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灰色の黒龍の碧  作者: 生木
2歳(19歳)編
21/21

魔族と人族

アオイとセシルがひらがなでしゃべってるときは、幼児キャラを作ってる時だと思ってください

「は?」


いきなり何を言ってるんだこいつは?


「ん?どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ。いきなり分け分からん事言いだして」

「え?なんか変なこと言った?」

「いや、どうして僕が自分の性別なんかに嘘言わなきゃいけないのさ」

「実際に嘘言ったじゃない。だって………」

「待て待て待て。僕は元々は男だよ?早瀬だって何回も会ってたから分かるでしょ?」

「はい?私が知ってる青井雄斗は、最初っから女の子だけど?」


さっきから何を言ってるんだ?

僕は生まれた時から男で………

あれ?


「どうしたの?」


僕は男だった

それは覚えている

じゃあ、()()()()()()


早瀬と会って、早瀬を殺して。しばらくして自分も死んで

じゃあ、その前は?


「覚えて………ない………?」

「え?」


いや、完全に忘れているわけではない

自分が何をやっていたか、どんなに人から外れたことをやっていたか。それは覚えている

だが、詳しいところが思い出せない

まるで、何か記憶に靄がかかったように………


「ねえ、大丈夫?」


セシルがそう言って僕の顔を覗き込む


「セシル」

「うん?」

「セシルが僕について知ってることを教えてくれない?どんなささいなでもいいから」

「え、急にどうしたの?」

「いいから」

「えっと………。ダナヴァの王族の召使で………」

「違う、前世の方」

「前世の方?えっと、名前は青井雄斗、女の子。死ぬ直前まで私と学校とクラスが一緒で、ハーフで………」


そう言って僕の顔をチラッと確認する


「………槇村財閥の子で、家族構成は弟と妹、両親はすでに故人になってる………だよね?」

「うん」


そう、そうだ

それは覚えている

()()()()しか覚えていないのだ


「さっきからどうしたの?なんか変だよ」

「ねえ、自分の前世のことって覚えてる?」

「え?………うん、そりゃ、もちろん」

「生まれた時から死ぬまで?」

「まあ生まれた直後の記憶とかはさすがに無いけど………。覚えてるよ?」

「僕とかかわる前も?」

「う、うん………。え、まさか………」

「うん………。覚えてないんだ」


そういうとセシルは驚き、絶句する

何か言いたそうにはしているが、言葉が出てこないのか目を泳がせている


しばらくして、やっと口を開き始めた


「………何も覚えてないの?いや、違うよね。私のことはわかったんだから………」

「うん、早瀬のことは分かる。早瀬以外のことが全く分からないんだ」

「どういうこと?」

「例えば、弟や妹がいるってことは話したよね?そういう、()()()|話《・

()()()()()()()()()()は、はっきり鮮明に覚えてる。でも、それ以外のこと。早瀬と出会う前の()()()()()()()()をまったくおぼえてない」

「記憶喪失?」

「いや、そういう感じじゃないんだ。本当に忘れてしまったわけじゃなくて、なにか思い出せそうで思い出せないような………」

「………転生の影響、かな?私は何ともないようだけど」

「分からない。でも弟や妹のこと、家業のことなんかは早瀬と会った後も続けてたからか、それとも早瀬に話したからなのか分からないけど鮮明に覚えてるんだ。それ以外、例えば学校生活なんかは全く思い出せない」

「まあ私と会ってからもほとんど学校来なかったからね。それで、自分の性別も………」

「うん、思い出せない。特に何も考えずに自分を男だと思ってた。でも、言われてみたら自分の性別についてのきちんとした記憶がないんだ」

「う~ん。名前だけ憶えてたから、男だと思ったとか?雄斗とか、絶対男の子に付ける名前だし」

「かもしれない。っと言っても、あの名前は学校に行くために名乗ってただけでちゃんと槇村の姓の名前は別にあるんだけどね」

「学校生活のことは?極稀に学校来た時はちゃんと制服着てたと思うけど」

「残念ながら、覚えてない」

「うーん」


セシルがそう言って考え込む


………なんでこんなことに二年間も気が付かなかったんだ?

記憶が無くなってることなんて簡単に気が付きそうなのに

本当に転生の影響なのか?それとも………


「おい!みつかったか!?」

「駄目だ!足跡も消えてやがる!!」

「糞!草の根分けてでも探し出せ!!絶対に騎士が来る前に見つけろ!!!」


と、考えていると遠くの方から大声で叫ぶ男たちの声が聞こえてくる


「………そんなこと考えてる暇はなさそうだね。速く逃げなきゃ」

「あいつらは村の奴らでしょ?別に逃げる必要はないんじゃない?」

「いやいやさっき殺されかけたじゃん」

「さっきはともかく回復した今は絶対負ける気しないし」

「倒しちゃったら私たちが悪者じゃない」

「僕だけ逃げてセシルは保護してもらえば………」

「どうせアオイが逃げるなら私が行っても同じだって。あいつらむかつくから僕保護したことで報酬とか貰ったらむかつくしどうせ保護してもらったってあの誘拐犯たちに見つかったら全滅だって。それだったらアオイと一緒にいた方が安全だし」


