5.結ばれていく謎。
前回のあらすじ
すっごい魔術師がいると判明
ぼーっとセレナはペルットの様子を見ている。ちょっとそこで待ってろ、と言われたので大人しく待っているのだ。
しかし、待ち始めてもうすぐ三十分。
どこが少しなのだろう、とセレナが飽き始めてきた。
「主ー」
「なに」
「白衣何してるんだ」
「…探し物かな」
ペルットはガサゴソと部屋の床を漁っている。宝探しゲームをやっているみたいだ。セレナはひたすらに眺めていたが飽きたのでポケットからメッセージカードを取り出す。
「お、ユリのだ」
「ユリのじゃないから…」
セレナはユリの言葉を訂正しながらメッセージカードを日光の光に当てる。やはり普通の炙り出しにしか見えない。
(魔術を拒絶する…魔術なのかな。それともまた別の?)
ユリはセレナの隣でユリの、ユリのだ!と言っているが思考に入ったセレナには聞こえない。ペルットもまだ探し物をしているようだ。
(なんで窓に残したのかな…警告、忠告…流星のように?)
「見つけたぞ‼」
「ひぁっ…」
ペルットの突然とした大声にセレナはビクッと立ち上がる。ペルットは何か巻物のようなものをセレナに見せてくる。
「展示会の参加者リストだ」
「ななな、なんでペルットさんが…?も、もしかして強盗…」
「失礼な‼」
「じゃあ、なんで…」
「ワタシが責任者だったからだな」
「えぇ……」
ペルットが責任者、と聞いたセレナの顔はなんとも形容し難い物だった。本当にこの人が…?と疑っている。
「…まあいいだろう。ほら見てみろ」
巻物状態の資料を開くペルット。セレナとユリは覗き込む。
「……もじ」
「なんだね?」
「文字…!見た事ない字形…」
セレナは資料の文字に食いついた。目が輝いている。うっとりと資料に書かれてある文字を見つめる。
もしかしたら、セレナが最も愛するものは文字なのかも知れない。
「……ほら、ここだ」
「…アイラン…?」
「ワタシが液体を買った店主だ」
「じゃ、じゃあ。王国のアイランさんを調べたらいいのでは?」
「ハッハッハ!これはな、仮面舞踏会ならぬ仮面展覧会だったのだよ‼」
「…?」
突如ペルットが笑いだし、仮面展覧会と言う全く聞き馴染みの無い言葉にセレナは疑問符を浮かべる。
「主、主」
「…なに」
「白衣どうした。狂ったか?」
「……研究魂に火がついたのかも…ね」
二名は小声で話す。そうしているとバン!とペルットが机を叩き出した。
(ねね、熱血教師…)
熱血教師はセレナの苦手な部類の人だ。その人を思い起こし少し縮こまっていくセレナ。
「仮面展覧会はな!相手の顔が分からない上に偽名を使っていたのだ‼」
「ぎめい…」
「ワタシはフレンチと名乗っていた‼」
「なんで…」
「フレンチレストランに行ったからだ‼」
「どうでもいい…」
セレナの悲痛のツッコミは熱が入りすぎたペルットには届かない。流石にユリも怖気付いたのかペルットから離れ、セレナの肩に止まっている。
「つまり!アイランが本名なのか偽名なのか全くわからん!」
「……」
「そもそも展覧会は研究の成果や研究道具を買うところ、誰も人の容姿なんて見てない!」
「……」
セレナはもう呆れ帰る準備を始める。これから聞いていても多分意味は無いだろうと判断してのことだ。
「さらにだな仮面展覧会は…セレナ君。帰るのか?」
「ひぇ!あ、ああああ、は、はい」
「酷いな、ワタシの話くらい聞いても良いだろう?どうせ君は暇だ」
「暇、暇では…ない…です!」
「ほらほら座りたまえ…」
ユリ…助けて…とセレナは半泣きでユリに縋るが、ユリはいつの間にか逃走していた。
(後で花の撤退をする…今決めた…)
一週間の花撤退を決めたセレナはペルットの話を一切聞いてない。しかし、ペルットはそんなセレナにも気付かずに話を続ける。
「そうそう。元々はアイランの話だったな」
「……そうですね」
セレナは疲れている。もう帰りたい、とオーラが滲み出ているのだ。
「アイランはな。さっきの液体の他にもう一つ品物を出していた」
「…え?」
「遮断布だ」
「遮断…?」
「言ってしまえば壁のような物だな。防音壁…とやらに似ていると思っている」
「へぇ……」
少し興味深そうにセレナは頷いている。しかし、一つ疑問が思い浮かんだ。
「ペルットさんはどうしてそれ、覚えているんですか」
人の字の癖を覚えているセレナに言えることでは無いが展覧会の品物を覚えるのは相当な労力が必要だろう。買っていない物なら尚更だ。
「ハッハッハ!ワタシは研究者!研究者は、過程と結果全てを見ているのだよ」
謎のフラスコをいつの間にか取り出していたペルット。ただ、その言葉を言った時は確かに研究者の顔をしていた。
「まぁ、兎に角だ。ワタシはアイランを調べたり、他の展覧会でアイランを探そう。異論は?」
「な、無いです…」
セレナが答えると満足そうにペルットは巻物をしまい始める。セレナはそれを眺めていたがふと思い出したかのように制服のポケットから宝石を取り出す。
「ペルットさん、その…これも調べてもらっていいですか…?」
「それは…操りの宝石か」
「は、はい…その、魔術で壊して…元の性能が知りたくて」
「ふむ…派手に壊れているが似たものは作れるだろう。出来たら渡そう」
ペルットは、セレナから宝石を受け取り机に置く。更にボロボロになりそうだ。
「で、では…わたしはこれで…」
「ふむ、分かった」
ペルットは既に研究者の顔をしていた。きっと色々調べてくれるだろう。
セレナは、研究者の住処を後にした。




