第十五章『日ノ本と大陸で起こった不可解な事件』その④
前回の投稿について、改めて謝罪を…ほんとすみません
今回含め以降も改めて頑張ります
「さて、まずは学園長にお話を伺うついでに挨拶しに行くとしましょう。何を隠そう、今回の一件はその学園長からの依頼でもあるんだよ」
「ほう学園長ですか…。それなりに危機感を持っているのは好印象ですね」
「そりゃ全国各地で発生している事件の第一現場かつ、2回3回と事が起こってんのよ?そりゃ長たる者からすれば気が気じゃないでしょ」
学校への道中、重たい足取りのまま道を歩くミョルエルとメレルエルの気を紛らわせようと話を切り出したアラドヴァルは、メレルエルの言葉に相槌を打ってから情報の共有を計る。
「うん、相当参っているみたいだよ。最初こそ偶然が重なっただけだと言い聞かせて大事にしようとはしなかったみたいだけど、調べれば調べる程自身の手には負えないものだと判断して城崎に協力を仰いだみたい」
「それが今回のこれに繋がったわけですか。全く、城崎も面倒な案件を押し付けてきたものです。それであの場では気まずそうな顔をしていたわけですか」
つい数時間前のことを思い出しながら呆れた顔を浮かべたミョルエルの足取りは殊更重いものへと変わるも、程なくして姿勢を正し凛とした様子で足を進ませた。
「何にせよ面倒なのには変わりないわよ。未だに納得いかないわよ、ミョルはともかく私もだなんて」
「何故そこで私は良しとなるのです…」
「まあまあ二人とも、もうなるようにしかならないんだからやれることをやろうよ。じゃないと長い期間、学生をやる事になっちゃうよ?」
諭すようなアラドヴァルの言葉に微妙な表情を浮かべた二人は、足取りはそのままに深いため息を吐き出しては校舎の一部を目にし、改めて姿勢を正す。
ちらほらと制服を着ている若者の姿があり、三人に向けている視線には驚きと困惑といった感情が多く見られた。
「…ねぇ、なんか異様に見られてない?特にミョルが」
「うーんまあ気のせいではないレベルで見られてますね。特にミョルちゃんが」
そうすぐ隣からも視線を向けられたミョルエルはスカートの端を軽くつまみ上げ、自身に満ち溢れた表情を浮かべた。
「そういえばメレルエルから感想を頂いていませんでしたね。どうです今の私?可愛いですか?」
くるりとその場で控えめに回ってはあざといポーズをメレルエルへと向けたミョルエルだったが、当のメレルエルはげんなりとした表情を向けていた。
「あーはいはい可愛いかわいい。ホント世界で一番かわいいわー」
「とても粗雑な感想ありがとうございます♪…まあ私が注目されるのは仕方ないですよ。ただでさえちんちくりんな背丈にとびきりの美少女なのですから」
「それは認めるけどいざ本人に言葉にされるとイラっとくるわね」
「だけどそれだけじゃない気がするんだよね。男女関係なく見られているのは異常な気が…」
そう視線を周りに向けたアラドヴァルだったが、自分たちの少し後方から向けられていた視線に気が付き視線を向けると、今にも犯罪を起こしそうな危険な目つきでいる怪しい女生徒と目が合った。
怪しいところが見当たらないほどに異質な光景から言葉を失ったアラドヴァルだったが、怪しい女生徒はアラドヴァルへとニコリと笑顔を向けては路地裏へと姿を暗ませた。
「…?どうしたのあーちゃん。鳩が豆鉄砲を食ったような顔しちゃって」
「いやまあ…多分大丈夫だよ。邪気はあったけど悪質なものじゃなかったから」
「一般的に邪気というのは悪質なものだと思うのですが…。ですがまあ大丈夫というのは間違いないですね。あの類のものは何度か経験ありますから」
「嫌な実体験をしたものね。…まあ二人がそういうなら気にしなくてもいいわね」
そう言葉にはしつつも懸念が晴れないまま、メレルエルは率先して前へと歩み始めたのをアラドヴァルとミョルエルは軽い足取りで後に続いた。
「さて、まずは呼び立てに応じてくれたこと感謝する。これらはそれに対する礼だと受け取ってもらえると助かる」
学園長室へと赴いた三人は学園長である『雑賀荒一』からもてなしを受け、お茶菓子を適当につまみながら雑賀の話に耳を傾ける。