むかつくって二回言ったぞこいつ。どんだけむかついてるんだ

まああいつらが役立たずってのは賛成かな。二歳児と三歳児に簡単に逃げられてるんだもん

僕たちだってあのメイドが油断してた状態で二人がかりでギリギリ倒せるくらいだったうえにもう次の追手が来たら油断はしてくれないだろうから、簡単に全滅して僕らも殺されて終わりだろう

それだったらまだ森の中を逃げ回ってた方が案外安全かもしれないな

安全、ではあるが………


「あんまり逃げ回ってると肝心の騎士団にも見つけてもらえないんじゃない?」

「あ………」


こいつアホか


「ま、まあまた適当なとこで休んでれば、いつかは、恐らく………」

「あいつらに保護されてた方が早く帰れると思うんだけどな」

「………まあうちの騎士団は優秀だから、村人達よりは早く見つけてくれるでしょ」


………あくまで僕と一緒に逃げる気なのな


「………ついてこれなくても知らないからな」

「りょーかい!」


そう言って僕らはまた森の中を走り始めた



♢♦♢♦♢




「糞、どこにいったんだ!!!」


森の中を走り回りながら、村の警備の中年の男はそう悪態ずく


「た、大変だ!」

「どうした!今度は何だ!!!」

「そ、それが………。王の騎士団が村に来たらしくて………。それで、村の女どもが王子が居なくなったことをしゃべっちまって」

「なんで口止めしとかなかったんだ馬鹿野郎!っち、もういい、俺が行く!お前は探索を続けてろ!!!」


そう言って男は山を下り、村に戻る


なるほどもう一人の警備が言ったことは本当のことのようだ

王子の目撃があったからであろうか、騎士が大量に村に入り、村の中が普段の何倍もの人口密度になっている

普通騎士団がここまで一堂に会しているところは滅多に見られるものではない


男が騎士団を眺めていると、そのうちの一人、隊長であろう他の騎士とは違う武具の形をした男が近づいてくる


「初めまして、国王直属騎士団第三部隊隊長、クレメンスです。早速ですが、王子が目撃されたと聞いてきたのですが………」

「ええ、そうです。ですが、何やら魔族と一緒に居りましてね。危険と思い、魔族は何とか追い払って王子を保護したのですが………」

「待ってください。………魔族を、追い払った?」


そう言ってクレメンスは訝し気に眉を顰める


「え、ええ。そうです。まだ子供のようでしたがな、肌から鱗が見えていて、目は鋭く光っておりました」

「その魔族はどこへ?殺したりは………」

「すばっしこくて、仕留め損ねましてな。森の方へ逃げて行ったのですが………。王子はそいつに連れ去られた可能性も………」

「もう、いいです。十分わかりました」


クレメンスは部下の方へ向き手を叩く


「聞こえただろう!王子とアオイ様は森の中にいる可能性が高い!!全班、それぞれ分かれて隈なく探せ!!!それと………」


そう言いながら、近くにいた二人の騎士を見る


「この男を取り押さえろ」

「はっ!」

「な!?」


指示が出た瞬間、大勢いた騎士たちはそれぞれ散り、走り始める


「なぜっ!私が捕まるのですか!?」

「人・魔族友好保全法。貴様も知らないわけがないであろう?魔族も人族も、同列の存在だ。魔族という偏見を持ち、あろうことか危害を加えるのは立派な犯罪だ。それに、貴様が危害を加えたのはダナヴァの高貴な方であるぞ。もはや貴様の首だけで事足りる問題ではなくなっている」

