734話 【「ダンジョン」魔法】【展開】
「「はる」」
「はい」
2人が、まったくおんなじタイミングでまったくおんなじ言葉で、語りかけてくる。
「たすけたい?」
「あるのこと」
「たすけたい?」
「まおうのこと」
「ふつうなら、むり」
「むりむりむりむり」
「「――――――でも」」
2人が――そっとその小さな手を、僕の手の甲へ載せてくる。
「のーねーむは」
「のーむは」
「「はるの、みかた」」
【ぶわっ】
【ノーネームちゃん、ノームちゃん……】
【ノーネームちゃんはともかくノームちゃんまでが……】
【だって、ノームちゃんはハルちゃんのお姉ちゃんで】
【ノーネームちゃんはハルちゃんが好きすぎて睡かんんんんんんんん】
【草】
「だって」
「すえっこ」
「すえっこは、かわいい」
「すえっこは、あまやかす」
「……僕が、末っ子なんですか」
見た目は僕の方が上――じゃないか、僕もこの子たちとおんなじ体だもんね。
でも精神面は、成人してる僕の方が――――――って、いや。
……女神様なら、この見た目ですでに何百年とか生きてても不思議じゃない、か。
【草】
【そんな理由!?】
【末っ子かぁ】
【確かにハルちゃん、なんにも知らなかったもんなぁ】
【それがメンタルブレイクの果てでなければ、どれだけ癒やされたことか……】
【ぶわっ】
【そ、そうだよ なにかのひょうしに、なんにも知らない状態で地上に堕とされたとか、そういう理由があれば……!】
【神話かな?】
【神話だよ?】
【世界各地にそんな感じの話があるんだよなぁ】
【英雄とか王様とかな】
【じゃあハルちゃん、マジで人間換算幼女な可能性が】
【3年半】
【+1年半】
【今のハル様が5歳児という説、非常に魅力的です】
【草】
【始原は黙ってろ草】
【草】
【一瞬でまとめて出てくるなこええよ!】
【でも、末っ子か】
【末っ子のわがままなら聞かざるを得ない】
【兄や姉としては悔しくてもな】
【甘やかされるのが仕事だからね】
【だからハルちゃん、言いなよ ハルちゃんが、したいことを】
――――――あたたかい感覚が、流れこんでくる。
2人から。
………………………………いや。
2人と、「もっとたくさんの誰かたち」からも。
「………………………………」
ノーネームさん――それにノームさん――2人のずっと後ろでは、お互いに必殺の一撃を貯め込んでいる姉さんたちが見える。
ノーネームさんもノームさんも声が小さいから、気づかれていない。
そもそも動いていない僕たちへは、まったく注意を向けていない。
あの2人は――文字通りの必殺の一撃のため、僕たちに構っている余裕なんてない。
僕たちは――――――とっくに、戦力外。
その認識だ。
警戒どころか意識も、されていない。
――――――なら。
僕のわがままを叶えてもらうのなら。
神様に――「女神様」に、実現してもらうのなら。
今しか、ないんだ。
「……ノームさん」
「ん」
僕は、頼み込む。
「――僕は、姉さんを。アル姉さんを、助けたいんです」
「ん」
こくり。
長すぎる黒髪の子が、うなずいてくれる。
「ノーネームさん」
「ん」
僕は、お願いする。
「――僕は、おじゃるさんを。なんとかして、諦めさせたいんです。ケンカ別れなんて……これが、どうしようもないことだって、思いたくないんです」
「ん」
こくり。
長い黒髪の子が、うなずいてくれる。
だって――新しくできた姉さんを見捨てるのも、新しくできた飲み友達を失うのも、どっちも嫌だから。
だから。
「これは、僕のわがままです。姉さんのしたいことを、台無しにすることです。――――でも」
ぎゅっ。
2人の小さなおててが、僕の小さなそれを――力いっぱいに、包み込んでくる。
「僕は――――自分勝手なんです。だから、どっちもしたいんです」
「ん」
「まかせて」
「すえっこ」
「おねがい」
「……末っ子なんて、慣れませんけど……はい。お願いします。姉さんたち」
こくり。
2人が、深くうなずいた。
ぱらっ――――ひゅんひゅんっ。
僕の周りを、勢いよく回る輪っかさんたちに羽根さんたち。
「君たちも、協力してくれるんですか。……そうですか」
やる気にあふれている――そんな感情が、流れ込んでくる。
………………………………。
……でも、「お母さんのためだから」ってのは、ちょっと……僕、男だし……あと、やっぱり末っ子扱いも……ねぇ……?
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




