差別
長い間待たせてしまって本当に申し訳ございません
また、投稿再開します
槍は僕に向かって真っすぐに飛んでくる
たいしたことは無い。スピードも遅いし、動きも単調だ
横に向かって飛び、槍をよける
「っち、おい!そこの化け物を殺せ!!王子をお守りしろ!!!」
そう騎士のおっさんが叫ぶと後ろから付いてきていた来ていたほかの数人の騎士がさらに僕に向かって槍を投げる
一、二、三………四本か
普段だったら避けられない数じゃないが、今は相当消耗してるし、ぎりぎりだな
さらに狙いが変に雑なせいでバラバラに飛んできて非常に避けづらい
槍の隙間を縫いながら後ろに下がる
落ち着いて、一本一本よく見ながら丁寧に避ける
……よし、何とか避けられた
かなり消耗してるからな、こんなところで無駄にダメージを食ってられない
「何をやってる下手糞!いけ!王子を保護し、化け物を殺せ!!!」
「待って!この子は悪い子じゃ………!」
セシルがそう叫ぶが、向こうは止まらない
腰の短剣に持ち替え、こちらに向かって走ってくる
「おらっ!!!」
短剣を振り下ろしてくるが、力任せなだけで動きは素人だ
さっきのメイドとは比べ物にもならない
ナイフで受け流し、後ろに飛んで逃げる
「待って!話を聞いて!!その子はうわっ」
「王子!こちらへ!!」
そう言って、セシルが騎士達のうち一人に連れていかれる
………仕方ない。話をまともに聞いてくれたら一番よかったんだけどこうなってしまったらもう僕が村に入るのは無理だろうな
ここで戦ってもギリギリ勝てないことは無いだろうけど、やる必要もない
こうなったら………
「おらぁぁぁぁぁ!!!」
そう叫びながらおっさんは短剣を振り回してくる
それをナイフで受け流し、そのまま………
「………え?」
………ナイフを、セシルの方へ投げつける
ナイフはセシルの腕をかすめ、そのまま飛んでいった
「王子!!!貴様、よくも王子を!!!」
………よし、命中。後は………
「おい!くそ、待て!!!」
………逃げるだけだ
♢♦♢♦♢
よし、ここまで来れば大丈夫だろう
あの男の下品な叫び声も聞こえなくなった
毎日森の中で走り回ってるんだ
たとえ初めて来る森でも流石に素人に捕まるようなヘマはしない
………さて
とりあえずは回復だな
速いところ食べ物と寝床を探さないと
村の奴らだったらまだいいけどあの誘拐犯達に来られたらちょっと逃げ切れる気がしない
何か動物………はダメだな
骨とか見つかったらここにいることがバレてしまう
だとすると、キノコとか山菜とかか………
回復する気しないな………
まあいい、寝床適当に太い木の上とかでいいし、食べ物食べて奴らが来る前にさっさと寝るか
魔力もギリギリだし、不完全な人化も解いて
せめて人化がまともにできるくらいには回復できたらいいんだけどな………
♢♦♢♦♢
反省はしていない
後悔もしていない
あの子は、僕を導いてくれた
ぼくはそれを利用した
それによってあの子は巻き込まれた
それでも、笑ってくれた
一度も泣かなかった
弱音も吐かなかった
常に笑っていた
いつも僕を助けてくれた
それは………
………この世界でも同じだった
♢♦♢♦♢
「……イ、………」
なんだ?
木の下から何か音が鳴ってる
いや、誰かが叫んでる?
「アオイ!!!」
「…ん?」
誰だ?
「アオイ!!!………だよね?」
「セシル?」
気の下で、何か大荷物を抱えたセシルが、そう笑っていた
「あ、やっぱりそうだ。ごめん、ドラゴンの状態見るの初めてだから。その状態でもしゃべれるんだね」
「なんでここに?」
「いや、おなか空いてるだろうと思って」
そう言って手に持った大荷物を見せる
「ご飯、盗んできちゃった」
てへっ、と首をかしげる
いや、盗んできたって何やってんだよ
見つかったら一国の王子でもただでは済まないんじゃないのか?
