044●クジラの卵
「では、何でも言うことを聞く、という約束を果たしてもらうぞ!」
王虎が嬉しそうに言う。仕方がない。
あんな見事にノックアウトされるとは思わなかった。
命があっただけでも幸運だったよな、俺たち。
「今日から、ここで学んでもらう。紹介しよう、ムサシ先生とリョウマ先生だ!」
王虎ほどではないが、鍛えた身体してやがるなあ。抵抗しても、これはムダだな。
「はい、皆さん、ムサシです。主に言語や地理などを担当します。」
「リョウマです。数学や理科を担当します。」
なんか、むずかしそうだなあ。
月日がたつのは早い。
たし算でモタモタしていた俺が、分数まで理解できるようになったぞ。
今日はどんな授業だろう?
リョウマ先生、何、その布づつみ?
えっ、「クジラの卵」だって?!
「みんな、よくがんばったな!今日で卒業だ!ブラッド、代表して何か言え。」
王虎さん、いつも無茶振りだあ。でもな・・・。
捕まった時は、もう終わりだと思いました。王虎さんのパンチ、すごかったです。
でも、それよりもすごかったのは、ここで学んだ内容です。
自分が如何に無知だったか、今でも無知であるか、そして知識は力になると知りました。
ただ、飢えてその日ぐらし、いつしか悪事に手を染めるようになった自分。
もし幼い時に十分な知識があり、その活用方法を知っていれば、
もっと良い人生を送っていたと感じています。
だけど、わたしの人生はこれからです。
教わった知識や協力、思いやりの大切さを、いつまでも忘れません。
ありがとうございました。
王虎さんが泣いている。
ムサシ先生もリョウマ先生も泣いている。
みんな泣いている。こんなスピーチで泣くなよ!
俺も泣いてるけど。
「いいスピーチだった!それじゃあ、明日から伯爵領海軍水兵だ!」
えっ、就職先も決まってる?
あっ、そうか、何でもいうこと聞くんだったな。
海に戻ろう。でも、そこに行くのは以前の俺たちじゃない。
’We are not what we were!’




