028●秘伝の伝達
「あれ?どうしたんです、旦那?」
馴染みの鍛冶職人が、声をかけてきた。
俺が元気がないのは、彼には一目瞭然だったのだろう。
剣の手入れで、よく通っているからな。
「ここだけの話だぞ・・・。今度の遠征、気が乗らないんだよな。」
「ああ、また行くんですか。今年で何回目です?」
「3回目。その度に故郷を離れ、畑を家族に任せて行くんだぞ。いい加減に嫌になるよ。」
「あっしらも、剣や槍作り、もう大変でさあ。儲けより、体がもちませんや。」
「そうだよなあ。族長も表立って王に逆らえんし。」
「逆らってごらんなさい、あの部族のように根絶やしにされかねませんぜ。まあ、あの連中の中には、うまくボレリアに逃げたやつらもいるらしい、ってこってすが。」
「俺は、逃げたくても逃げられん。家族や親戚、一族に何をされるか分かったものではない。だが、遠征で生きて帰れるって、保証もないしなあ。」
「そうですなあ。・・・旦那、あっしが鍛冶の師匠から聞いた気構え・心構えをお伝えしましょうか?」
「鍛冶屋の気構えって、俺に関係あるのか?」
「いえね、刀を打つ時は自分の心との戦いなんでさ。だから、嫌々、やるといいモンができないんで。それで、まあ、そんな時のための’秘伝’なんでさ。」
「へーっ、何か、面白そうだな。」
「へへっ、これもここだけの話にしておいてくださいよ。実は・・・。」




