TASさん、自分のステータスを知る。
投稿直後 改稿
文章の一部を変更、追記しました。
2017/1/21 改稿
ラシーヌさんの台詞を修正
TASさん→タスさん
2017/1/22 改稿
」が抜けている場所があったので修正しました
私はラシーヌさんという人の家に居候をし始めた。
ラシーヌさん。女性。外見年齢二十代。
魔法が使える。見た所、性格は温厚。あと、たまに私目掛けて飛び掛かってくるが、理由は不明。
ここまでは私が今まで見てきた事を纏めた情報だ。
ラシーヌさん本人から聞いた話によると、彼女は神木の精霊という種族であり、この巨木の主であるとの事。
なにやら森の様子がおかしいと思い、この空間から遠隔で見てみると、私がオーク(やはりオークという種族名らしい)に追われている最中であったので、このままではいけないと思い、声を掛けたのだとか。
そして、この部屋に招き入れた後に、私が鼻血をだらだら流し始め、苦しそうにしていたため、魔法とか魔法薬とかを大量に消費して、なんとか症状を緩和してくれたのだとか。
「それにしても、タスさんはどうしてあんなに瀕死の状態だったの?血を流し過ぎてて、かなり危なかったのよー?」
「やっぱり、れすか」
「ええ。それはもう、死んでてもおかしくないくらいに危なかったわねぇ……。この部屋に飛び込んでくる前に、急に走る速度が速くなったけど……それと関係しているのかしら?ん。もしかして、固有技能だったりするのかしら?」
固有技能……やっぱり、スキルとか、ステータスとか、そういう系の概念がある感じの世界なのだろうか?
「なんですか、それ」
「ああ、こんな小さい子なら、『儀式』やってなくてもおかしくないわよねぇ……。んー。じゃあ、ちょっとステータス覗かせて貰うけど、いいかしら?ああ、ステータスっていうのは、まあ、簡単に言うと自分の能力を数値化して見易くした物ね。」
「ステータスって、誰が作ったんですか?」
「昔、魔王を倒した勇者が開発した技能の測定法を神に献上して、誰でも使えるようにしたとかなんとか。それが本当かどうかは知らないけど。まぁ、安全なものだから、心配はしなくていいわ」
そんなこんなで、私のステータスをラシーヌさんに見てもらったわけだが……
「え?え?え、えぇ?」
何やら、ラシーヌさんは困惑している模様。
何か不味い事でもあったのだろうか。
取り敢えず、紙に書いてもらった。
……が、文字が読めなかったので読み上げて貰った。
その結果を纏めると。
名前---TASさん
称号---無し
種族---読み取り失敗
性別---女
年齢---読み取り失敗
HP---39/39
MP---18/18
STR---4
DEF---3
MATK---5
MDEF---8
AGI---27
INT-1739(通常時)
技能---無し
……明らかに何やら異常な値があったが、先にそれぞれの単語の意味を纏める。
STR---力の強さ。
DEF---頑丈さ。
MATK---魔法攻撃の強さ。
MDEF---魔法耐性の高さ。
AGI---敏捷さ。
INT---知能指数。
ちなみに、平均的なステータスは、一般的な、鍛えていない成人男性で言うと全て10程度。
ある程度鍛えた兵士で、30程度の値だそうだ。
……ある程度鍛えただけで平均的な男性の三倍ものスペックになるのか、と、少し、いや、かなり疑問に思ったが、ラシーヌさんによると、この世界ではそれが普通なんだそうだ。それでなのか知らないが、鍛えていない者はともかく、鍛えている者では、男女であまり力の差はないそう。
ただ、ステータスの中で、MATKは、個人個人の才能に左右されることが多いらしい。MDEFは、普通に鍛えて行けば誰でも幾らかは上がるようだ。
技能と言う物は、つまる所、魔法の類や、特殊な能力、そう言うものの総称らしい。
「固有技能どころか、技能が一つもない……何だか、今までどうやって生きてきたのか疑問になるレベルで弱いステータスねぇ。まぁ、一部分を除いて、だけれど。ねぇタスさん。INTの値がおかしい事になっていると思うのだけれど……心当たりとか、ある?」
心当たりはある。
まあ、INTの値が機械的な脳内処理能力の事を示しているのなら、コンピューター程にはあるであろう私のINTは、それくらい高くなってもおかしくはないのかもしれない。一般的な人間と比べたら、異常なのだろうが。
「あります」
「そ、そうなの……まあ、それならいいのよ。ええ。深入りは良くないわよね。名前のとこ所、何だか一部読めない文字があるのだけれど、タスさんって書いてあるのよね?タスさんの"さん"って、名前に入ってるのね……それにしても、ステータスで『読み取り失敗』とか、初めて見るわよ?……年齢の所も、読み取り失敗って出てる……ねぇ、タスさんってもしかして、私より年上……?失礼を偲んで聞いちゃう、いえ、聞かせて頂きますけれど……今年でお幾つですか?」
「ゼロ歳……?」
「え゛。……ごほん!、まあ、それもいいとして!種族!種族はどうなの?!読み取り失敗って出てるけど!」
何やら、ラシーヌさんは混乱しているようだ。
まあ、それも無理はないか。
「たぶんヒトだとおもいますけど、くわしくはわかんないれす」
「えぇ……じゃあ、お母さんとか、お父さんとかは!?どんな人達!?」
ラシーヌさんは、雄叫びをあげるように質問をする。
美人が台無しである。女神様とはまた、違う意味で。
「んー、いないれす」
「そ、そうなの……何か、悪い事聞いちゃったわね……ごめんなさい」
……何やらラシーヌさんは勘違いしてしまったようだが、落ち着いてくれたのでそう言う事でいいか。
「いいれすよ」
「ううぅ……!なんて優しい子なの!抱きつきたい!」
「それはやめてくらさい」
私は即答した。
「ぇえ……はぁ、気になる事は結構あるけど、私ちょっと色んな意味で疲れちゃったわ。今日はもう寝るわね……」
「はい。りょーかいれす」
「ええ、じゃあタスさんも、眠くなったら寝ましょうね。あ、なんなら私にベッドで一緒に寝ても良いのよ?」
「それはいやれす」
きっと抱きついてくる。確実に窒息死してしまう未来しか思い浮かばない。
「はぁ……じゃあ、タスさんの分のベッドも出しとくわね……」
そう、ラシーヌさんが言うと、数瞬の間を置いて、ベッドが二つ現れた。
「じゃ、おやすみなさい……タスさん……」
「おやすみなさい、れす」
ラシーヌさんは一分も経たない内に、眠りについてしまった。
さて……私も寝るとしよう。
私はベッドに入り、羊の数を数えながら、眠りに就いた。