24 呪い
これは自分が最も怖い『呪い』というモノについて書いてみようと思う。
自分が思う1番恐ろしいモノといえば、ダントツで人の怨念、つまり人を憎む気持ちだと聞かれれば答えるだろう。
まずは職場の後輩に聞いたちょっとした怖い話。
後輩は、高校生の時に彼氏ができ、特に大きな喧嘩もなく順調にお付き合いをしていたらしいが……ある日から、何故か左側の肩の重ダルさに悩み始めた。
最初はなんかダルい?から始まり、肩が張る様な感じになり、酷い頭痛を伴う肩こりへ。
そしてそれからは徐々に指先にむかってその感覚は広がっていったのだという。
マッサージやらツボ押しやらに言っても効果はなし。
随分と参っていたらしいが、ある時彼氏がこう言ってきたらしい。
「最近、なんか左側の腕が痺れる。」と。
その子も左側の肩が重だるい症状に悩まされていたので、お互い『何なんだろうね〜?』と言い合っていたそうだ。
とりあえずシップを貼ってみたり、温めてみたり、ストレッチをしてみたりと、それぞれ良いと聞いた事を全てやっても全部効果なし。
次第に二人は険悪になっていったというか……一緒に部屋にいても肩が痛くてあまりイチャイチャする様な雰囲気にならなくなっていったそうだ。
しかし、二人の共通の友人が、ある日そんな二人にこんな事を言ったのだそうだ。
『お祓いにでも行ってみたら?』と。
確かに幽霊に取り憑かれると肩が重くなるとかいう表現がよく使われるので、共通の友人は何気なく言っただけだっただろうが、二人は近くにあるお寺へとダメ元で向かったらしい。
その時に5000円?くらいで、集団で御経を唱える会みたいなのに出席したそうだが、そこまで肩に変わった感じはなかったため、トボトボ帰ろうとしたら、お坊さんの一人に呼び止められた。
「元気がないですね。見た所、若いけど学生さん?」
「は、はい……。」
二人は少しだけ警戒しながらも、肩が重くて来てみた事、結局御経を聞いても治らなかった事を言うと、お坊さんは少し考えた後口を開く。
「それは多分、二人に憑いているモノが生きているモノだからじゃないでしょうか?
生きている人間相手は、とても大変なんですよ。
死んだ人間と違って生霊はとても強いから。」
「えっ!?」
思いも寄らない事を聞き、二人はビックリしたのだそうだが、実は二人には思い当たる節があったからこそ、驚いたのだ。
二人が付き合う前、彼は別の女性と付き合っていたが、非常にヒステリックな女性だったらしく、彼氏の方が何度も別れたいと伝えていたそうだ。
そのたびに怒鳴られ話し合いにならず……。
どうしようかと思っていたが、突然元彼女さんの方が新しい恋を見つけたらしく、アッサリと別れてくれたのだと。
それに対し彼氏の方は多少の怒りが湧いたが、ラッキーだと思う事にして、その後出会った友人と付き合いだした。
それでめでたしめでたし……だったら良かったが、なんと今少し経ってから別れた元彼が復縁の連絡がきたのだという。
『もう新しい彼女がいるから。』
そう強めに言って電話を切ったらしいが、それから元彼女はとてもしつこく連絡をしてくる様になった。
とうとう彼の方が着信を拒否して、それで終わり。
そう思ってホッとしていた矢先の出来事に、二人はこの元カノさんが生霊の犯人だと確信したそうだ。
「どうすればいいですか?」
そう友人の彼が尋ねると、お坊さんは難しい顔をしたらしい。
「生きている人間は本当に厄介で、結局は相手に負けない精神力を持つ事が重要です。
もし、その生霊の元になった方に酷い行いをしていたなら、一生取り憑かれますが……そうでないなら、しっかりと心を強くお持ち下さい。
それとその原因になった方の私物などが残っている場合は、処分する事をオススメします。」
親切なお坊さんはそういって行ってしまったらしいが、二人はそれを信じて、とりあえず彼の家の一斉掃除をする事にしたそうだ。
そして元カノが置いていったであろう私物は全て処分し、綺麗にし、最後に二人でベッドを持ち上げて下の埃を掃除しようと思ったのだ────が……?
「……なにこれ?」
ベッドの下から姿を現したのは、小さな人形の腕だった。
わざと置いていったのか、はたまた偶然バックなどについていた人形の腕が取れて落ちていたのかは分からない。
だけど、元カノのモノには間違いないと彼は言った。
しかもよくみると左腕で……それには二人揃ってゾゾ〜っ!としたのだとか。
更にそれを処分した後、みるみる内に左肩の不調は治ったというのだから、今では呪いというモノは信じていると言っていた。
この話を、ある日全く別の友人にしたとき、とても面白い考察を語ってくれたので、ちょっと書いておく。
その友人曰く、人の想いには波長の様なモノがあるんじゃないかと言っていた。
その中で怒りや憎しみなどの負の感情は、短波長で強い感情ほど波長は短くなっていくんじゃないかと。
「波長が短ければ短いほど、貫通力が高くなる……つまり、人体がそれを受けると身体はダメージを受けるじゃない?
それを長期に浴び続けると、身体の至る所に深刻な障害を引き起こすんだよ。
抵抗力のある内は耐えられる。
でもそんな絶好調の時は良いけど、人間ってどうしても心も体も弱る時が来るじゃない?
そうするとね、最後は負けてお陀仏だね。」
「なんか怖い考え方だな……。」
ヒェッと震える俺に、最後にその友人はこう言って話を締めた。
「でも、自称霊感あるって言ってた子は、生霊とか幽霊って取り付くと体にくっついていく……つまり内臓にべったりくっついてるって言ってたよ。
それで時間が経つと、その内臓とどんどん同化していって最後は命を奪うとかなんとか。
そう考えると……波長よりスライムみたいなイメージがあるよね。」
恨みが自分の臓器の一部に……なんか怖い!
人に恨まれて生まれた生霊は、最後は恨みの対象の臓器になって復讐を遂げるって……個人的にはかなり衝撃的な話だった。




