703話 真っ白なところで目が覚めた
「魔王がノックバックした。――だから、私が出るよ。みんなは引き続き、魔王以外の戦力をお願い」
――ばさっ。
話の流れとはいえ、結果的には魔王に対して「女神アルの普段の思考パターンからはあり得ないタイミング――ハルのことをごまかすための適当な攻撃」という選択肢が生まれ、無駄撃ちをさせてからの不意打ちが成功。
ために、女神はその翼を羽ばたかせ、魔王へと飛翔する。
その速度は戦闘態勢や戦場全体への指揮を維持できる限界の、光に迫る速度。
けれども――それには、うっかり漏らした秘密からの逃避という理由も多分に含まれていた。
【ハルちゃんについてくわしく】
【私たち、もう我慢できません】
【ハルちゃんが人間??】
【そんなことあるわけないでしょ】
【だよなぁ】
【そういやアルちゃん……ちょっと前にハルちゃんのこと、「弟」だとか言ってた気が みんな流してたけど、今回みたいになにかをぽろりしちゃったせいだとしたら……】
【!?】
【!!??】
【いやいや……いやいや】
【ハルちゃんがショタなわけないだろ】
【そうだよ】
【ハルちゃんはな、ロリっ子だけどショタっぽい性格としゃべり方が魅力なんだ よもやショタコンをこじらせてどうしようもない次元にまで落ちぶれた姉御共とかいうスパム製造機みたいなことを二度と抜かすな】
【あねご「待って、それって私のことディスってる??」】
【そうだが??】
【あねご!「開示」】
【おう、してみろ ハルちゃんの名誉のために血の一滴まで戦うぞ】
【あねご……「やだこわい」】
【あねご♥「みんなたすけて」】
【始原はお断りします】
【いい加減根腐れ起こした方が良いと思うよ】
【然り】
【あね「えっ」】
【草】
【草】
【草】
【なぁにこれぇ……】
【お姉ちゃんなアルちゃんが変なこと言うから……】
【さ、さすがにないよね……? ハルちゃんがショタとか人間とか】
【お羽生えてるし天使の輪っか振り回すしちっぱおっぱいあるんだからないだろろろろろろろ】
【草】
【あーあ】
【擁護するのは良いが、言葉は選べよ虫けら共】
【何様のつもりだよ草】
【始原だが?】
【草】
【さすがは最初期から推している奴らだ……ハルちゃんの正体が気になっても動じていやしない……!】
【これは動じていないふりをして、その実めっちゃ動揺してるんじゃ……】
【マジでどっちなんだ……戦いの趨勢より気になるぞ】
【ハルちゃんの性別と種族で4パターンの組み合わせが気になるぞ】
【さすがにそれは戦いの方を気にしようね】
【草】
◇
「ふむ」
僕は、寝起きはそこそこに強い自負がある。
ただし幼女になってからはいくらか弱くなっていて、だから寝起きでぼーっとしてるとるるさんに抱きつかれてはむはむされたり、リリさんに忍び寄られてすんすんされたりするんだ。
あ、そういう意味ではえみさんは安全だよ?
無駄にぎりぎりのところで理性があるもんだから、僕の寝入りを襲うとかはしていし、できないから。
だからいつも起きると部屋の隅っこで簀巻きにされてたり柱に縛り付けられたりしてるんだ。
僕としては大歓迎なんだけども、女の子同士でいろいろあるらしい。
女の子って大変だね。
僕は男で良かったよ。
九島さんは……寝坊しそうになると容赦なく正論で攻めてくるから苦手。
そんな、ちょっぴり懐かしいことをぼんやりと思い出しているうちに、僕の意識ははっきりとしてきた。
――僕が、真っ白い空間に居るっていう現状を知覚できる程度には。
「?」
僕は右を見て左を見て、下を見て――「僕の体がない」ことに気がつく。
そういや体の感覚、無かったね。
でもこれ、寝起きと同じだからしょうがないよね。
しかし、この変な状況――さては、夢。
明晰夢。
これまでの二十数年――はっきりと自我を獲得していろいろ考え出してからは20年ちょいの人生でも、多くて数回の貴重な機会。
これが夢だってことを自覚できる、珍しくて興味深いチャンス。
それに僕は気がついて、まず最初に意識したのは――
「お、生えた」
最初は白金、そして金色になり、最後は肌色――男だったときより真っ白で、けれどもぷにぷにとした幼女な肉体。
それが、幼女になってからお風呂に入るためにすっぽんぽんになったときのよに、余すところなく視界に入る。
生物、男の宿命として最初に目に入るのはすべすべでつるつるでなんにも生えていなくってなんならくぼんでいて、ちょっと体を曲げればおしりまでが見える、おまた。
「じー」
男のときでも自分のおまたがなんとなく気になってついつい見ちゃってたのが女の子になってもおんなじくらい見ちゃうのって、なんでなんだろうね。
やっぱり普段は隠されてる場所だからかな。
隠しているからこそ見たくなるのが人間だもんね。
そんなおまたの次には、体育会系じゃなかったインドアの宿命として、やせた体型ではあってもやっぱりつまめる程度にはあった、お腹のぜいにく。
ぷに。
ぷにぷに。
「ふむ……本物だ」
この感覚は、間違いなく最近の僕だ。
TSして最初の1年くらい――そのあとのるるさんたちとの時間は忙しくてできなかったし、そのさらにあとはノーネームさんや子供たちと一緒だったからつまめなかったけど、ヒマがあるときにつまみ慣れた感じ。
「この体は母さんからは生まれなかったのに」ちゃんとある、ぷくっとしたおへそがむにむにと動く。
ふーむ。
「……とりあえず服を着よっと」
夢なら簡単に服が生えるはず。
そう思ったらふわりと体を包み込む、最近着慣れた白い服が足元までを包んでいた。
「おー」
ふむ。
……こういうの、ちょっと楽しいかも。
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




