6話目
今日のお菓子は何かなー
なんて思いながらレストルームのドアを開けると中にはあまり人がいなかった。
なのに黒王子はいた。ついでにその相棒の白王子までいた。
白王子こと美月悠は、狩夜の親友で、白王子の名に相応しい優しく甘やかな雰囲気をもっている。
でも油断は禁物。
その笑顔の裏では何を考えているのかわからない奴だ。実際漫画で京華制裁の為裏で1番動いていたのは多分美月だし…
さり気ない主人公のフォロー役も美月だったっけ。
レストルームの特等席をチラッと見ると黒い頭が2つ並んでいる。その2人は言わずもがな狩夜と美月。
狩夜はともかく、美月はカラー絵で髪が金に近い茶系だったから少し残念だなー。
すごい似合ってて私の好みど真ん中で、外見だけだったら美月の方が好きだったのに。
高校デビューでもするのか?
それとも黒のままなのか...
と思いながら見ていたら反対を向いていた狩夜がこっちを見た。
げっ!こっちすごい睨んでるし!
考え事をしてた私の眉根ににはシワがよっていたらしい。
すごい睨んでくる。何ガン飛ばしてんだあぁん!?なんて台詞が聞こえてきそう...
まだお茶残ってるけどこの視線には耐えられん!
さり気なーく、さり気なーく私は部屋を出た。
目線をそらす時に首がぐぎぎぎってなった気がするけど自然に出れたと思う。うん。
外に行くと丁度お迎えの車がいたから、私はそのまま習い事の旅に出た。
「ごきげんよう、京華さま!」
「ごきげんよう、美希さん」
朝教室に入って1番に挨拶をしてくるのはいつも加藤美希ちゃんだ。
他の子は少し様子をみているようで、どうやら私を頂点にグループ内でもカーストが出来上がりつつあるらしい。
「京華さま、ごきげんよう」
2番めは大体桐沢凛音ちゃんがしてくれる。
美希ちゃんと凛音ちゃんは多分そんなに立場は変わらないけど、凛音ちゃんの少しおっとりした所が挨拶の順番にでている。
他の子達との挨拶もそこそこに、美希ちゃんがもう待てないと言わんばかりに身を乗り出して、
「京華さま、私昨日レストルームに狩夜さまが入っていくのを見かけましたわ!狩夜さまはいったいどんなお話をしますの?私、とっても気になりますわ。」
狩夜の名前に他の子もきゃっきゃっと色めき出した。
困った。私は狩夜と親しくないし、まして話したこともない。これから親しくなるつもりも無いしね。
そりゃ遠目で見る事はあるけどこれはみんなしてる事だし……
ああ、そんなキラキラした目で見ないで!
期待のこもった目で見ないで!
「狩夜さまはいつも特定の方とお話していて、私はまだお話したことがないの…」
「そうなんですか…」
あー、見るからにしょんぼりしちゃった。
まだ朝なのに、狩夜の情報が聞けなかっただけでみんなの頭にはキノコが...
うーん、色々観察したけどほんとにしょーもないことしかないけどいいかな?
「でも、お部屋の窓辺で美月さまと一緒にチェスをしていたわ。楽しそうにしていたからチェスがお好きなのかも。」
「まあチェス!」
「狩夜さまと美月さまにぴったりだわー」
「私もチェスを始めてみようかしら!」
思ったよりもウケたみたいで安心した。
そのまま狩夜さま談義が始まったので私も素敵ねーと適当に相づちをうつ。
「狩夜さまにはやっぱり日本のものより、西洋のものが似合うわよねー」
あははは。囲碁も将棋もあいつは攻略済みだよ乙女達。
チェスで喜ぶなら、とこの情報も教えようとしたけどしなくて良かった。
乙女達の夢をこわしてはいけないからね。