4-4. 反応
「ところで、さきの施設内上空および正面入口に現れた部隊について、どう考えている??」
原子力発電施設周りに点在する遠隔監視装置──。
それらは原子炉含め、施設全体の状態監視を目的に設けられている。
カメラのレンズ先は、対人感知機能はなく死角も多いだけに、『招かれざる客人』を即時発見・把握には向いていない。
それだけに、攻め込まれたときには迎撃さえも難しくなる。
そのため、それを補うように各ブロックには歩哨を配置している。
いまも吹雪いてしばらく経つが、この状況下での警戒には『これ』に依らざるを得まい──。
さなか、哨戒に就く彼らからは、このなかを軍用ヘリが施設上空を展開していたというのだ。
……これを聞いた時は耳を疑った。
よくも無茶な作戦を強いてきているものだ。この吹雪いているなかを軍用ヘリが展開するなど。
揚力を生み出すブレードはストラップ・パック・ナットにより本体に固定されているが、悪天候下での飛行や急激な操作は著しくナットを損耗させてしまうため、吹雪くなかでの飛行は基本控えるのが慣例となっている。
ブレードが本体から切り離され、落下した事例は過去に多く、ましてや真下に原子力施設があれば、なおのことである。
哨戒に当たっていた者曰く、一機は時計回りに施設内上空を、もう一機は反時計回りに真下に向かって投光しながら旋回していたらしい。
同時刻には、陸地からも仕切られたフェンス越しから照明が投げ掛けられ、臨海部に近い歩哨からは海上からの空砲が一時鳴り止まなかったという──。
吹雪く中での投光と空砲──。
施設内に工作員を送り込んだか……。
単なる偵察にしては、危険を冒し過ぎている。
なにより奴らには時間に大きな制約を課せられている以上、手をこまねく時間もない。
なれば、必然か──。
「予定通り彼らの『出迎え』を頼む」
……出迎え、か。
懐に潜り込まれてなお、青年からの語る口調・素振りからは焦りを感じさせることもない。
未だ、こちらが優位な状況下にあって『余裕』というわけか──。
……小心者の俺からしてみれば、とてもではないが『そう振る舞う』ことなど出来やしない。
『──してやられた』と敵意を剥き出しにし即刻政府に向かっては異を唱えていたことだろう。
しかし、こいつからは全くもって、そういった素振りを感じさせず、いまを静観している。
……さきの『世論形成』からしても、なにか『外部からの働きかけ』を期待して待っているのか??
目の前のこいつは、依然として全容を語ることをしない──。
一抹の不安を覚えはするものの、これまでの奴の手掛けてきたことを考えれば間違いなく結果は残してきていて、今回の蜂起まで至るようにもなった。
たかだか無名の個人が到底出来るはずもないことをしてきたのだ。
……いいだろう。
ここまで来たのだ。
最後まで見届けてやるさ。