040●奥義って、もうやるの?
「行きますよ、ウィル!」
「よし、来い、アリス!」
稽古をつけてもらうようになって、もう随分になる。最初のころを思い出す。
「ウィル様、剣の練習は初めてですか?」
「うん、アリス、初めてだよ。長らく女の子として日々を送ってきたからね。」
「では、剣の握り方から。いいえ、そんなに強く持たないでください。」
「アリス、今、わたしは弟子なんだから、敬語はいらないよ。対等に話してくれないかな?」
「よろしいのですか?では、ウィル様、ではなく、ウィル。わたしがお手本を見せますから、やってみましょう。・・・そうそう、うまい、うまい!」
「では、さっそく奥義を教えますね。」
奥義?!いや、さっき初めて始めたところだぞ?!そんなこと教えていいのか?
「マギ、やるよ。」
「はい。」傍らで見ていたエンジェル・ナイトのマギが剣を構える。
2人が対峙した。マギの一撃!アリスが同時に動いている!
バキッ!
激しく剣が触れ合う音!あれっ?マギの剣が弾き飛ばされてる!
先に仕掛けたのはマギだよ。剣が先にアリスに当たるはずでは?
「今のが奥義の1つです。やってみましょう!」
えっ!握り方を教えてもらったばかりなのに、いきなり奥義、やるの?!
「上達が早いので、今日から本当に当てる稽古をします。あっ、心配しないで。本物の剣は使わないから。これをどうぞ。」
アリスから受け取った棒を見る。
ふ〜ん、竹でできているのか。
いくつもの部品を組み合わせて出来ている。柄は革製の筒だな。
「シナイといいます。プロテクターもつけますよ。」
ヘルメットを被り、手や足、胴体にカチャッとつけるんだね。
「さて、では自由にどこでも打ってきなさい。」
よ〜し、’I am not what I was.’ あれっ?アリス、目をつぶってる?
「いいから、さあ、どんどん来る!」
わかった、遠慮しないぞ!てやあ!
全然、当たらない。なぜだ?
目を閉じている相手に、なぜ当たらない?
「ハイ、休憩!お疲れ様!」
「アリス、わたしが未熟なのは、よくわかったけど、どうしてあなたは避けることができるんだ?」
「それはね・・・。」
アリスは優しく説明してくれる。
あなたの動きは、手に取るようにわかる。
だって、打とう、勝とう、って気持ちが強く出てるんですもの。
これが、怒りや憎しみ、恐怖ならもっとわかりやすい。
おぼえておいて、戦闘に慣れた者たちは、こういうことができるの。
だから、誰かと戦うことになったら、まず、落ち着く。
感情に左右されず、相手を見るの。自分が打とうとする箇所を見ちゃダメ。
相手がどこを打ってこようとしているか、感じるの。
カウンターを取れば勝てる。
相手の動作と同時に動いているように見えるかもしれないけれど、実は相手の隙を突いて、相手の力も利用するの。
わたしたちはこれを、’対の先’と言っているわ。
う〜ん、すごく深い・・・。
奥義もそうだったんだ。
「だから、戦う前には深呼吸。はい、ふか〜く吸って。止めて。ゆっくり吐いて〜。」
気持ちがなだらかになっていく。なんだか、気持ちがいいな。




