巣の喰らい合い
一日一本目指してみようかな...
地下市場をはじめとする地下空間。
そこは裏の人間の溜まり場。
噂と情報の集まる場所。
危険な物の取り扱いならお手の物。
表じゃ息もできないような人間が、平然と他人を罵り、殺し、そして互いに酒を交わす場所。
地上の法律も常識も、ここじゃ何の役にも立たない。
そして...
それが組織の独自のテリトリーなら、その性質はより顕著に出る。
「は~い、必殺仕事人とーじょーでーす。」
『蜘』の二大拠点のうち一つ、東宵区地下十二階層。
地下にあるくせして、目の前のビルは馬鹿みたいにデカい。まあ、市場にも言えることだが...
『廻、着いたか?』
「んー、問題なくね。出迎えもないなんて失礼だよね?」
『中に入った瞬間にもてなしが降りかかってくるぞ。こっちの情報は漏れてると考えたほうがいい。」
「向こうから来てくれるなら仕事減るから、楽でしょ。」
改めて建物を見上げる。さっきまでビルだったそれは今や墓石にしか見えない。
一体何人分の共同墓地になることやら...
「んじゃ30秒後突撃ね?」
『健闘を祈る。』
通信が切れる。
さて...
「『蜘』って懸賞首も居たよねぇ...なるべく顔は傷つけないでやるか♪」
突入まで5.....4....3...2........
「いぃよいしょぉー!どうもー百鬼堂のものでぇーす!」
最初のおもてなしは『蜘』の構成員さんたちによるもの。
ドアをいきなり蹴破られ一瞬だが、かなりの困惑の色が顔に写った。でもさすがはプロ!一瞬で調子を戻し一人が此方に切りかかってくる。
(目の前刀一人、右奥にも援護で拳銃持ちが一人、左から...投擲?手裏剣か?)
「これ持ってきて丁度良かったな...!」
オレは刀を抜き腰に巻いたワイヤーリールのフックを柄の端の穴に引っ掛ける。
そしてそのままいつも通り刀を振りぬく。
半端な刀で防げるような太刀じゃねぇぞ...
「首ぃ食いしばっとけッ!」
「は?」
構成員Aの刀ごと首が両断する。
「は?」だって、アホな声を漏らしやがって。笑かしてくんじゃねぇよ。
さらに振りぬいた勢いのまま刀から手を放す。
放たれた刀は、左から飛んできた手裏剣を弾き飛ばし、そのまま構成員Bへ一直線。
「ッ!?」
避ける間もなく、刀が胴を貫通した。
「Shall we dance?」
刀の反りとワイヤーを利用しBをオレのもとに手繰り寄せる。それと同時に右奥の構成員Cが拳銃を発砲してくる。だが銃弾は、間一髪引き寄せられたBの体へ全弾叩き込まれた。
「アハハッ!仲間割れ?ボスに怒られちゃうよ?」
「チィッ!」
一発でも当たるかも。そんなちょっとした希望に賭けCは引き続き引き金を引き続ける。だがこれらもまた全てBに受け止められる。ここまでくるとBもかわいそうなもんだ♪
そのまま走り込みBの背中から突き出た刀の切っ先、その延長線上にいたCごと、まとめて串刺しにする。
オレはBの死体から手を放し、二人の周りをぐるりと一周する。
「はいっ、蜘の子ワイヤー巻き一丁上がり!一緒に2回いこっか♪」
エレベーターに乗り込み、2階のボタンを押す。
ガコンッ
と少しばかり不安な音を立てながら箱が動き出した。二回まで少しばかり時間もある、懸賞金の確認を...
「げぇ!今下に置いてきたやつが一番高いじゃん...一、十、百、千...ひゃー...後で取りに帰るかぁ...」
チーン
「さて...僕のお小遣いになりたい人、手ぇあーげてっ!」
.........
.....
「こちら戸立。配置についた。」
『こちら蝿捕、こちらも問題なし。』
『脚高から各隊へ、相手はアマチュア、楽にこなして今夜は楽しむぞ。』
『「了解です。」』
骸灯百鬼堂
辺りを三人一組の『蜘』の3部隊が囲っている。
そして建物内にいる暮はそれらを探知しながらも、いつも通り過ごしていた。
食器を洗い終え、
給湯器のスイッチを入れる。
湯飲みを用意し、
中へティーパックを落とす。
端末へ一度視線を落とした後、
沸いた湯を静かに注いだ。
「...3、2、」
爆音を立てて外側からドアがひしゃける。
二度目の音で入口は完全に大破した。そしてその中から三人組が現れる。
「戸立、侵入に成功。」
『三人でそれぞれの死角を補え。とにかく隙を見せるな。』
「了解。」
戸立はそれぞれの部屋を調べ上げていく。事務所、シャワー室、倉庫、武器庫、屋上...
「暮はどこにもいません!」
『バカな!突入直前、窓から姿が見えていただろう!もう一度探し出せ!』
「その必要はないかな?」
「ッ!?」
途端、姿の見えない何かが戸立の身につけている連絡端末を破壊する。
火花が散り、砕けた通信機が床を転がる。
瞬間的に戸立は臨戦態勢をとる。お互いに背中を合わせ視界を補っている。
「そんなことしても無駄だと思うけどなぁ...」
どこからともなく声が聞こえる。
「廻の話をしようか?」
途端解説が始まる。
「君たちも知っての通り、アイツの殺人術はすさまじいものだ。その道の天井を叩いている。」
長テーブルの前に現れ消える。
「だがそれ以上に必要な能力がこの業界にはある。それは...」
「隠れ、隠す力。」
「この力がない限り、裏で生きていようとサツにつかまるのは時間の問題。だから身に着けてもらったんだ。君たちもアイツの殺人歴調べようとしただろ?」
「なぜそれをッ...?」
「その反応を見るに掴めなかったようだね?そんな君たちがさ...」
「今この場で俺に勝てると思っていたのかい?」
一瞬暮が現れ二人の首をねじ切る。そして残りの一人を手刀で両断した。
「ふぅ...殺人術はアイツの方が上手だが、人から音、空気に至るまで全ての物質の視線から自らを消す暗殺術に関していえば俺の方が上だ。」
大破した入り繰りから暮が外へ出る。
「残りの6人もまとめてかかってこい。ここまで来て逃がす訳ねぇけど。」
精進していきます。




