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066●冬の訪れ

進軍速度が遅い。燃える村や街を避け、遠回りすることになる。

黒焦げの廃村では、眠るために天幕を張る。

民家があれば、そこで休めるのにな。雨の行軍は気が重い。

野営の準備にずぶ濡れになる。

百人隊長でさえ、疲れが溜まっているように見える。


食糧の配給が遅れている。船が使えなくなったという噂を聞いた。

荷車で領内から運んでいるが、侵攻するにつれて距離が伸びる。

配給が滞るのは、そのせいだろうな。

現地調達しようにも、焼け焦げた残骸ばかりで、何もない。

いや、もうすぐ敵の王都ヴァルミラだ。

きっと食糧だけでなく、財宝もあるはず。

奪い放題だ!もう少しの辛抱だ・・・。


なんだ!燃えている!ヴァルミラが!敵の王都が!

大通りも熱くて進めん!火を消さなければ!

水、水はどこにあるんだ!

王宮をめざすぞ!ダメだ!熱い!火の粉が舞う!灼熱地獄だ!

どこに食いものがある?

金や宝石なんか、もう、いらん!

うわあ、王宮が崩れるぞ!逃げろ!


ああ、危なかった。

戦闘ではなく火災で命を落とすところだった。

燃え盛る中を探索するなど、無茶な命令だ。


何人も負傷している。食事はまだ、届かないのか?

司令官たちだけ、食ってるんじゃないのか?

せめて、水を飲ませてくれ。ボレリアは豊穣な国じゃないのか。


あっ、雪が降ってきた。火照った身体には心地いい。

えっ、物資を運ぶ荷車が敵に襲われた?

戻って戦うのか?俺たち、どこへ向かえばいい?

敵はどこにいる?

雪が激しくなってきた。

寒いぞ。冬物の衣類なんか、持って来てないぞ!



「陛下、本当に王宮ごと燃やしてよろしいのですか?」

「構わん。余が為さなくて、何とする。」

「代々の宝物、秘宝も運ばなくてよかったのでしょうか?」

「悔いが残るか?民が全てを捨てて、協力しておるのだぞ。民こそが宝ではないか。歴代の王たちも、さぞ褒めてくれるであろう。さあ、行くぞ!」

「陛下、馬車にお乗りください!」

「何を言っておる。元気のある男は歩くのだ。ほれっ、アーサーが先にいっとるぞ。」

えっー、陛下も歩かれるのですか?!インフィニティは遠いですよ!


侵攻はラベリアの思うようには進まなかった。

ボレリアの全土掌握は、数週間で可能だという計画の実現は、既に不可能だと皆が感じ始めている。

伸び切った兵站線は、ボレリアの遊撃隊によって寸断され始めた。

制海権もない。冬を迎える敵地を、どこまで進めばよいのか。

あるいは何の戦果もなく、撤退するのか。


その決断ができるのは、唯一、帝王のみである。


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