第207話 艦上の戦い
アスター2周辺の空域は激戦となっていた。
左右を敵サブシップ2隻に挟まれ、正面には敵メインシップとサブシップ2隻。
僕はワイバーンを使い空を駆け、なんとか敵スペースガールを撃破していくも、防衛線はドンドン押し込まれていく。
(ダメだ……いくら倒してもキリが無い)
敵機はすでに50機以上落としているけど、終わりが見えない。
「……アスター2を捨てて離脱しようか」
それでスピカ・セーラスと合流――
「離脱はさせないよ」
僕と太陽の間に、誰かが割り込んだ。
僕はすぐさまアステリズムで頭上の敵を狙うも、敵はレーザー弾を躱し、手に持った長い機械の棒を向けてきた。
「棍棒……違う!」
僕はワイバーンで後ろに飛ぶも、逃げ切れない。
襲撃者は棒の先にレーザーの刃を展開し、突き出してくる。体は躱せたけどワイバーンは穿たれた。
(槍か!!)
僕は傷ついたワイバーンを捨て、ウィングに移行。そのままアスター2の艦上に飛び移る。槍使いも僕を追って艦上に来た。
「可愛い顔して落とし過ぎだよ、おチビさん」
黒のタンクトップに軍パン。垂れ目で、灰色のロングヘアーの人。首元にはタトゥーがある。
その瞳は真っ暗で、テンションは低い。けど、なんか色気がある。腕に筋肉がしっかりあって、腹筋も服の上からでもわかるぐらい割れている。身長も170はある。
「……あ、あの……スーツ、着てないんですね」
「私はいいんだよ。この芸風で人気だからさ。あ、これ名刺ね」
槍使いの人は風に名刺を乗せ、風下にいる僕に名刺をパスする。名刺を受け取り、名を読み上げる。
「夜暗……さん」
僕は名刺を手放し、身を屈める。夜暗さんは槍で名刺を突き刺し、僕の残像を貫く。
「視線は完全に名刺にあったのに。視野が広いね」
僕は体を回転させ、蹴りで夜暗さんの足を払う。
夜暗さんは前のめりに倒れそうになるも、槍の柄を艦上に押し当て、高跳びの如くジャンプして距離を取った。僕はスタークの速射モードで追撃するも、夜暗さんは槍を回転させてレーザー弾を弾いた。
「……あなたがエースですか?」
「そうだよおチビスナイパー」
夜暗さんの腰についているアタックピース12基が射出される。小型の端末からレーザーの刃が生え、僕に向かって飛んでくる。
シールドピース無しのアタックピース全振り。それにしても、
(ピースの速度が速い! シーナさんみたいに脳波強度が高いタイプか!)
僕もアステリズム12基を展開する。
僕のアステリズムと夜暗さんのアタックピースは激しい空中戦を繰り広げる。
僕と夜暗さんも動く。僕はスタークの連射で夜暗さんを狙うも、夜暗さんはレーザーを避けて接近してくる。
(簡単に躱してくれる! このゲームのアタッカーは変態ばかりですか!)
僕は右手のみでスタークの射撃を続行し、空になった左手を前に出す。
(新武装のお披露目です)
僕の左手の指の第一関節の連結が外され、第一関節から先が手の甲の方へ畳まれる。5本の指に空いた穴から、僕はゴムを噴射する。
5本の指から射出されたゴムは1瞬で膨らみ、5体の僕の姿をした風船となる。
「デコイバルーンか……!」
これが僕の新しい武装だ。アサルトライフルを抜いて、このデコイバルーンを入れた。
夜暗さんは5体の風船に体を覆われる。
僕はスタークを狙撃モードにし、発砲。風船ごと夜暗さんの左肩を撃ち抜く。バルーンの中には燃焼ガスが詰まっているため、レーザーに触れた瞬間爆発。5体の風船の爆発を夜暗さんは一身に受ける。
「……やってくれるじゃないか」
ダメージはほとんど無い。燃焼ガスと言ってもこの体に内蔵できるレベルだから、攻撃力は低く、全身の耐久値を10~20減らした程度だろう。爆発はただの目くらましに過ぎない。
(胸の中心を狙ったんだけど外れた。ギリギリ身を捻られたね。本当に……エース級のアタッカーの反応は怖い)
ちなみにデコイバルーンは1度発射(5体分を射出)すると自動リロードが1分かかる。
「データに無い武装だ」
「す、凄いアタッカーの方が多いので、距離を取るための武装を入れました」
陽動、追尾切り、死角の確保、レーダーの誤魔化し。
この武装1つで出来ることは多い。僕の肌に合う。鬱陶しい手がいっぱい打てる。
「あなたが最初の被害者です」
「そうか。光栄だね」
右腕1本になっても一切気勢は衰えない。すぐさま加速してくる。僕の全力加速をもってしても振り切れない。
(この人もミフネさんと同じだ。ウィングを使っていないのに凄まじい加速力。スラスター能力を上げる拡張パーツでも入れてるんだろうね)
アステリズムを引かせ、位置を調整する。
「ここだ」
僕は足を止め、ワンオフ式を手に取る。
「高出力モード……!」
レーザーサーベルを高出力モードで展開。夜暗さんはワンオフ式の長い刀身を見て、すぐさま回避体勢に入る。僕はサーベルを振り上げる。
「「残念」」
僕と夜暗さんは同時にそう口にした。
夜暗さんはレーザーサーベルを横に飛んで躱す。ここまでは計算通り。僕の斬撃はここで終わらない。
そのまま僕は空中のアタックピースを狙う。
「しまった……誘われたか」
その通り。わざとアステリズムを引かせて追いかけさせ、ワンオフ式の間合いに入れた。
僕はワンオフ式の1振りで3基のアタックピースを両断する。アステリズムは充電のため、1度僕の腰に戻る。夜暗さんもアタックピースを自身のもとへ戻した。
「やるなぁ」
そう言って夜暗さんは槍を肩に抱える。
「女性を堕とすのは得意なんだけどね。中々ガードがお堅いな。おチビさん」
「お……おチビさんでは……無いです。150ぐらいはあります……」
「150は小さいだろ」
「うっ……!」
「残念だけど、悠長にトークしている暇は無いらしい。そろそろ、全開で口説かせてもらおう」
夜暗さんの纏うオーラが強くなる。
僕はそんな夜暗さんを見て、にやりと笑った。
「夜暗さん……全力を出すの、少し遅かったかもしれませんよ」
アスター2を囲んでいたKnightNightのメインシップが、単独で戦闘空域から離脱した。
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