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三年前の賭けについて、そろそろ決着をつけようと思います


 三年後。


「ルールティア、どうだ? こちらは北部に生息しているという犬だ」

「ええ、大変可愛らしいですわ」


 言いながら、ルールティアは嬉しそうにふわふわの白い小犬の頭を優しく撫でている。

 動物好きの彼女の為に城内で飼い始めた犬だが、私を含めた城内の者達全てに動物達の生態をしっかりと学ばせて、食事や運動などの健康管理、生息域に近い環境整備も整えさせてある。

 名前は彼女に考えて貰うよう頼むと、「まあ、それはとても重要なお役目を頂いてしまいました」、と悩みつつも楽しげな様子だ。


「今日は南部で取れた食材を使った料理を用意してある。ああ、勿論君の好きなピーチパイもだ」


 そう言うと、彼女はぱっと顔を上げて満面の笑みを浮かべている。

 ルールティアの好物は把握済みであるし、何より、彼女は好奇心旺盛で、王都では見慣れない食材にも物怖じせず挑戦するのが好きな人だ。

 だからこそ、国内各地でなかなか販売経路を見つけられずに廃棄にされていた食材などを見つけては、様々な加工品として流通させりしていたのだけれど、それにより活性化した地域は多い。

 始めこそ彼女の為と行った事が、ひいては国内の各地の発展になっているのだ。


「ルールティアのお陰だな」


 今度の視察も楽しみだ、と私が言えば、ルールティアは嬉しそうに頷いている。

 各地の視察にも積極的に彼女を連れ出しているのだけれど、周囲に彼女が婚約者であるというアピールになるし、何より、旅好きな彼女が楽しそうにしている姿も見れるのだ。

 その上、今まで視察を行なっていなかった地域まで足を運ぶ事で、国内の問題にも目を向けられて、一石三鳥と言えるだろう。


「で、そろそろ賭けの決着をつけてもいいと思うのだが?」


 私が問いかけながら顔を覗き込むと、彼女は少し考え込んでから、ふいと顔を背けてしまっていた。

 彼女は肌が白いので、表情が見えなくとも赤く染まってしまった耳で、その感情は見て取れる。


「運命の出会いを跳ね除けて、求めていたもふもふスローライフのグルメ旅と同等のものを用意してしまうその手腕は流石ですわね……」

「三年もあったからな、それだけあれば、準備は完璧にしておけた」


 一番不安だったのは運命の出会いとやらだったが、それもルールティアの為に奔走している間に、すっかりと頭から抜け落ちていた。

 やはり運命なんて当てにならないものだな、と私は考えて、彼女の手を取った。


「君が望むものがここにあれば、次の転生先になど行きたくはなくなるだろう?」


 ふふん、と勝ち誇った笑みを浮かべて彼女の手を取ると、彼女は困ったように笑っていて。


「まったく、殿下には敵いませんわね」


 そう言って目の前の彼女が笑ってくれる事の方が、運命なんてものより余程、自分を動かす原動力になっていたのだろう。

 私はにっこりと笑って、しっかりと握り締めた彼女の手の甲に唇を落としていた。


end.

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