「結構。しかし、私から話せることは正直なところ何もない。貴方達に協力を仰いだのは私ではどうすることもできないと判断したことと、ただの私一個人の事情に過ぎない。…そんな事に付き合わせることを非常に申し訳なく思っている」
「…まあそう思うのは貴方の勝手だと思いますが、私から言わせてみれば『気にすることはない』…といった所でしょうか。貴方は貴方が取れる手段で事の対処に務めた。それが功となるかは私達の手腕によるもの。私目線からは最善の判断だと言い切れますが、これでもまだ自身のことを責めますか?」
別段攻め気のない言葉でありつつも傍から聞いていたメレルエルは僅かに眉をひそめていたが、ミョルエルの言葉に雑賀の反応は意外なものでありメレルエルの表情は朗らかなものへと変わった。
「…いや、その言葉で十分だ。心から感謝する。何処か荷が下りた気がするよ」
「そうなるのは少し早いわよ。未だ事件は解決していない。私達も今回の事件に関しては緊急性を要するから快諾したのを忘れたの?…まあ学生してるのは意味わからないけど、必ず解決して見せるわよ。当然、早急にね」
「とても心強いよ。出来得る限りの支援はさせてもらう。何か学生生活に必要な物があれば遠慮なく申し出てくれ。手始めに受講するにあたって使うであろう物は全て用意してある。鞄は予め依李姫様から各々の好みを聞いて幾つか用意してある。好きな物を選んで使うといい」
そう雑賀がミョルエルの座っているソファーの後ろへと移動し、棚の上に掛けてあった布を取り払うとそこには様々な学生鞄が置かれており、ミョルエルだけは目を輝かせ身を乗り出すほどに高揚していた。
「…あーまあそうよね。学生するのなら必要よね。でもこれで本当に私達は学生するんだって自覚が持てたわ。どうしてこうなったのやら」
「学園長。一つだけ今、お聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」
スッと、学生が先生へと質問するように手を上げてから問いかけたアラドヴァルに、雑賀は不思議そうな表情を浮かべながら口を開いた。
「あぁ構わない。一つと言わず幾らでも」
「ありがとうございます。では…私達が学生生活を送るのは―送らなければならないのは、雑賀荒一学園長貴方の独断ですか?」
そのアラドヴァルの質問に三者三様の反応を示すも、ミョルエルとメレルエルはその行く末を雑賀へと委ねるように視線を向け、その視線を受けた雑賀は一度瞼を閉じてから開くとその眼には濁りのない―嘘偽りないものが確かにあった。
「断言しよう。それは私の独断ではない」
「…そのようですね。お答えいただきありがとうございます。それだけで、今は他に聞くべきことはありません」
「そうか。なら、早々に準備を終わらせ授業を受けてもらう。外敵が潜伏しているのなら何かしらのアクションがあるかもしれないが、そのまま潜伏し続ける可能性の方が高い。だが、対抗手段を取ったというその事実こそがその外敵に与える精神攻撃足り得るはずだ。短期間での効果は薄いだろうが、長期間ともなれば話は別だ」
雑賀は自身の額へと手を当て言葉を綴りながら座り慣れた椅子へと腰を下ろすと、少しの間を置いてから残る言葉を口にする。
「これは私の個人的見解なのだが、その外敵は目的意識もなく蛮行を繰り返しているとは思えない。ならば邪魔され続けその目的を果たせないとなれば外敵は行動せざるを得ないだろう」
「その根拠は一体何ですか?」
食い入るようにそう問いかけたミョルエルに、雑賀は「ただの勘だよ」と天井を見上げながら言葉を溢してから視線を三人へと戻し言葉を続ける。
「だがきっと間違いじゃない。そんな予感がある。付け加えるのなら、その外敵はその状況を黙ってみている事などできないと、そう思う。…すまないな、あまり憶測で話すものではないのだがな。察しの通り、今の私にはあまり余裕はない。せめて…せめて私が務めるこの学園にいる子供達には幸あれと、私の我儘を叶えて欲しい」
「っは、愚問ね。貴方は貴方の世界を守るべくして手を尽くす。まだそれは終わってない。勝手に終わった風にしてたら、勝てるものも勝てないわよ」
そう立ち上がったメレルエルは様々な鞄を乗せている棚へと歩みを進め、その中にある特に目についた鞄を掴み取る。
