーチのデータとかって無いんですか?」
「フリーパーチは一回戦と二回戦で出撃するメンバーの5割が変わっていてデータもくそもないな。次もまた半分以上入れ替えだろう。戦術という戦術も無く、ただ個人の実力で押してくるチームだ」
ロゼッタさんは呆れたように言う。
「戦術無し。それでもタイムアップ……」
「そう。戦術ゼロで、ダントツ優勝候補の火緋色金相手にタイムアップまで粘ったんだ。個人技だけでここまでやれるのは異常だよ」
「個人プレーごり押しスタイルかぁ。そういう手合いは私やシキちゃんの絶好の獲物じゃない?」
1対1を挑んでくれるならこちらとしてはやりやすいね。
「あの、ロゼッタさん。これまでのフリーパーチの出場選手の中にシーナって人と、ツバサって人はいましたか?」
確かあの2人はフリーパーチ出身だったはず。敵で出てきたら、相当厳しい戦いになる。
「メンバー表の中にあの2人の名前は無かったよ」
「そうですか」
良かった。
「ちなみにさ、シキちゃんってタイマンで負けたことあるの?」
「全然あるよ。最初のランクマッチの時だって――」
と僕が話を切り出すと同時に、着信が入った。
僕はスペースウォッチを操作し、通信相手を見る。
(あれ? どうしたんだろ)
着信に出る。
『2連勝、おめでとうございます』
「ありがとうございます、シーナさん」
なぜかラビちゃんが怪訝な表情を向けてくる。顔に『誰よシーナって』と書いてある。
『さすがのご活躍ですね。とはいえ、あなたの快進撃も次で止めさせてもらいますよ』
「え?」
『上の許可は取ってありますので、言いますね』
嫌な予感が、背筋を撫でる。
『代理戦争第三回戦に限り、私とニコさんとクレナイさんがフリーパーチチームに参加します』
「えぇ!!?」
僕はつい、立ち上がってしまう。
僕以外の3人は唖然としているが、説明は後だ。
「どどど、どうして次だけ!? ランクマッチ関係で忙しいのでは!? U20もあるって聞きましたよ!!?」
『目当てはあなたですよ、シキさん』
「僕ぅ!?」
『あなたと戦うことは良い練習になるということです。ツバサさんとレンさんも出たがっていましたが、リアルの都合で欠席とのことです』
その2人までいたら詰んでいた!
特になにもかかっていない勝負なら喜ぶことができた。でも今回は違う。月上さんの願いと洗いっこがかかっている……これは悲報だ。
『ちなみに、私が総指揮を執ります。それでは、当日を楽しみにしています』
通信が切れる。
僕は顔を引きつらせながらも、3人の顔を見る。
「ど、どうしたのシキちゃん?」
「なにかあったようだね」
「早く言えよ」
「あ、あのですね……僕を1対1で負かしたことのある2人が……次の第三回戦に、出て来るみたいです……」
クレナイさんには最初のランクマッチで、シーナさんには模擬戦で負けたことがある。クレナイさんにはレンさんもついていたけど、あの戦いは援護射撃が無くても僕の負けだった。落ちるのが早いか遅いかの違いでしかなかった。
あの2人が手を組む(+ニコさん)。
やばい……これはやばい。
しかもフリーパーチって、今シーナさんが言っていたメンバーがいなくても他のコロニーに渡り合っていたんだよね? ってことはエース級があと1人か2人居てもおかしくない……。
と、遠のいていく……温泉が遠のいていくぅ~~~~っっ!!?
「ど、どうしたのシキちゃん!? 泣きそうな顔して!?」
「うぅ……温泉がぁ……温泉がぁ……!」
「温泉? 温泉ってなに? ちょっと、シキちゃん???」
次の戦いは本気の本気で臨まないといけないみたいだ。
洗いっこのためにも、絶対に……負けられない!
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