「だから降りてきてよ。僕これ持ってそっち登れないから」
………
少し迷い下に降りる
「………何しに来た」
「だからご飯持って来たんだって。あ、大丈夫だよ。盗んできたって言ったって後でちゃんと助けが来たらお金は払うから」
「そういうことじゃない」
「せっかく自分を悪者にして疑われないようにして保護させたのにって事?」
「む………」
「ん?」
何かちょっとむかつくな、こいつ
「まあいいや。さあ、食べよう。ちょっと前にさっきの村にうちの国の騎士たちが訪ねて来たみたいだし、もうすぐ見つけられるでしょ」
「ほんとにいいのか?もしあの村にもう一度騎士たちが来て魔物のところに王子を逃がしたって知れたら大変だろ?」
「いいんじゃない?下手したら打ち首あるかもしれないけど」
「だめじゃん」
「大丈夫だって。いざとなったら僕がひとこといえば何とかなるし」
「あの村の信用は地に落ちるけどな」
「まあ、大丈夫でしょ。自業自得だ」
え………
なんかセシルちょっと怒ってる?
「う~ん。それにしても、やっぱりこう僻地になってくると差別ってなくならないもんだねぇ」
「当たり前だ、城下町だって無くなってないんだから。魔物が簡単に小さい村なんかに入れるわけがないだろ」
「いや~あんだけ極限状態になってたら忘れても仕方ないじゃない」
「そのせいで僕は死にかけたんだけど」
「ごめんね」
「別にいい。差別はセシルのせいじゃないし、差別したい気持ちも分かる」
僕だって前世で魔物なんかいたら普通に接することなんか出来ないだろう
「そういえば前世は日本人だもんね。どう?魔物の体って」
「別に。なりたかったわけでもないし、かといってなって絶望するほどでもない。日常生活面で言ったら、むしろ便利なったし」
「僕はどうせなら魔物の方がよかったなぁ。せっかくの二週目だから。魔法が使えるようになったから退屈はしないけどやっぱり前世とは違う方が面白いと思うし」
「………変わってるね。普通の人間だったら魔物になりたいとか言わないでしょ?」
「まあ別に僕は魔物差別とかないし。皆は魔物は危険だって言うけどね。今日思ったけど、人間の方がずっと怖い」
「今日のはまた特別でしょ。魔物にも人間にもあんな奴らはほとんど居ない」
「ま、普通に居られたら困るけど。あんなのがうちの城の中に徘徊してたなんて思うと、ぞっとする」
「その割には平然としてるな」
「まあ、こんな身分じゃ誘拐なんて身近にあるものだし。それに………」
「それに?」
「………いや、なんでもない。忘れて」
そう言ってセシルはごまかすように笑う
「なんだ。てっきり前世でも誘拐されたことあるからって言うのかと思ったよ、早瀬」
………一瞬の静寂
セシルは驚いたように目を見開き、こちらを見る
そしてしばらくして、観念したかのように話し出す
「………なんだ、気づいてたんだ」
「当たり前だ。忘れるわけがないだろ。偽名使って顔も声も変わって,性別さえ偽造してたってたって、すぐ分かる」
「………忘れてくれてた方が、よかったんだけどね」
セシルは、表情を落として笑う
「あの時は………いや、いいや。しかし、絶対ばれてないと思ってたんだけどなぁ。前世の名前も偽名使わずそのまま言われたし。アオイだったら僕が偽名使ってることに気づいてたら絶対偽名使ってくると思ってたから」
「そんな変なところで嘘つく必要ないでしょ。別に知られて困るものでもないし。性別なんかは別に隠すようなのもでもないでしょ」
「性別は別に偽造したくてしたわけじゃないよ。王族ってのもいろいろあってね。大体、そう言うならなんでアオイは性別嘘ついたの?」
「………は?」
性別に嘘?
そんなもの付いてないだろ?
だって僕はちゃんと前世は男だって………
「あれ?だってアオイは元々………」
女の子じゃん、
っと、セシルは当たり前のように呟いた
久しぶりに書いたため短め&下手糞
展開もすごい速いし、気に入らないのでそのうち書き直すかも