第208話 とっつ☆げーき
KnightNight・メインシップ『ホワイトシンデレラ』。
そのブリッジは混乱に陥っていた。
「フレアフィールド回復まであと1分25!」
「被弾箇所21! 完全修復まで2分55!」
艦長席に座るはKnightNight売り上げナンバー4のホスト『壱竺白夜』だ。
「落ち着け。エンターテインメントは始まったばかりだ。クール・イズ・ベスト。ホストは常に余裕であれ」
最後にウィンクして決める。
白夜の檄(?)を受け、クルー達も同様にウィンクして「「「イエス! ボス!」」」と答える。
白夜達、ブリッジクルーはまだ気づいていない。艦内に異物が紛れ込んでいることに。
「キャプ! おかしいです! 先ほどからハンガーと連絡が取れません!」
オペレーターの1人が叫ぶ。
「なに?」
また別のオペレーターも、
「た、大変です……艦内の味方の反応が次々とロストしています!」
「なんだと!?」
ばら撒かれたソルニャー風船。これにより、敵機の反応が氾濫した。
KnightNightはレーダーによる索敵を一時的に制限。カメラによる索敵に切り替えた。切り替えてしまった。そのせいで、風船に紛れた異物の侵入を許してしまった。彼女にとって、カメラの死角をつくことなど朝飯前だ。
レーダー無効。フレアフィールド消失。戦艦には多数の穴。
攪乱完了。防壁無し。侵入経路アリ。
――『これだけの条件が揃えば潜入は容易だ』と、怪盗は笑う。
すでにメインシップ内の4割の人員は暗殺され、その魔の手はブリッジに迫っていた。
白夜の後頭部に、ガン! と何かが当たる。
「!? 誰だ!?」
白夜は武装を展開し、振り返るも、誰もいない。あるのは床に転がった赤い弾丸のみ。
頭部の耐久値が100の内3だけ減っていた。なにか攻撃を受けたことは確実だが、それにしてはダメージが少なさ過ぎる。白夜は頭を悩ませるが、答えには辿り着けない。
「あれ……」
「ぎゃっ!?」「うわっ!?」
ブリッジクルーの首が次々と落ちていく。
白夜はブリッジ内を見回すも、クルー以外の人間は見当たらない。なのに、どんどんクルーの首が落ちていく。やがて、ブリッジ内には自分だけになった。
「何が起きて――」
「お疲れ様♪」
気づいたら、白夜は背後を取られ、ナイフを首に添えられていた。
「どどど、どういうことだい……? まさか君は、体を透明にできるとでも言うの――」
言葉を言い切る前に、侵入者――ラビリンスは白夜の首を断ち切った。
「ごめんね。時間が無いんだ」
ラビリンスは誰もいなくなったブリッジを確認し、片っ端から操作盤をいじっていく。
「さすがに自爆スイッチとか、そういう都合のいいもんはないよね。うーん、とりあえず、装甲は切離、切離っと。他にも、いらない設備はぜ~んぶ脱ぎ脱ぎしましょうね~♪ 切離、切離、切離」
戦艦の装甲が剥がれ、幾十の設備も切り離される。
戦艦の防御力は著しく低下し、代わりに速度が上昇する。
「しょうがない。スマートじゃないけど、これしかないか」
ラビリンスは操作盤でブリッジの入り口を施錠した後、操縦桿を握り、遠くに見える大遺跡に向けて加速を始める。
「だだだだだだだだだだだだだあっ…………! さぁ、派手に行きましょうかぁ!!!」
異常を嗅ぎつけたスペースガール達がブリッジの扉をノックするも、無視。扉の先から銃撃音が聞こえるが、さすがにブリッジの扉だけあって頑丈ですぐには壊れない。
勝利を確信したラビリンスは右の人差し指を天井に向ける。
「大怪盗~~~~~~とっつ☆げーき!!!!!!!!」
戦艦は大遺跡にノーガードで激突。大遺跡を大破させ、戦艦もコントロールを失う程のダメージを受ける。そのまま砂漠を転がり――戦艦は派手に爆発する。
戦闘時間25分。
オケアノス vs KnightNight。KnightNightのメインシップ撃墜により――決着。
勝者、オケアノス。
ちなみに艦内の様子は外に中継されていないので、視聴者は何が起こったのかわけわからないという、KnightNightにとって最悪の散り様です。





