神はいつも見ています
「………んで、なんで今日は来たんだよ。 あとテメェに猫かぶる必要性は感じない」
『そんなのルージュさんが心配になったからに決まってるじゃないですかー? あと僕の扱い雑になってません?』
タンっと天井を蹴って180度回転して地面に着地する姿は相変わらずキザに決まってやがる。
こうなんで顔がいい奴ってなんでも卒なくこなすんだ?
不平等きまわりねぇっての。
「心配なんて口先だけの嘘なんて聞き飽きてんぞ。
ホントは何しに来た?」
『……やっぱりバレちゃいますか』
アタシがG様に追求の目を向ければあっさり向こうは降参したようにアタシのベッドにぼすんと座り込む。
ちょい、お前座るなよ。減るって。
『……ホントにルージュさんの私に対する扱いのぞんざいさに1度指導し直したいですね。
私は言っておきますけど神ですよ、カミサマですよ!?
この世界……いや、あらゆる異世界からも崇められる存在なんですよ!?』
「崇められる神様は普通そんなにホイホイ人の前に現れるものじゃねぇとアタシは思うけど」
『マジレスは禁止っ!!』
アタシが正論言ったら両腕使ってバツポーズを作るG様。
……どうでもいいけど何でこいついちいち言動が現代日本っぽいんだ。
『それはそうとですね、ルージュさん!
今日は貴方に言いたいことがあって来たんですよ!』
「話の逸らし方クソ下手だな」
まあいいや、あんまり弄ってやるとまた前みたいに拗ねられても面倒だし、乗ってやるか。
『あーあー、ごほん。 以前貴方に伝えたとおり、紅璃さんは本来まだまだお亡くなりになる予定ではありませんでした。
なのに亡くなってしまった理由は覚えていらっしゃいますか?』
「……そんなん忘れたくても忘れるかっての」
寧ろしっかり覚えてるっつうの。
G様じゃない神たちがゲームをして、負けた神が腹いせで無茶苦茶にした結果、アタシの人生が終わらされてしまった。
『……その事について明璃さんとしてどう思ってますか?』
「今でもソイツが目の前にいればぶん殴りてぇくらい怒ってるよ……。
けど今はG様から救済処置でルージュとして転生させて貰ってるし、今はまだこっちでは3年しか経ってねぇけどそれなりに満足もしてる……から正直過ぎたことはもういいか、くらいまでは気持ちは落ち着いてきてる」
確かに最初は何でアタシがって思ったよ、正直さ。
どうにもなんない、ってのも分かってる。
……アタシはいつまでも引きずるような、そんな可愛い女じゃない。
過ぎちまったことは仕方がねぇんだ。
だったら前向いて今生きなきゃねぇだろ。
『そう思っていただけるのなら安心しました。
正直、恨まれるのは神としては頂けないですから』
「そういうもんか?」
『そういうものです』
ふーん……と気のない返事を返してすっと視界に入った窓の外……に写っているか弱さそなシルバーアッシュ。
……あれ? 幻覚?
思わず二度見をして目を瞬かせてもそこに確かにいるシルバーアッシュの色の髪が印象的な男。
じっと見ればアタシが見ているのに気づいたようで一瞬目線が合うと慌てて窓からしゃがむように隠れた。
……いや、今いたよね?
確実に目が合った。絶対に。
『ああー!!? ちょっとまだ出てこないでって言ったじゃないですか!!』
「え、おい!?」
そんなアタシの様子に気づいたG様は何故かアワアワとシルバーアッシュが隠れた窓枠に近寄って行く。
(だって様子気になってしまって……)
(だから私が話をうまく持っていくって言ってたじゃないですか! 謝るつもりあるんですか!?)
