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四月の手紙

お兄様へ

お久しぶりです、お兄様。手紙を書くと言っておきながらも一ヶ月便りを出さなかったこと申し訳なく思っております。お兄様の怒りはこの一ヶ月の間に送られてきた十通の手紙からひしひしと伝わってきてます。本当に申し訳ありません。

ただ、言っておきたいのは決して私が手紙を出すことを怠ったのではなく、書きたくとも書けなかったのだ、ということです。

ええ、私もお手紙を書きたかったのです。ですが、仕事がそれを許さなかった。

私が参謀と称される男のもとについたことは我が家にいる頃に言ったと思います。

なぜ新入社員の私が、しかもどこかで技術を磨いていた訳でもない新卒というだけが取得の私が、そんな男のもとに配属されたのか、訳がわかりませんでしたが、この一ヶ月でよく理解しました。

それはただの人員不足でした。

あの上司、頭はいいのですが、性格はひん曲がっていました。

よく顔が良ければどんな性格だろうが魅力に見えると言いますが(実際私もそう思っていました)、あれは駄目です。あれは顔などでは補えません。

もはやイケメンであることがイラついてきました。不細工であれば、顔が残念だから……と哀れめましたが、なんですか?私より美しいって。かっこいいのではないのです。美人なんです。肌は私よりもきめ細かで、白いし、紫がかった白銀の髪は絹のようなんて例えが似合うし、瞳はルビーのように赤くて美しいし。もう本当に嫌です。正直自分は他人よりは美しい部類だと思っていましたが、自信が消失しました。

そしてあの上司はその美しい笑顔を常に浮かべ私を罵倒するのです。怒られながら罵倒されるより落ち着いて笑みで敬語で、罵倒される方が堪えるとは思いませんでした。しかも口が上手いのか乗せられてありえない仕事量を与えられます。魔王城の仕事は高給取りで安定していると思ったのですが、そんなことはありませんでした。ここはブラックです。ブラック企業です。お金だって新人の下っ端に出す給料はたいしたことありません。

ああ、もうやだ帰りたい。我が家が恋しいです。いちおう貴族でありながらも貧乏で家はボロボロな我が家が懐かしいです。ここは辛いです。こんな田舎な家やだ!!と叫びましたが田舎が恋しい。都会は恐ろしい場所でした。

なんてったってここ命の危険があるんです。

驚きましたか?私も驚きました。まさか、殺されそうになるなんて。

誰にって?そんなの決まっています。上司です。

私の部下なのだからこの程度避けてもらわねば、とトラップを仕掛けられます。信じられますか?斧が降ってくる日常を。崖に突き落とされる日常を。毒を仕込まれる日常を。

こんな上司の元で仕事をする。そりゃあ退職する人も多いでしょう(死亡した可能性はあえて排除します)

ああ、お兄様。私はもう帰りたいです。



虐げられているメアリーより

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