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天使のパラノイア  作者: おきつね
第十五章
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第十五章『日ノ本と大陸で起こった不可解な事件』その①

ついに第十五章の幕開けです

「本当にもう…行ってしまうのか」


 そんな情けない言葉をミョルエルの小さな背中に投げかけたミカエルは、今にもミョルエルを止めようと駆け出しそうな身体をあきれ顔のラファエルに抑えられたまま、情けない瞳からほろほろと涙を流す。


「エリミエル―エクスカリバーには随分と迷惑をかけてしまっていますから、そろそろ通常業務に戻してあげなくては」


「まあ当人はそれなりに楽しくしているみたいだけどねぇ~。あの子からしたら天界守衛は退屈だっただろうし、良い気晴らしにはなったんじゃないかにゃ~」


 けらけらとおどけた様子でそう告げたアリエルは、ミョルエルの身支度が終えたことを確認してから名残惜しそうにミョルエルを抱きしめる。


 ミョルエルは自身を現界へと行かせない為の試練を乗り越えたものの、力不足を否めない為に天界に残ることを決心。


 その場合に起こる現界守衛の穴埋めを、エクスカリバー本人の志願とその上官にあたるアリエルの推薦によって、一時的なミョルエルとエクスカリバーの役割交代という形に落ち着き今に至る。


 自身の技量向上と共に、片手間の天界守衛としての活動はミョルエルにとっても新鮮なもので、これまであまり関りを持てず悪印象を抱いていたであろう天界守衛の天使達と打ち解け合えたのは僥倖だっただろう。


「…ちょっと寂しいけど、貴方と過せたこの二ヵ月とても楽しかったよ。それだけに最初の方は忘れてもらえるとありがたいんだけど…」


「えー、あれはあれで私は楽しんでいたのでいい思い出なのですが…。『私たちは、貴方の事を認めない』…いやー味のある言葉でしたよ、本当に」


「本当に忘れてぇ…」


 天界守衛第一隊の第三席ララミエルは耳まで真っ赤にして顔を手で覆い、恥ずかしそうに身を悶えさせる。


 ララミエルはエクスカリバーの事を心の底から尊敬している為にミョルエルには嫉妬から生まれた悪印象を抱かずにはいられなかったが、時間を共に過す内にその考えを改めさせることとなり、今ではすっかりとミョルエルが好きな天使の仲間入りとなった。


「だってしょうがないじゃん…他の天使と違ってやってることはめちゃくちゃで理解できなかったし、話す機会も無かったんだからそうなってしかるべきだったんだよ…。私は悪くない!だからお願い忘れてぇ」


 強気なのか弱気なのか、もはや自身ですらわからないままララミエルはミョルエルへと懇願するが、ミョルエルはからかう様な表情のまま視線を僅かに逸らしながらに言葉を口にする。


「嫌でーす。絶対に忘れてあげません。あれがあったからこその『ララ』なのですから、忘れてしまっては面白みにかけるではないですか」


 そう言ってから逸らしていた視線を戻したミョルエルは、見据えるようにララミエルへと瞳を向けては―


「…なので忘れません。何があろうとも」


 ―からかうような声色を変え、凛とした様子でララミエルへと強く言葉を言い放つ。


 そのことにララミエルは先程とは別の感情によって耳まで真っ赤にしては僅かに俯き、か細い声で「うん、わかった」と言葉を発しては、チラチラと視線をミョルエルへと戻しては逸らし何処か落ち着かない様子でいた。


「まあ今生の別れというわけでもないのです。また気まぐれにでも天界へは顔を出しますので、その時にはエクスカリバーやレラルミル、それとベルリエルを交えて談笑しましょう。きっと、楽しいですよ」


「そうだね、それはきっと楽しいだろうね。…うん、もう大丈夫。現界でも元気でね、ミョル」


 目に涙を溜め、それを溢さぬように手で拭ってから柔らかい笑みを浮かべたララミエルは、軽くミョルエルにハグしてから身を放し後退する。


 それを待っていたとばかりに他の天界守衛第一隊の面々が矢継ぎ早にミョルエルへと別れの言葉を告げては名残惜しそうにその場を後にし、やがてミョルエルと熾天使の面々のみがその場に残されていた。


