071●レター・ビィーとクッキー
伯爵領、なんて居心地がいいんだ。
服も新しくもらえた。温かい。食事もウマイ!
与えられた部屋が、海の下にあるなんて驚いた。
戦友も少し歩いたところにいる。
特に何かをしなければならない、ということはない。
だが、このままでは身体が鈍る。
ちょっと太ったかもしれん。広場に行ってみるか。
「おう、おはよう!」戦友のひとりが声をかけてくる。
「ああ、おはよう!いい朝だな。」
「太陽の光が気持ちいいな。森の香りもいい。なんか、生まれ変わったような気分だ。」
「いやあ、まったくだ。長らく従軍してきたが、こんなに落ち着いてのびのびするなんて、ホント、久しぶり、っていうか、初めてかもしれん。」
「それじゃあ、いつものように、ささやかな恩返しをするか。」
「そうだな。何の仕事もしないで、この生活を送るってのは、心苦しいもんな。」
大宴会のあと、自ら武装解除した。
やることがない。
だから、俺達は公園の掃除から始めることにした。
やらなくても、誰かがやってくれるんだけど。
各部屋の前の廊下や、共有スペースも清潔に保たれているのだが、それでも念には念を、だ。
「いつもありがとうございます!」
「ありがとうごじゃいま〜しゅ!」
顔見知りになった住民たちが声をかけてくる。この女の子、かわいいな。ニコニコしてる。
「いえいえ、とんでもないです。」
「あの、失礼ですが、その言葉のなまり、もしかして・・・。」
えっ!俺と同じ出身?!ラベリアの?
なんで伯爵領にいるの?
ああ、そうなのか。食べられなくなって、ここに流れ着いたのか。
「ここに住むようになって、随分になります。街道の道端で、一家4人とも動けなくなって・・・もう、だめだ、と思った時、伯爵領の方が見つけてくださって、連れてきてもらったの。」
彼女がうっすらと涙ぐむ。そうか、大変だったんだな。
「会えて嬉しいです。俺も家族を呼べたらいいのに。せめて、無事だと伝えたい・・・。」
「あっ、それ、できますよ。レター・ビィーに頼めばいいんじゃないですか?」
「レター・ビィー?それなんです?」
書いた手紙を届ける配達人がいるんだって?
わずかな料金で、届けてくれるのか。
専用のオフィスや手紙投入箱もあるのか。
あっ、よく見かけるあの赤いボックスか!
「お仕事終わったら、おふたりで家にいらっしゃいませんか?故郷のお話を聞かせてください。手紙の出し方もお教えしますよ。」
「ありがとう!ぜひ!」
「ママ、お客様だから、クッキー焼いてよ!」
「はいはい。それでは、この住所で待ってますね!」
住所のメモをもらった。
こんなステキなことがあるんだ。
おい、お前が泣くことないだろ。
ズルイぞ、俺より先に泣くなんて・・・。




