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邪視  作者: 伊藤大二郎
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五.過去 琴神冬子の視点

 中学生になってから、私はクラスで孤立した。

 それはそうだ。無愛想でいつも下を向いている。話しかけても顔も見ないし返事もろくにしない。そんな人間を友達付き合いしてくれるような人間なんてそういない。いや、それ以外にも理由はある。

 私は有名人なのだ。

 邪まなものが見える私は、邪まなものが人にとりつき、犯罪を犯させる姿をいくらでもみてきた。

 だから、人にそういうものが取り付かないように、祓おうとした。

 不幸や犯罪の傍に、いつも私の姿があった。

 琴神冬子ことがみとうこに視られた人間は不幸になる。

 そんな噂話が流れているということを知ってから、私はできるだけ人と視線を合わせない。できるだけ、人の視界に入らないことにしていた。

 悲しいとは思わなかった。私を気味悪がってくれるのは、逆に助かるところもある。

 だから、突然声をかけられた時は驚いた。

「琴神さん」

 なんで私の名前を……。いや、クラスメイトだけれど。

「どうしたんですか、そんな驚いた顔をして」

 いつも通り、視線は合わせない。どうせ、くだらない噂を確かめようと近づいてきたタチの悪い連中の一人だろうと……。

「今度の文化祭でですね、模擬店班と看板班に分かれるのですけれど、どっちにします」

「文化祭は休みますから気にしないでください」

「何故に?」

「私のこと知ってるでしょう。私に視られたらどうなるか」

 睨みつけてやった。

 その、肌の白い、綺麗な男の子は、困惑していた。

「……随分と邪まな眼で見つめてきますね」

 とぼけているのか? わざとなのか? ……私のことを知らないのだろうか。

「私の噂、知ってるでしょ?」

「知りませんよそんなもん。まあ、笑えなんて言わないけれども、もっとすました顔してた方が見栄えがいいですよ」

 何をわかったようなことを。

 そんなことができるなら、私は


 けれど、人の顔をこんなに見たのは、久しぶりかもしれない。

 そこには、邪まなものは全くなかった。







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