表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
2章 風薫る街
21/56

6.三歩進み、二歩戻る

前回のあらすじ

着せ替え人形にされてました。

 ハルジオンの花束と見慣れない紙袋を抱えてセレナは自身の帰路に着いていた。

 転移魔術で住む街の門に移動した。家でも良かったが、一度ロフトの上に着地した事がある。その時は頭をぶつけたのでもうやりたくないのだ。

(疲れたな)

 素直にそう思った。

(でも─楽しかった、かもな)

『はい』

『…なに?これ』

『服だよ、服。私から』

『え?その、どういう事…』

『お礼だよ。買い物に付き合ってくれてありがとう』

『その、わたしに…?』

『そう、一番似合うと思ったものだよ。良かったら受け取って欲しいな』

 ルナから渡された紙袋を持ち直し、抱えて歩き出す。

 セレナが住むのは、ミラ街。かつては光や魔力を閉じ込めるガラス細工が有名な街だった。由来としては、この街で作られた特殊なガラスは光を歪ませ、景色を揺らして見せたことから、『ミラ』と呼ばれるようになったとの事だ。

 今も名残はある。露店になるが、その様なものを売っている人もいる。

 本来は栄えても良さそうな街だが、一つ懸念があった。王都からは馬車で六時間程かかる。という事だ。

 その為、華やかな物が好きな貴族は基本的に住んでいない。貴族がいなければ栄える事もない。その為、ガラス細工を学びたい魔術師や、静かに暮らしたい平民が多く住む街となった。

 セレナもその一人だ。静かに暮らしたくて歩き続けて見つけたのがミラ街だった。

「よぅ、嬢ちゃん。珍しく外に出てるなぁ」

「ひっ、あ、大家さん。どうも…」

 露店に立ち、怪しげな小瓶を売っているのはセレナの住むタウンハウスの大家だ。豪快な話し方のお陰でセレナが常に怯えっぱなしだ。

「そう、来月の家賃はいつ払いに来るんだ。まぁ、何時でもいいが夜中は勘弁してくれよ」

「え、えっと、あ、今払います」

 そういうとセレナは、鞄から財布を取り出しあわあわしながら手元に出した銀貨十枚をそのまま出した。

「……嬢ちゃん、俺は言ったぞ。来月ってさぁ。銀貨十枚とか何ヶ月分だよ」

「ご、五ヶ月分です…」

「五ヶ月分かい…いや、色々聞きだが嬢ちゃん。お前さん何してるんだよ」

「ふ、普通の学生です」

「…掛け持ちか。嬢ちゃんが生活出来てるならまぁ、ええか…」

 色々複雑そうにしているが大家は受け取った。

「じゃ、嬢ちゃん気をつけて帰れよぉ。最近物騒だからな」

「えっと、はい…」

 露店を離れ住宅街に入る。

 住宅街は、少々暗い。街頭はあるが、王都よりも少ない。このくらいがセレナにはちょうど良かった。明る過ぎず暗すぎない。何となく後ろを振り向く。ガラス瓶をモチーフとした噴水がライトアップされている。噴水の周りには露店が立ち並ぶ。八百屋、果物店、被服店…ミラ街で必要最低限の品物を買える露店だ。少し歩けば泉にも行ける。何かと便利な街だ。

 そこにセレナは、住んでいる。住んでいるのだ。

 

 鞄から鍵を取り出し回す。

「ただいま」

「主!」

 セレナが扉を開けるとユリが飛んできた。

「主!花忘れてなかったんだな!ハルジオン!」

 よっぽど嬉しいのかユリは、羽をパタパタと動かし部屋中を飛び回っている。セレナは、それを眺めながらランプに魔術で火を灯した。紙まみれの部屋で火を灯すのは大変危険だが、セレナは紙が燃えない火の魔術を編み出してしまった。その為、火災の心配は一切無いのだ。

 火を灯したセレナは、ハルジオンを窓にある鉢植えに移し替えた。唯一、年相応と言えそうな場所は窓くらいだ。ユリのためにある花が沢山並べられている。

 セレナが植え替えをしている所を見ていたユリは、とある物に目をつけた。

「主、あれ、なんだ」

 机の上に置いたままの紙袋だった。一切洒落っ気のない部屋に少し立派な紙袋。違和感を覚えるのも当然である。

「あれは…えっと、ルナから貰った」

「るな?誰だ」

「……ともだち」

「主を外に引っ張り出した人間か…なんだその顔」

 それで伝わって欲しくなかったな。と言う顔を思わずしてしまった。セレナは見ていなかった紙袋の中身を見た。

  くすみラベンダーのベスト。 薄いグレーのスカート。ブラウス。

 ブラウスの色の名前は分からない。 

「クリーミーエデン色だな」

「く、くりーみーえでん?」

「バラの種類だぞ!」

 ユリは花の名前にすごく詳しい。蝶だから、という事もありそうだ。

(こんなに花の種類わかるのなら自分で買いに行けばいいのに…)

 セレナは呆れながら服を畳み、オープンラックの上に置いた。


 こうしてセレナの非日常は終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