705話 自称母さんは見事な痴女だった
「感覚があるってことは、夢じゃない……でもなんにもないし、やっぱ夢。……ん?」
白い空間で、ただただ体の感触を確かめるだけっていうぜいたくな時間を味わっていた僕は、何かの接近を感じる。
「?」
顔を上げると、ふわりと金色の横髪が流れる。
その先――ずっと遠く。
そこからとても大きな何かがやってくる。
「なんだろ、あれ」
きんきらきらきらしていてでっかいなにかが、近づいてくる。
特段に嫌な感覚もないし、むしろなぜか懐かしい気持ちにもなる気配。
「………………………………」
……けど、思ったより遅いらしい。
こうなったらお酒でも――
「あれ?」
ごそごそとしたつもりが、すかすかとなる。
どうやら今の僕の腰にはきちゃない袋さんはくっついていないらしい。
まぁさっき体を生成したばかりだし。
ん?
「生成した」?
ここ、夢じゃなかったっけ?
『……あら。あらあらまあまあ……!』
首をかしげている僕を包み込むように金色の光が包み込んできて――通り過ぎて引き返してきたのが、言葉らしきものを発している。
『アルちゃんのそっくりちゃん……でもすごく幼くてかわいいわね!』
「むっ」
出会い頭にひどい罵声を浴びた僕は、久しぶりにむっとした。
「これでも25です……いや、26になったはずです」
『アルちゃんはもうすぐ1万歳よ? それに比べると1万歳くらい幼いのよ?』
「えっ」
僕のそっくりさん――いや、なにからなにまで完全におんなじはずのあの子が、僕よりもそんなに年上?
でも、そこまでお年寄りには見えなかった気がするけど……?
『……怒られるから、それ、言っちゃダメよ? 乙女に年齢の話はマナー違反なんだから』
「それはそうですね。僕の失言です」
今度の謎の声にはうなずくしかない。
女の子――るるさんたちみたいな高校生くらいまで、もうちょっと進んで大学生くらいまではそうでもないらしいけども、それ以上になると女性は1歳でも若く見られたい生物だってのは理解してるんだ。
『まぁ1万歳って言ったって……うーん』
そういやこの声、ずっとふらふらしてたけども、僕の目の前より結構上――立った状態でえみさんとかリリさんが話しかけてくるときに近い場所から聞こえるようになってきたね。
背の高めな女性――そんな感じの口の位置。
声の調子はもうちょっと幼――若く感じるけどね。
『伸び縮みするから単純計算は難しいけど……あの子は、あなたたち人間換算で6歳くらいかな? 私たちは発生した瞬間から自我を獲得しているから難しいけど』
「そうなんですか」
『そういう意味では、「その体」のあなたはまだ2歳くらい……同い年くらいね?』
「年齢って体判定なんですか?」
うん。
この声さんは……とりあえずでるるさんみたく、話がぽんぽんと勝手にけんけんぱするようなタイプと理解した。
こういう相手に対しては理屈で唱えても、無駄。
ただただ、話にうなずいておくしかないんだって。
『でも、驚いたわ!』
「なにがですか?」
光が目の前に集まってきて――濃くなって、段々と人の形になっていく。
『「特別な引き継ぎも縁もバグもチートも忘れ形見も運命も因果も介入も無しで」、あの世界の存在として生を受けたはずの人間の貴方――征矢春海ちゃんって言うのね?――が、「ここ」にたどり着けただなんて』
「?」
るるさんと同じく、独特な感性で独特ななにかを口走っている。
よく分からないけど、どうせ聞いたってやっぱりよく分からないんだ、そのままで放置しておこう。
僕が、るるさんと似たようなものだっていう摩訶不思議な思考回路について考察しながらぼんやりしていると――目の前に、金髪ロングでボリューミーな体をした、全裸の女性が立っていた。
全裸。
痴女。
すっぱだか。
おっぴろげ。
金髪美女。
僕以外の男の憧れの存在。
見るものがないからしょうがなく見上げるその相手は――えみさんのばるんばるんというよりは九島さんのちょうどいい体型を、そのまま20代まで成長させたような姿。
どう見てもすっぽんぽんなのに、それがまるで1ミリもずれることのない美――そうだ、ギリシアとかローマ時代の彫刻みたいに完璧だからか、やましい気持ちが起きないすっぽんぽんなんだ。
違いといえば、どこも欠けていなければ色あせてもいないし、なんなら呼吸をしているってことくらい。
まぁ今の僕にはやましい気持ちになるためのものが生えてないから、たとえそうじゃなかったとしてもやましい気持ちにはなれないんだけどね。
『うーん、生殖本能が欠如に近い状態……天然ものだし、元の状態なら女の子を好きにさえなればやましい気持ちになれるんでしょうけど……』
「そうなんですか」
『ええ。あーあ、お母さん、ざんねーん』
ぱぁっ――ふわり。
なぜか残念そうな彼女は、一瞬光ったと思ったら服を身に纏う。
ちょうど姉さんや僕、あと色違いだけどノーネームさんとも同じように、1枚のさらさらとした布を体に巻き付けて腰のところで金属の鎖でゆっくり縛る感じに。
こういう服って、慣れるとすっごく快適だよね。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




