⑥長身イケメンの正体が分かりました。
「アハハ! 納得したわー!
だから私を呼び出したのね。
変だなとは思ってたのよ」
カナデ先輩は腹を抱えて笑った。
「でも、家に来てるとか、言ってたじゃない」
エナが言った。
「後で話すつもりだったけど、言いそびれてた」
「防犯の為に、一人暮らしを隠してるエナと一緒ね。
防犯の為にシャツを干してるなんて言ったら、防犯の意味無いもんね」
先輩は涙を拭いながらソファに座り直す。
「でも、残念。ゼウスに会えるチャンスかと思ったのに。
ゼウスは大学OBで、一部の上位しか会えない。
私もアレースの男に集会に連れて行ってもらったことあるけど、会ったことないわ」
「そのアレースとかゼウスって何ですか?」
「ライオンファミリー内部の階級名称よ。
原則、下級は上級に逆らえない。
上級から承認をもらわないと級は上がらない。
承認に、学部や年齢は関係ない。
内部限定のものだったのに、OBが就職後も有利不利の差をつけだしたから、ファミリー関係なく上位の影響力が強くなってしまった。
極め付けは、ファミリー出身の弁護士が結束したこと。
これで面倒ごとは都合良く解決出来るようになったわ。
階級名はギリシャ神話の十二神が使われているの。
最高位がゼウス。
次にアポローン。
学生がなれるのはアポローンまで。実質学生トップ。
その次がアレース。
その次はヘーパイストス、ポセイドーンの順だったかな。
まぁ私は、アレース以上に興味がないし。
前アポローンはこの3月に卒業したから、誰が次のアポローンになるか注目してるの。
4月中に発表があるのよね」
私はハッと思い出す。
マサトさんは五籐に「僕はアポローンだ」と言っていた。
マサトさんもライオンファミリーてこと?!
私のこともペットみたいに品定めしてたの?
「シャツの効果は抜群だったんじゃない?
ゼウスの彼女には、誰も近付けないもの」
カナデ先輩の言葉に、私は渇いた笑いしか出来なかった。
「ところで先輩は、高富雅人は知ってますか?
法学部1回生です。
『自分はアポローンだ』って言ってました」
カナデ先輩の目が見開く。
隣で寝ころんでいたエナも起き上がる。
「新アポローンに会ったの?!
確かに、内示はされているはずだから。
高富……そうか……」
カナデ先輩はそう言いながらスマホを触る。
「うん、やっぱり。
そいつ、ライオンファミリー創始者の子孫かも。
創始者も高富なの。
あと30年位前のアポローンも高富で、こいつは創始者の直系親族だって書かれてる。
年齢的に新アポローンの父親の可能性あるね」
私は頭を下げた。
マサトさんはライオンファミリーとしてラビットの私に近付いたのだ。
五籐の「青田買い」という言葉が悲しい。
「私、五籐一族がファミリーを牛耳ってるって聞きました。
てっきり五籐の親が創始者だと思ってました」
エナが言う。
「今みたいなラビット小屋やOBシステムを生まれたのが、2〜30年前の話だからね。
このアパートを建てたのも五籐建設だし。
だから、五籐の権力が強い形になってる」
カナデ先輩はエナにファミリーの歴史を話した。
相当調べているのが伝わってきた。
私はトイレに行き、会話から離れた。
マサトさんがライオンファミリーだったことがショックで仕方ない。
胸に手を当てる。心臓がドクドク鳴っている。
少しホッとしたのと、新しいモヤモヤが浮かんでいる。
マサトさんと先輩は知り合いじゃなかった。
マサトさんの3階の友達は、先輩じゃない。
じゃあ、別の3階に住む女の子ってこと……?
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翌朝、私は先輩とエナに叩き起こされた。
二人は既にヘアメイクも着替えも終えていた。
「早く起きて支度しなさいよ!
学内カフェでモーニング行くんだから!」
カナデ先輩が強引に私の布団を片付けていく。
「大丈夫ですよ。5分以内に出られます」
「え? 化粧しないの?
道具貸してあげるよ?」とエナ。
「ありがとう。
でも普段から日焼け止めしか塗ってないし。
今日は日焼け止めも無いしね」
私はそう言って、トイレに向かう。
「先輩、どうします?」
「決まってるでしょ」
という二人の会話が聞こえてきたが無視する。
洗面所で顔を洗い、歯を磨く。
髪は着替えた後に適当に結べば良いや。
リビングに戻ると、私は二人に捕らえられる。
「な?!」
「フフフフ。覚悟なさい」
カナデ先輩がニヤリと笑った。




