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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
7章.雨の日の灯り
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1.未知の場所、未知の人

前回の三秒あらすじ

主人公、川に落ちる

『だ、だいじょうぶ、だよ。その、たまたまの、可能性もあるし─』


 初等学校までは生まれた故郷に通っていた。アステリアに住居を構えたのは正式な住所がただ欲しかったから。


『だから?』


 昔、仲の良かった寮の子がいた。その子は魔術師になりたかったらしい。

 毎日勉強を沢山していたのをよく覚えている。


『え?』


 第三学年、初等部最後の年、その子は適正テストを受けた。受けた当初、ワクワクした顔で寮に戻って来た。


『あたしが…あたしが欲しい物全部持ってるくせに!!』


 でも、その子は適正テストの最低評価一を取得してしまった。

 適正テストの最低評価一は、ほぼなることは不可能という数値でもあった。


『ちが、これは…』


 慰めようとした。でも、それがダメだった。


『全部持ってる奴に慰められたくなんか無い!!!出てって!!!今すぐ!!!』


 あの後、先生達が来てわたしとその子は引き離された。


『…まって、話、話をしようよ』


 毎日訪れた。一度だけ、たった一度で良かった。


『何が、全部もってるくせに』


 この頃から亀裂が生まれ始めた。


『持ってないよ…わたしはただ…』


 必死に弁解した。あわよくばもう一度対等な関係でいたかった。


『嘘つかないで!!!!その持ってるもので!あんたは自分の父親殺したんでしょ‼!!』


 もう一度、話がしたかった。


『ち、ちがう!お、お父さんは、おと、さんは』


 もう一度、笑い合いたかった。


『さっさといなくなってよ!あたしの前に出てこないでよ!』


 その一言で、終わった関係。


『ご、ごめん、ごめんなさい…』


 もしも、もしも奇跡が起こるなら、最後に謝りたいと思う。


 

 ✿✿✿

 


 セレナは目覚めるとよく知らない部屋にいた。頭は酷く重い。


(…ここ、どこ)


 身体を起こし辺りを見渡す。

 ランプに机、棚、必要最低限の物が置かれている。


(客室…?)


 セレナは、自身の状況を整理する。


 魔術師の一人が川に飛び降りようとしていたから止めに入った。しかし、言葉では無理なので手を引き思いっきり回したのだ。

 しかし、その反動でセレナが川に落ちた。


 セレナはベッドから降りたが、直ぐに床にへたり込む。どうやら魔力が切れているようだ。


(そんなに、魔術使ったけ…)


 セレナの魔力は豊富だ。一度天八座本部の魔力測定器を壊してしまうくらいには。


 そんな事を考えていると扉が開いた。


「あ、起きてる。おはよう」


 青とも紺色とも言えるロングヘアの女性が入ってくる。上質な布で出来ているワンピースとやらを着ている。腰にベルトをつけている。

 手に持っているのはロウソクとタオル。


 セレナは逃げようとするも逃げられない。魔力は血液のようなものなので切れていると全く動けなくなるのだ。

 体力のある人は別だが。


「ちょっとごめんね」


 女性はセレナの元に近づきおでこに手を当てる。


「熱は…ない、かな。良かった」


 その様子はどこかホッとしている。


「あ、あの」

「?」

「あ、あの…ここ、どこですか。わたし、どうしてここに居るんですか。あなたの名前はなんですか」


 セレナは聞きたいことを一気に話した。いくら同性と言ったって怪し人は怪しい。少なくともここが川辺だったらまだ疑いは浅い方だった。


「多いね…えっと、名前から…かな?」


 女性はセレナに手を出し、ベッドにセレナを腰掛けさせる。


(…指輪)


 手を差し出して貰った際にセレナは左手の薬指に指輪が嵌めてあることに気づいた。そして、文化的に、この女性は貴族だと判断した。

 この王国での婚姻方法は平民はは花冠を送る。平民でも少し裕福だった場合宝石を砕き、花冠に散りばめる。

 貴族だった場合、宝石を嵌めた指輪をつける。


「わたしは、フィラって言います」


 よろしくね、と言ってそうな雰囲気を醸し出す女性はフィラと言う名前らしい。どこか掴みどころがない。


「ここは、わたしのお家…って言っていいのかな…?分からないけど、とりあえずお家だよ。ここにお嬢ちゃんがいるのはわたしと、わたしのお友達が連れてきたから」

「どうしてですか」

「だって、川で女の子が溺れてるんだよ。助けないと!」


 フィラは両手をグッと握りしめている。


(…なんか、小動物味がある…)


 セレナに思われるのは相当な事だがフィラは全く気が付かない。


「その、疑ってすみませんでした…」

「いいよー。むしろそうだよね。起きたら知らないお家ってびっくりしちゃうよね」


 フィラはどこか能天気だ。セレナはオドオドしながらフィラの様子を見ている。貴族にしては、何処か庶民的にも見える。


 自身でタオルとロウソクを持ってくることは貴族はしないだろう。いくら、自分が連れてきた娘だからと貴族はそんな事に時間は使わない。使用人に任せるのが筋だろう。


(それに…)


 セレナはフィラの姿を改めて見る。シンプルなワンピースだ。いつも社交界で貴族が着ているような派手なドレスではないのだ。


(貴族ならドレス日常的に着てると思ってたけど……違うのかな)


 セレナがそう考えていると、フィラはタオルをセレナに差し出した。


「ごめんね。まだお風呂が湧かせてなくて…。冷たいの嫌だよね。これ使って雨水とか拭いていて!すぐに沸かしてくるから!」

「えっと…はい」

「何かあったら………おっきい声出して」

「え、えっと…はい」


 それだけを告げるとフィラはパタパタと扉から出ていった。


(…変な人)

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