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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
2章 風薫る街
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2.勘弁して!!

前回のあらすじ

セレナ、遊びに誘われる。

 クロース街。

 昔の領主クロース伯爵の領地だったので、そう付けられたそうだ。王都の隣にある街なので人が多く、若者向けのお店が多く並んでいる。

 そんな縁もゆかりも無い場所にセレナは向かうのだ。


 約束の日の朝。セレナは、机で寝落ちしていた。昨晩も論文を読み、ちょっとだけ魔術のアレンジをしていたのだ。

「主!主!起きろ!」

 ユリは、セレナを起こしている。いつも煩いと言われる声は更に大きくなっている。お陰でセレナはきちんと起きれている。

「…今何時なの」

 セレナは、目を擦り時計を見る。

 八時半だ。

 何時もよりも三時間ほど遅い起床だ。欠伸をしながら体を伸ばす。机には、地図のメモ。論文。万年筆。頭がボーっとしている中、地図のメモを手に取る。

 クロース街。九時集合。

(…集合。あ、ルナ。ルナ?)

 もう一度時計を見る。八時半。より少し過ぎている。もう一度メモを見る。

 九時集合。

 セレナは大慌てで、着替える。

 途中書類にぶつかり床に書類が散らばった。それを無視し、杖を床につく。ゆっくりと深呼吸をして、なるべく感情を安定させる。

 空間術の一つ。転移魔術。それなりに高度な術だが、毎日学園に行くのに使うセレナにとってはなんて事ないものだ。

「ユリ、留守番よろしくね」

「まっかせろ!」

 すぐに返事が聞こえて安心し、魔術を起動させた。


 降り立ったのはクロース街より少しだけ離れた場所。

 昼間は人が多いみたいだが、まだ朝早い為あまり人はいない。開店待ちをしている人もいる。

(朝早くから並んでる…。なんでだろう)

 セレナには物欲というものがそこまで無い。その為開店待ちをする人の気持ちがイマイチ理解できないのだ。

「セレナ!」

 明るく、元気な声が聞こえた。

「おはよ、ルナ」

「うん、おはよう…?」

 元気だった声は段々としぼんでいった。そして、戸惑いの視線を送られる

「…どうして制服なの?」

「…色々あるんだよ」

 痛い所を突かれたようだ。

 セレナは制服を着ている。それは何故か。私服をほとんど持っていないからである。制服かローブ。これがセレナの基本的な服装だ。私服はワイシャツに、簡単なスカートと簡素なもの。これは同僚に買えと言われて適当に買ったものだ。ただ、今はどこにあるのか分からない。行方不明状態だ。ローブもどこかに行った。次の仕事までに見つけないと同僚達からの極刑は免れられない。すぐに目に入り、まだ、どこにも行っていない服が制服だけだったのだ。

「それこそ制服は目立つよ」

「え…」

 ルナの言葉にセレナは絶句した。目立つ事を何よりも苦手に思うセレナが自ら目立つ事をしている。

 とても珍しい事だ。その事実にセレナは倒れそうになる。

(…確かに、そうだ)

 何も言わないセレナにルナは心配するように覗き込む。顔が少々白い。余計なこと言っちゃったとルナは反省し、目立たない方法を考えた。

 そして、パンッと手を叩いた。

 その音にセレナは顔を上げた。

「そうだ。服買おうよ」

「え、あ、大丈夫だよ。ルナの行きたい所行きな」

 セレナが返すとムスッとした様子で振り返った。

「私が行きたいの!」

 ルナの勢いに押され、セレナは頷いた。

 よし、とガッツポーズをするルナを見ていると、後ろから気配がした。

 バッと振り返ると、いつもルナが帰る時にいる従者がいた。

(この人、強いな)

 強い人は雰囲気や立ち振る舞いから分かる。従者からは、強い人の雰囲気をセレナは感じ取った。

 従者はセレナが振り返ったことに驚いたのだろうか。片手は中に浮いたまま。もう片方は振り返ると同時にスーツの内側を触っていた。お互いに見つめ合う。いや、探り会う時間が続いた。

「あ、ライカ。どうしたの」

 そんな一言で、二人の探り合いは終わりを告げた。

「お嬢様。本日ご一緒されるご友人に挨拶をと思いまして」

 ルナにそう告げた後、ライカ、と呼ばれたその人はセレナの方に向き直り、深くお辞儀をした。

「私はルナお嬢様にお仕えしている、ライカ・アンレラと申します。以後お見知りおきを」

 髪の毛は一本に纏めてあり、よくスーツが似合っている。出来る従者という感じがする。

「セレナ様ですね。ルナお嬢様からよくお伺いしております」

 セレナはその言葉に思わずルナの方を見た。何を言っているのか分からないが、身分の事を言われていたら大変だ。ルナもセレナの視線に気づいたのか、ウィンクしてきた。

(どっちなの⁉︎)

「本日はお嬢様が二人で出掛けたいと申しております。しかし護衛を付けずに、とはいかない為私は十五メートル程後ろにおります。何かありましたらお声がけ下さい」

 すごく有能な事はよくわかる。でないと、この発想は出てこない事も分かっている。だが、セレナはそれどころではない。大ピンチなのだ。

「じゃあセレナ。行こ!九時から開いている喫茶店あるの!」

 ルナに手を捕まれ、クロース街に足を踏み入れた。



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