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22/22

Episode 22: Mephi(メフィー)

登場人物

 田所トシキ/カヨの息子、パン屋でバイト

 

 シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子

 

 サーシャ(アレクサンドラ・カラマゾヴァ)/三姉妹三女、心優しいカトリック

 ※カラマーゾフの兄弟のアレクセイとは無関係です


 グレッチェン/悪魔に取り憑かれた大学院

 メフィストフェレス/グレッチェンに取り憑いた悪魔


☆なんちゃって参考文献

 ゲーテ「ファウスト」

 ドフトエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

 ※読んでなくても大丈夫!


日曜日の朝。

Bakery Karamazova。

サーシャは、厨房でパンをこねていた。

静かな朝。

トシキも、隣でパンをこねている。

「Today’s quiet(今日は静かだね)」

「Yes. Sunday mornings are always slow(ええ。日曜の朝はいつも静かよ)」

その時。

サーシャの携帯が鳴った。

「Excuse me(ちょっと失礼)」

サーシャは、手を洗って携帯を取り出した。

メッセージ。

グレッチェンからだった。

「Sasha, can we meet? I want to go to church. I’d like you to come with me. Please(サーシャ、会えますか?教会に行きたいの。一緒に来てほしくて。お願い)」

サーシャは、少し考えた。

そして、返信した。

「Of course. What time?(もちろん。何時?)」

数秒後、返信が来た。

「2pm? St. Mary’s Cathedral(午後2時?聖メアリー大聖堂)」

「I’ll be there(分かりました)」

サーシャは、携帯をしまった。

トシキが、聞いた。

「Something wrong?(何かあった?)」

「No. Gretchen asked me to go to church with her(いいえ。グレッチェンが一緒に教会に行ってほしいって)」

「Church?(教会?)」

Yes(ええ)

サーシャは、静かに微笑んだ。

「She seems to be struggling. I think she needs someone(彼女、苦しんでるみたい。誰か必要なんだと思う)」

「…You’re kind, Sasha(優しいね、サーシャ)」

「I’m just doing what I can(できることをしてるだけよ)


午後2時。

St. Mary’s Cathedral。

大きな石造りの建物。

ゴシック様式。

高い尖塔。

ステンドグラス。

サーシャは、正面の階段の前に立っていた。

数分後。

グレッチェンが来た。

相変わらず痩せている。

でも、少し元気そう。

黒いコート。

長い黒髪。

Sasha(サーシャ)

Gretchen(グレッチェン)

二人、微笑み合った。

「Thank you for coming(来てくれてありがとう)」

「Of course. How are you?(もちろん。調子はどう?)」

「…Better. But…(良くなってる。でも…)」

グレッチェンは、少し躊躇した。

「He’s still there. Mephistopheles. Quieter, but…still there(彼はまだいる。メフィストフェレス。静かだけど…まだいる)」

「I see(そう)

サーシャは、静かに頷いた。

「I wanted to come to church. To pray. To ask for help. But I’m scared to go alone(教会に来たかった。祈りたい。助けを求めたい。でも一人で行くのが怖くて)」

「It’s okay. I’m here(大丈夫。私がいるわ)」

サーシャは、グレッチェンの手を握った。

「Let’s go together(一緒に行きましょう)」


教会の中。

静かで、広い空間。

高い天井。

美しいステンドグラス。

日の光が差し込んでいる。

木製の長椅子が並んでいる。

二人は、前の方の席に座った。

グレッチェンは、緊張している。

手が震えている。

サーシャは、静かに隣に座った。

そして、小さく祈り始めた。

グレッチェンも、目を閉じた。

数分の沈黙。

その時。

グレッチェンが、小さく震えた。

「…He’s here(彼がいる)」

「Where?(どこに?)」

「Behind us. In the corner. He looks…uncomfortable(後ろ。隅の方。彼…居心地悪そう)」

サーシャは、振り返った。

教会の後ろ。

暗い隅。

そこに。

影のようなものが見えた。

いや、見えなかった。

でも、何かがいる。

サーシャには、分かった。

サーシャは、静かに立ち上がった。

そして、その方向に歩いて行った。

「Sasha!?(サーシャ!?)」

グレッチェンが、驚いた。

でも、サーシャは止まらなかった。

影の前まで来た。

そして、静かに言った。

「Hello. I’m Sasha(こんにちは。サーシャです)」

「…」

沈黙。

でも、空気が動いた。

サーシャには、感じられた。

何かが、そこにいる。

バツが悪そうに。

隅に追いやられている。

「You’re Mephistopheles, right?(あなたがメフィストフェレスね?)」

「…」

また、空気が動いた。

サーシャは、微笑んだ。

「Nice to meet you(はじめまして)