「随分と慕われたな。まあそれもそのはず、今まで皆ミョルエルという天使を知らなさ過ぎただけのこと。知られてしまえばこうなることなど手に取るようにわかっていたのだがな!」


「はいはい後方理解者面は程ほどにね。まあ何にせよ、皆のミョルエルへの印象は変わっただろうね。誤解が無くなってよかったよ本当に」


「ですね…」


 しんみりとした空気感を嫌ったミカエルがおどけるように言ったのをアリエルがはぐらかし、同意した様子のミョルエルが短く言葉を紡ぐ。


 そして、熾天使の各々と言葉を交わしてから現界へと下る寸での所で、二ヵ月ぶりにミョルエルの前へと真神が姿を現した。


「お見送りですか?殊勝なものですね、何を企んでいるのです?」


「まあ色々と、な。取り急ぎのものでもないが、まあ私とお前の間に交わした約束についてだ。そう時間は取らない。聞いていけ」


 そう告げてから僅かに掲げた指を鳴らした真神は、周囲にいる熾天使に今から話すことを聞かれまいと『無音の空間』を展開する。


 それを傍から見ていた熾天使達は自分達に背を向けて話している真神が何を言ったかは分からず終いな上で、喜びと悲しみを混濁したミョルエルの感情のみを読み取ることができ、言葉にしがたい感情を抱いたまま現界へと下るミョルエルの小さな背中を見送った。




 天界から現界へと下る道中でミョルエルは自身が抱いた感情に整理をつけ、依姫神社の鳥居前へと足を下ろし一度息を整えてから鳥居を潜る。


 神域と成った依姫神社はミョルエルの知るものとは違い、鳥居を潜った先に移りだされた視界では潜る前の依姫神社の外見とは似ても似つかない空間がそこには広がっていた。


「…何ともこれは。何故こうなったのかは予想できますが、それを実現できる御力は無かったはずなのに」


 困惑の中そう言葉を溢したミョルエルだったが、眼前に集まった数多の淡い光が人型へと変わるさまに視線を奪われた。


「久しぶりだねミョルちゃん。納得がいく結果は得られた?」


 その人型がミョルエルのよく知る神であり、此処依姫神社で祀られる四季神・依李姫であることに気が付いたミョルエルは、その御身の姿を目にした途端駆け出しその身を依李姫へと投げるように抱き着いた。


「はい、当然です!そして…ただいま帰りました依李姫様!」


「うん、おかえりなさいミョルちゃん♪」


 抱きしめる力を少しだけ強めその体温を確かめる依李姫は、懐かしむようにホロリと一粒の涙を溢してから「本当に…おかえりなさい」と噛みしめるように小さく言葉も溢した。


 程なくして他愛のない雑談を交わしながら拝殿を越え本殿へと歩みを進める二人は、その道中の脇道で酒を煽る人物と遭遇した。


「これはこれは懐かしい顔だ。だというのに外見的な変化が見られないとは…惜しめばいいのか、喜べばいいのかわからんな」


 背負った刀はおよそ『刀』と呼ばれるそれらに比べて刀身が長く、鍔も見られないといった特異な物であり、一目見て記憶にある人物と同一人物であると気が付いたミョルエルは感嘆したように言葉を紡いだ。


「おぉ~言われてみれば懐かしい顔ですね。息災でしたか?小次郎」


「息災であったとも。まあそれもここ三ヵ月よりも前の話ではあるがな。…本当に波乱万丈な三ヵ月だった。いや、それはこれからも…なのだろうがな」


 何とも悲観に満ちた眼差しをする佐々木小次郎は、手に持っていた酒を一口煽ってから小さく息を吐き出した。


「ですが、とても満ち足りているのではないですか?かつて叶えることができなかった事が今は此処にあり、これから先も夢を見ているかのような出来事が様々起き得ます。私が知る貴方はきっと命が果てるその時まで、満足した顔をしていることでしょう」