「これはその前報酬として貰っとくわ。全部終わったって返さないし、ちゃんと報酬も考えときなさいよ。ちなみに私の希望はバカみたいに高い焼肉に私達を連れていくこと!遠慮なく食べてあげるから財布の中身、たーんと用意してなさいよ」
そしてその鞄の中に用意されていた教科書や筆記物、その他諸々の物を詰め込んだ。
「じゃあ私はたかーいお寿司を希望します。美味しいところ探しておいてくださいね」
メレルエルに続きアラドヴァルが席を立ち、要望を口にしながら慣れた手つきで鞄を手に取りその中へと教科書などを詰め込んでいく。
「あ、後ですね。学園長が知っているとびっきりの絶景ポイントに連れて行ってください。約束ですよ?」
人差し指を軽く口に当て見た目相応な可愛いポーズを取ったアラドヴァルに、雑賀は込み上げてきた笑いを隠すことなく吐き出しては「あぁ、わかった」と言葉を溢す。
「とびっきりの場所を知っている。君達の希望に添えられるよう願っている―いや、期待しているといい。必ずご期待に添えよう」
「では、約束成立ですね。楽しみにしています」
そう軽い足取りでメレルエルの傍―扉へと移動したアラドヴァルは、メレルエルと目を合わせて小さく笑ってから未だソファーに腰かけていたミョルエルへと視線を向けると、メレルエルの視線も自ずと同じ方向へと向いた。
雑賀の視線もまたミョルエルの方へと向いたのを、ミョルエルは妙な居心地の悪さにようやっと立ち上がっては特に目に留まっていた鞄を手に取りその中に物を詰め込んだ。
しばらく悩んだ後ようやっと思い至ったのか、鞄の持ち手を肩にかけ雑賀へと真っすぐに目を向ける。
その視線に少し緊張したような様子で覚悟を決めた雑賀だったが―
「私への報酬はまあこれで十分です。あとはお二人と同じ食事…そうですね、その時は私の部下達も同伴でごちそうになりましょう。それとアラドヴァルの希望である絶景も。それ以外には特に求めません。えぇ、それで私は十分です」
―綻んだ笑みを向けられ、面を喰らった雑賀は声を上げて笑っては目尻に溜まった涙をふき取った。
「そうか、十分か。何ともまあ、強欲なのだな」
「ま、私は強いですからね。それくらいが丁度いいのです」
そんな言葉を吐き捨てるようにメレルエル達の元へと駆け寄ったミョルエル。
その姿を終始その目で追い、雑賀は静かに瞼を閉じた。
「相分かった。期待がとてつもなく跳ね上がった気がしなくもないが、それに答えるだけの用意はある。…期待しているぞ天使諸君」
閉じていた瞼を開いた雑賀は、今度は期待を宿した瞳を三人へと向けると―
「任せなさいな」「はい♪お任せを」「お任せください」
―そう三者三様に言葉を返し、メレルエルが開いた扉を潜って学園長の部屋を後にした。
「はい、ということで―今日から短期間ではありますが、皆さんの学友が増えることとなりました。それじゃあ自己紹介をお願いします」
「皆さん始めまして。私はミョル・エルハ、気軽にミョルちゃんって呼んでください。短い間になるかもですが、皆さんと仲良くできると嬉しいです」
そうとびっきりの笑顔を浮かべたミョル・エルハ―もといミョルエルに、教壇の端に移動していたはずの2-3のクラス担当教師・清水澄香は黄色い声を上げミョルエルへと抱き着き「みんな仲良くするんだよぉ」と少し羨ましそうに声を上げる。
そんな教師と見覚えのある顔が並んでいるのを、花垣有希と七瀬咲、そして新西夢莉の三名は驚きのあまり言葉を失っていたが、そう間もなく新西夢莉は勢いよく席を立ち上がり駆け出してはミョルエルを抱きしめ声を上げ、その目からは大粒の涙が幾つも流れ出ていた。
ついに有希と咲、そして夢莉が登場ですね
夢莉は第八章の主軸、語り手を務めてもらったほど思い入れがあるキャラです
今回の話でもきっと活躍してくれることでしょう
さて次の投稿は12/24(水)となります
何か追加で出来たらいいなぁと思っていますが、その前に第二章の書き直しかなぁという思いもあります
丁度クリスマスイブですねぇ…しかもその次はクリスマス…何かできそうだなぁ~やれそうだなぁ~
まあ期待しないでお待ちください