そして、小さくお辞儀した。

「…」

グレッチェンは、呆然としていた。

サーシャは、グレッチェンのところに戻った。

「He’s there. But he can’t do anything here(彼はいるわ。でもここでは何もできない)」

「…You saw him?(あなた、彼が見えたの?)」

「Not really. But I felt him(見えたわけじゃない。でも感じた)」

サーシャは、静かに座った。

「Let’s pray(祈りましょう)」

二人、目を閉じた。

静かな祈り。

数分後。

グレッチェンが、小さく言った。

「…He’s still there(まだいる)

「I know(分かってる)」

「He won’t leave(離れない)」

「Maybe he doesn’t need to(離れなくてもいいんじゃない?)」

「…What?(え?)」

グレッチェンは、目を開けた。

サーシャも、目を開けた。

そして、グレッチェンを見た。

「He’s quieter now, right?(彼、静かになったんでしょ?)」

「…Yes(ええ)

「Then maybe that’s enough. He’s there, but he’s not hurting you(じゃあ、それで十分かも。彼はいる。でもあなたを傷つけてない)」

「But…he’s a demon…(でも…彼は悪魔よ…)」

「Maybe. But you can’t control whether he stays or goes. You can only control how you respond(そうかもね。でもあなたは彼がいるかいないかをコントロールできない。コントロールできるのは、あなたがどう反応するかだけ)」

サーシャは、グレッチェンの手を握った。

「And you’re not alone. I’m here. God is here. You don’t have to be afraid(それにあなたは一人じゃない。私がいる。神様もいる。怖がらなくていいのよ)」

「…」

グレッチェンは、涙が出そうになった。

「You…you accept it? That he’s there?(あなた…受け入れるの?彼がいることを?)」

「I accept that you’re struggling. And I’ll be with you(あなたが苦しんでることは受け入れるわ。そして一緒にいる)」

サーシャは、微笑んだ。

「That’s all I can do(それが私にできることよ)」

グレッチェンは、涙をこぼした。

「Thank you…thank you…(ありがとう…ありがとう…)」


教会を出た。

外は明るかった。

日の光。

グレッチェンは、少し楽になっていた。

「He’s still there. But…quieter(まだいる。でも…静かよ)」

Good(よかった)

サーシャは、微笑んだ。

二人、手を繋いで階段を降りた。

その時。

下の方から、声がした。

「Sasha?(サーシャ?)」

振り返ると。

トシキとシンディが立っていた。

「Toshiki? Cindy?(トシキ?シンディ?)」

サーシャは、少し驚いた。

トシキも、少し驚いていた。

「What are you doing here?(ここで何してるの?)」

「I was with Gretchen. We went to church(グレッチェンと一緒に。教会に行ってたの)」

トシキは、グレッチェンを見た。

そして、二人が手を繋いでいることに気づいた。

「…Oh(ああ)

少し、意外そうな顔。

でも、すぐに微笑んだ。

「I see. That’s…that’s good(そっか。それは…よかった)」

シンディも、微笑んだ。

「Congratulations(おめでとう)

心からの笑顔。

そして、少し安堵している。

(ああ、サーシャはそういう子なんだ…)

(トシキとは…そういうんじゃないんだ…)

シンディは、胸のつかえが取れた気がした。

グレッチェンが、少し恥ずかしそうに言った。

「We’re not…I mean…we just…(私たち…その…ただ…)」

サーシャが、横から言った。

「Gretchen needed someone. So I’m here(グレッチェンが誰か必要だった。だから私がいるの)」

「That’s wonderful, Sasha(素敵だね、サーシャ)」

トシキは、本当に嬉しそうだった。

「You’re a good person(優しい子だよ)」

「I’m just doing what I can(できることをしてるだけよ)

サーシャは、いつもの静かな微笑み。

シンディが、言った。

「If you need anything, let us know(何か必要なことがあったら、言ってね)」

「Thank you(ありがとう)

グレッチェンは、少し照れくさそうだった。

でも、嬉しそう。

「We should go. See you later(そろそろ行くわ。またね)」

サーシャは、手を振った。

トシキとシンディも、手を振った。

二人が去った後。

シンディは、小さく溜息をついた。

トシキが、聞いた。

「What’s wrong?(どうしたの?)」

「…Nothing. I’m just…relieved(何でもない。ただ…ホッとした)」

「Relieved?(ホッとした?)」

Yeah(ええ)

シンディは、微笑んだ。

「Sasha’s happy. That’s good(サーシャが幸せそう。よかった)」

トシキは、少し首を傾げた。

でも、何も聞かなかった。

「Yeah. She deserves it(うん。彼女にはそうなる資格がある)」

二人は、静かに歩き出した。


カフェ。

サーシャとグレッチェン、向かい合って座っていた。

コーヒーを飲んでいる。

グレッチェンが、小さく言った。

「He’s still with me. Mephistopheles(まだ一緒にいる。メフィストフェレス)」

「I know(分かってる)」

「But…he’s quiet. Like he’s…sulking(でも…静か。まるで…拗ねてるみたい)」

サーシャは、少し笑った。

「Maybe he is(多分そうなのよ)」

「…You’re not afraid of him?(彼が怖くないの?)」

「Should I be?(怖がるべき?)」

「He’s a demon(悪魔よ)」

「Maybe. But he hasn’t hurt you since I’ve been around. And if he tries, I’ll pray(多分ね。でも私がいる時は、あなたを傷つけてない。もし傷つけようとしたら、祈りましょう)」