(あります! でもこ、心の準備が…)
……そんなさぁ、分かりやすくコソコソするかよ普通。
小さなの声でアタシに聞こえないようにしてるのか分からねぇけど明らかに聞こえてるから。寧ろこの距離で聞こえない方がおかしいし。
それに今のアタシは3歳。 幼児の聴力舐めんなよ。
「おい、そこでわざとらしくコソコソ喋んじゃねぇ。
そこに隠れたシルバーアッシュも出てこい!」
ということでスタスタとG様がいる窓に近づいていく。
『あぁあ、あかりサァン!! ちょ、落ち着いてっ!』
「残念ながらアタシは落ち着いてるよ……あとアタシはルージュだ。 覚えておけ」
必死にアタシに窓から遠ざけようとするG様を押し退け、ひょっこりと自らの小さな体でできる限り窓枠から覗き込んだ。
『……ふぇっ……』
「……え?」
覗き込んだ先にいたのは目元に涙を貯め、今にも泣き出しそうな様子の先ほどのシルバーアッシュ。 近くで見るとなんか凄く可愛らしい小動物なような顔をしている。
と、思ったのもつかの間の間だった。
『……ふぇぇぇえん!!』
「え、ちょいええ!?」
『あーあー……あきっち泣いちゃった』
「はっ!? 何でいきなり泣くわけ?」
G様はなんかアタシが悪いみたいな顔をしてるけどアタシ何もしてねぇよ!?
寧ろ目線……てか顔覗き込んだだけ……もしかしてアタシめっちゃ顔怖かったのか?
普通にしてたつもりだし、ルビー母さんによく似て美人だと思ってたけど……でもごめん、流石に顔は変えられん。
『びぇぇえええん!!』
どうでもいいけどなんでこんなに泣いてんの!?
つか、泣き方きたなっ!
**********
『ずみ゛ま゛ぜん……な゛い゛でし゛ま゛っ、て……』
あれから優に30分は超えた。
ようやく落ち着いてきたようで、話せる位にはなった……ホントに大変だった。
あまりに大泣きされたからちょっとだけ割愛だ。
『あきっち。はい、ほうじ茶ハチミツ入りで良かったよね?』
『ぐろーす……ありがと……ぐずっ』
G様はどこからとなくティーカップに入ったほうじ茶をシルバーアッシュ……あきっちって言ってたっけ? に手渡した。
しっかしながら……誰だ、コイツ。
『大泣き、してしまって申しわけ、ありませんでした……』
「ああ、うん。いきなり泣かれたのはビビったけどとりあえず落ち着いてよかったな」
ほうじ茶をグビッと飲み、少しばかり落ち着いたシルバーアッシュに話しかけられた。
なんか見た目も相まって少年みたいな印象だな。
青年ていうにはちょっと幼い感じ。 目がクリッとして大きいし身長もG様より低めだ。
『ルージュさん、いきなり申し訳ございませんでした』
「ああ、G様の知り合いなんだっけ? 」
じゃあこの人もG様と同じ神様ポジの人なのか?
見た目美少年なのに。
『知り合いで……そうですね。単刀直入で言います。
この人が明璃さんがなくなってしまった原因を作った神です』
「…………………………は?」
原因を作った神……?
あれか? 腹いせでアタシをあの世に行かせた張本人? いや、この場合張本神?
『ルージュさん、そこどうでもいいです』
アタシの心を読んで珍しくG様に真面目にツッコまれたがそれはさておき。
コイツが……アタシが転生しなくなった原因…なのか。
『す、すみませんでした!! ずっと謝ろうって思っていたんですけどタイミングが掴めなくて……本当にごめんなさいっ!!』
『あきっちだけが本当は悪くないんですよ!
あの時ゲーマーであるあきっちに何とか勝とうとジュースと称してあきっちに酒を飲ませ、あきっちを嵌めたんです! あきっちは悪くないんです!』
『グロース! 違う! 結局は僕が不注意だったのが悪いんだ。
そのせいでまだ寿命が何十年もある人の未来を一瞬で奪ってしまった……取り返しのつかないことをしてしまった、僕が悪いんです。……神失格です』
『あきっち!? それを言うなら親友を失いたくないばかりに彼女を救済処置と称して私の管理する世界へ転生させたんだ。
私だって同罪だ』
『違う! グロースは悪くない! 全ての元凶は私……「はいはい、そこまでにしろー」……なんだ』
ったく、人置いて勝手に私が悪い談義するんじゃねぇっての。
思ったより進みませんでした
神様達のお話はもう少し続きます