 まるでそのような未来を視たかのようなミョルエルの発言に、佐々木小次郎は驚きの表情をしてからすぐに破綻させ、声を上げて大きく笑う。


「いやはや、そこまで言われてしまえば来たる未来が楽しみで仕方がない。当然、そこまで豪語するのであればその一助となってくれるのであろう?なぁ、ミョルエル?」


「言わずもがな、ですよ。それで何やら気配が探りにくいのが二人くらいこの神域内にいるみたいなのですが、小次郎はどのように捉えていますか?」


 そのミョルエルの発言に目を見開いた佐々木小次郎は、空いていた手でガシガシと後頭部を掻くと「そうさな…」と小さく吐いてから言葉を紡いだ。


「つい先ほど、まあ恐らくはミョルエルがこの神域内へと入った時なのだろうな、見知った気配が二つ消えたことは把握している。だがまあ、そう警戒せずともよいと思うぞ?その二人ともミョルエルとは面識があるとのことだからな」


「面識がある方、ですか…。まあそう言われれば思い当たる伏がある方ですね。…ちなみに気付いていないようなので言っておきますが、その探りにくい気配の一つは小次郎のすぐ後ろにいますからね」


 そう佐々木小次郎のすぐ斜め後ろにある生垣の様な草木の塊へと指を指したミョルエルに釣られ、目線をその草木の塊へと移した佐々木小次郎だったが、移したその刹那にその草木の塊から飛び出した人物に抱き着かれ大きく身体を仰け反らせた。


「いえーい!小次郎つっかまえたぁ!!突発的鬼ごっこは私の勝ち!敗者である小次郎は今日一日私の言いなりね!もちろん…拒否権はないわよ♪」


 飛び出してきた人物は今は亡き『風神』の後釜に選ばれた半人半神の英雄気質の人物で、『雷神』の第二子にあたる今時代の風神。


 当人の強い希望によって『風子』と呼ばれている活発な明るい女の子。


 現在は惚れこんだ佐々木小次郎を我が物にせんと、猛烈にアピールを繰り返している。


「えぇいまたか!またこれなのか!突発的にルールも把握しないまま強制参加させられている某の気持ちを考えてくれ!」


「いやいや流石に意識をバリバリに向けられてちゃ、私に勝ち目が一切ないもん。ていうかいつになったら応えてくれるの?まあそうじらされるのも悪くないかもって思い始めちゃってる私もいるんだけど…」


「そんなこと気付いているとも。故に厄介さが勝ってきておるのだろうが」


「えーもう小次郎ってば照れちゃって!普段の貴方も戦ってるときの貴方も素敵だけど、ちょっと困ってる貴方も最高ね!あ、ミョルちゃんおっひさぁー。元気してたぁ?」


 佐々木小次郎の背中からひょっこりと顔を出し、ミョルエルへと手をひらひろとしながら問いかけた風子。


 それに対し、ミョルエルは「どうもどうも。元気ですよ~」と手短に済ませては、依李姫へと視線を向け「では行きましょうか」と佐々木小次郎と風子へと気遣いを現した。


「ちょっとまてミョルエル!某を置いていくな!無理矢理で構わないから一緒に連れて行ってくれ!」


「そんな野暮なことするわけないでしょうに…。風子、気が済んだらで構いません。本殿に来てくださいね」


「あいあいさー」


 ビシッと敬礼のようなポーズをとり、「またあとで」と手を振る風子とそれに囚われたままの佐々木小次郎をその場に残し、ミョルエルと依李姫は改めて本殿へと足を進ませる。


 その先から感じる見知った人物の事を思い浮かべ、ミョルエルが心底めんどくさそうな表情をしたのを依李姫は楽しそうに笑顔を浮かべた。

その②の投稿は10/29(水)の0時です

ちょっと余裕をもって期間あけます

久しぶりの執筆はやっぱりちょっと疲れるね

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