「なっ」

「それに………」

「もうよい」


そうクレメンスの後ろから、赤髪の女性が止める


「はっ!失礼いたしました!!このたびの不祥事、我々騎士団の………」

「よい、それよりもアオイ達を探すのが先じゃ。それに………」


そう言いながら、赤髪の女性は中年の男を見下ろす


「この愚か者は、後で妾が直々に刑を下す」


その女性の目を見た瞬間、男は恐怖した

そしてその後に襲ってくる、後悔

自分はなんてものに手を出してしまったのだ、と


そうして男は自らの無知と愚かさを呪いながら、意識を失った




♢♦♢♦♢



「………なんだよ、これ」

「………うぇ、」


あの村人から逃げるために走り出して数十分

距離にして5キロほどの地点に、それはあった


「人と、魔族、だよね?これ」

「………だろうね。」


そこにあったのは戦闘の跡だろうか、所々木々は焼け焦げ、土や岩が削れた跡と

半白骨化した人と魔族の死体が、数体


「戦争の跡?にしては、新しすぎるか。」

「うん、まだ白骨化もしきってないし」

「なんでこんなところで戦闘なんか………」

「………まあ、いろいろ理由はあるだろうけど、一番は………」


そういって少し離れたところにある死体のかたまり見る


「あれ、だろうな」


壊れた馬車と、それを引っ張ていたであろう首を落とされた馬

そして、錆びた銀色の首輪をつけられた、死体


「………骨格からして人間ではないだろうね。しかも、まだ子供だ。そしてこっちには男の死体これは」

「魔族を対象とした、奴隷商売?」

「そしてそれを助けに来た魔族と人族の傭兵と争いになって………」

「共倒、れ?」

「だろうね」

「なんでこんなことが………。奴隷の売買はダナヴァでもマルチェルでも禁止されて………」

「どの世界にも、法を破る奴なんていくらでもいるさ」


前世の、僕みたいに


「それにしたってなんで………。魔族と人族は、もう」

「さっきも見ただろう。友好なんて表面上だけだ。いまだに魔族も人族も、互いを下に見て争いあってる。これだってその一つだろう」


この世界では奴隷は割と簡単なものだ

大きな家の使用人になるときは、大体全員がその家の人と奴隷契約を結ぶ

だが、それはあくまでもその家に使えることに対しての契約のようなものであり、創作物でよくあるような自由がない奴隷は法律で禁止されている

だが、それは表面上のものだ。戦争の時代から、人族は魔族を、魔族は人族を、生きたまま捕まえ逆らえない様に魔法をかけ、奴隷としてきた

それは、戦争が終わって法が出来た今も、簡単になくなるものではないのだろう


しばらくその惨状を見つめた後、セシルが顔を落としながら重い口を開く


「ねえ、アオイ」

「うん?」

「僕ね、ずっと考えてたんだ」

「なにを?」

「僕が、この世界に来た意味。でも、もう分かった。僕は………」


「おい!本当にあってるんだな!?」

「間違いありません!ついさっきこちらの方角に進んでます!!!」


僕らが話してると、そう少し離れたところから大声が聞こえてくる


「………やっとうちの国の騎士団の登場だね。ちょっと遅かった気がしないでもないけど、ってアオイ?どうした?」

「………声が聞こえるまで存在に気づけなかった。へこむ」

「普通は気づけないと思うけど………。まあ敵じゃなかったからいいじゃない」


「あ!発見しました!!お二方とも無事です!!!」


そう言いながら、走ってきた若い騎士は光魔法で僕らを照らす


「おお………。よくぞ、ご無事で………。さあ、こちらへ」

「うう、うわぁぁぁん」

「ああ、もう大丈夫です。悪い敵は殲滅いたしましたから」


後ろから来た年老いた騎士は泣き出したセシルを抱きしめながら、そうセシルの頭を撫でる


………こいつ、流れるようにウソ泣きしだしたな

しかもかなり手慣れてやがる。騎士の人も皆騙されてるし

と、


「アオイ」


と後ろから呼びかけられ、抱きしめられる


「すまなかった」

「おねえ、ちゃん?」

「気づくのも、助けるのも遅れてしまったな。妾は………」

「べつに、だいじょうぶ」


「撤収だ!一刻も早く城に戻るぞ!!………さあ、カミラ様とアオイ様もこちらへ。ここを出れば、すぐに馬車の用意がありますので」

「うむ。さ、ゆくぞ。………アオイ?」


騎士団が撤退し始める中、僕はもう一度惨状の跡を見つめる

人族と魔族の大きな溝の証

人族と魔族がまだ友好しきれていないという、何よりも大きな証拠を


「行くぞアオイ。こんなもの、いくら見ても気持ちのいいものではない」

「………ねえ、おねえちゃん」

「うむ?」

「いつか、人と魔族が」


本当に分かりあう日は、来るのだろうか



♢♦♢♦♢



「あの時は大変だったね~」

「そんな軽く言えるものじゃないだろ、あれは」


ダナヴァの城の来客用の茶室に、僕とセシルの二人で茶を飲みながら、そんな話に花を咲かせる

あのような事件があってから、僕ら二人が会う時は厳重な警備の下、二人きりで会うことになっていた

まあ壁をまたいだら何十人もの警備がいるから落ち着くかどうかで言ったら落ち着かないけど、前世の話なども気兼ねなく話せるようになったので楽と言えば楽だ


「………で?アオイは最近どうなの?」

「どうって?」

「ほら、アオイも来年から学校通うじゃん?何か変わったことある?」

「あ~」


ああ、そうか

そういえば僕も学校行くことになるのか


………こっちに来てから、もう七年

誘拐事件からもう五年か

早いもんだ


「何にも考えてないの?流石に今世は学校通うよね?」

「そりゃ、別に学校嫌いなわけじゃないしね。多分ヴェラが手続きとかはしてると思うし」

「へぇ~。まあ学校って言っても前世の学校とかとはずいぶん違うしね。むしろアオイにとってはこっちの学校の方があってるかもね」

「どういうこと?」

「それは入ってからのお楽しみってことで」


そう言ってセシルは笑いかける


こいつ、一年早く入ってるからって………

まあこっちの世界では一年年上だから仕方ないけど


しかし、学校か………

前世はほとんど通ってなかったから、実はちょっと楽しみでもある

一体、どんなところなんだろうか?


今回で二歳編は終了です

ここからしばらくは書き溜めして、ある程度たまったらまた投稿再開します


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