サーシャは、静かに十字架を握った。

グレッチェンは、少し安心した。

「Thank you, Sasha(ありがとう、サーシャ)」

「You’re welcome(どういたしまして)

サーシャは、少し考えた。

そして、言った。

「If he’s going to stay, maybe we should give him a name(もし彼が居続けるなら、名前をつけましょうか)」

「A name?(名前?)」

「Mephistopheles is too long. How about…Mephi?(メフィストフェレスは長すぎる。メフィーはどう?)」

「…Mephi?(メフィー?)」

グレッチェンは、少し笑った。

「That’s…cute(それは…可愛い)」

「Right? Mephi. Nice to meet you, Mephi(でしょ?メフィー。よろしくね、メフィー)」

サーシャは、空中に向かって話しかけた。

「…」

グレッチェンは、笑った。

初めて、心から笑った。

「You’re strange, Sasha(変わってるわ、サーシャ)」

「I know(分かってる)」

サーシャも、笑った。


その夜。

ルイーズの自宅。

ルイーズは、携帯でグレッチェンに電話していた。

「Gretchen, I need a status update. How are the symptoms?(グレッチェン、状況報告が必要。症状はどう?)」

「…Better. Much better(良くなってる。すごく)」

「The voice?(声は?)」

「Still there. But quiet(まだいる。でも静か)」

「Quiet? Define ‘quiet’(静か?『静か』を定義して)」

「He doesn’t command me anymore. He’s just…there. Like background noise(もう命令してこない。ただ…いる。背景音みたいな)」

ルイーズは、メモを取った。

「And Sasha?(サーシャは?)」

「She’s…amazing. She accepts it. She even gave him a nickname(彼女…素晴らしいわ。受け入れてくれた。愛称までつけてくれた)」

「A nickname?(愛称?)」

Mephi(メフィー)

「…」

ルイーズは、ペンを止めた。

「She named the hallucination?(幻聴に名前をつけた?)」

「Yes. And it’s…helping. I feel less afraid(ええ。それで…助かってる。怖くなくなった)」

「…」

ルイーズは、何も言えなかった。

「Dr. Goldberg?(ゴールドバーグ先生?)」

「I’m here. Continue your therapy sessions. And…keep me updated(いるわ。セラピーは続けて。それと…報告を続けて)」

「Okay(分かったわ)」

電話を切った。

ルイーズは、データを見た。

Subject: Gretchen

Status: Improved

Hallucinations: Persistent but non-threatening

Intervention: Religious companionship (Sasha)

Result: Acceptance rather than elimination

Conclusion: ???

ルイーズは、ペンを握った。

「Acceptance therapy? Religious support? Or…(受容療法?宗教的サポート?それとも…)」

ルイーズは、もう一度データを見た。

「…I can’t explain this scientifically. But it’s working(科学的に説明できない。でも効果が出てる)」

ルイーズは、溜息をついた。

そして、新しいページを開いた。

Note: Some phenomena may not require scientific explanation. Effectiveness is what matters.

(注記: いくつかの現象は科学的説明を必要としないかもしれない。重要なのは効果)

ルイーズは、ペンを置いた。

「…This is unacceptable. But…it’s true(これは受け入れられない。でも…事実)」


グレッチェンの部屋。

グレッチェン、ベッドに横になっていた。

静かな夜。

メフィストフェレスの声が、小さく聞こえた。

「…You gave me a nickname(…愛称をつけたのか)」

グレッチェンは、微笑んだ。

「Sasha did. Do you like it?(サーシャがね。気に入った?)」

「…It’s ridiculous(馬鹿げてる)」

「I think it’s cute(可愛いと思うわ)」

「…」

沈黙。

そして、小さく。

「…Fine. Mephi it is(分かった。メフィーでいい)」

グレッチェンは、笑った。

「Goodnight, Mephi(おやすみ、メフィー)」

「…Goodnight(おやすみ)

グレッチェンは、目を閉じた。

そして、安らかに眠りについた。


サーシャの部屋。

サーシャ、ベッドで祈っていた。

「Lord, thank you for today. Please watch over Gretchen. And Mephi. Guide them both(主よ、今日をありがとうございます。グレッチェンを見守ってください。そしてメフィーも。二人を導いてください)」

サーシャは、十字架にキスした。

そして、ベッドに横になった。

窓の外、月が出ている。

静かな夜。

サーシャは、微笑んだ。

「Goodnight, Mephi(おやすみ、メフィー)」


次回いよいよ感動の最終回です!

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