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生まれ変わっても、私はあなたの幸せを心から願う  作者: Kouei


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第2話 私の前世は黒い犬 1

「…お…もい…出した…」


 私は…前世で黒い毛に金色の目を持つ犬だった。

(そこは今と同じね)


 名前はルナ。

 アーティーが付けてくれた大切な名前。


 犬での最初の記憶は…ゴミを(あさ)っていたところから始まった。

 親も兄妹もいなくて、ひとりで毎日お腹を空かしていたっけ。


 あの日も店の裏口に捨てられていたゴミを(あさ)っていたら、(ほうき)を振り回しながらやってきたお店のおじさんに追い立てられた。

 私は食べ残しのパンをなんとか掴み走り出す。


 町外れの森の入口で取って来たパンを食べていたら、飛んできたカラスにすぃ~と持って行かれてしまった。


 取り返そうと追いかけたら、勢い余って石橋から足を滑らして冷たい川の中へダイブ。 気が付けば、私は水の中でジタバタ状態。

 

 その時、小さい手が私を抱き上げてくれた。


「大丈夫だよっ 足が付くから暴れないでっ」


 

 それがアーティだった ――――――…


 

 浅瀬とは言え、当時のアーティーは7歳。

 自分も危なかったかもしれないのに…


 連れて来られたのは大きなお屋敷の……離れにある古い建物。

 こじんまりとしており、周りの木々は伸び放題。

 鬱蒼として、中はとても静かだった。

 

 「ノーラッ ノーラ!」


 「どうされましたか? 坊ちゃ…っ まあ、ずぶ濡れに…ッ え? 犬ですか?!」


 玄関先を掃除していた若い女の人が、振り向くと同時にこちらへ駆け寄って来た。

 身体が丸くて柔らかそうな人。

 この人、ノーラっていうんだ。

 ずぶ濡れになっているアーティーと私を見て驚いている。


「川で溺れていたのを助けたのっ」


「ま、まずは浴室に参りましょう、坊ちゃま」


 私は小さな男の子と一緒に浴室へと連れて来られた。



「わぁっ おまえ、ふわふわのつやつやになったねっ」


 浴室で体を洗い、タオルに包まった状態の私を抱きかかえると、居間(リビングルーム)で私の身体を乾かしてくれたアーティー。


「本当に…可愛らしい黒毛ですね。何か月くらいでしょう。子犬…というには少し大きいようですけど…成犬というにはまだ小さいですね」


 ノーラも私の事をじっと見ている。


「それにこの子、メスだったんだ」


 そう言いながら後ろから両手で私を抱き上げると、ノーラの方に見せた。


「キャンッ キャンキャン!」

(や、やめてっ どこ見せるのよ〜っ 私はレディよ!)


「あ、ごめんごめんっ 怒らないでっ」


 アーティーは慌てて私を絨毯の上にそっと下す。

 そこには小皿に入ったミルクが置いてあった。


(わ〜っ おいしいおいしいっ)

 私は夢中で、ミルクを飲んだ。


「親犬はおりませんでしたか?」

 

「うん、近くを探したけれど他に犬はいなかったよ。ノーラッ この子飼ってもいい? きちんと世話をするからっ」


「もちろんです。坊ちゃまの初めてのお友達ですね」


「うんっ 名前は何にしようかな〜 あ、お前金色の目をしているんだな。月のように輝いてきれい…あ、ルナっ お前の名前はルナだ。僕はアーティー。アランの愛称だよっ」


 アーティー?

 坊ちゃまって名前じゃなかったんだっ

 

「ワンッ アーウンッ」

(うん、アーティーっ)


「ノーラッ この子、今アーティーって言ったよっ!」


(聞こえた? アーティーって聞こえたんだっ)


 私の言葉がアーティーに伝わって嬉しかった。


「ふふ、そうですね」


 でも、ノーラにはそう聞こえなかったみたい。

 けど、楽しそうに笑っているから、やっぱり嬉しいっ

 


 それから私はここに暮らす事になった。


 ゴミを(あさ)らなくていい。

 おじさんに(ほうき)で追い立てられる事もない。

 雨の中、寒さに耐える事もない。



 もうひとりじゃない。


 

 私はあたたかい布団の中で、アーティーの寝息を感じながら眠りについた。



 そしてしばらくすると、この家の様子が見えて来た。



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