16 職場にいるモノ
職場でのちょっとした不思議な話。
その職場では、2つの職員の休憩部屋があり、そこを使って皆ご飯を食べる。
そこにはそれぞれテレビやコーヒーメーカーが置かれているため、各々ゆったり過ごすのだが、そんな二部屋の間に一つ小さな部屋があった。
部屋というより倉庫?のような部屋で、色んな雑品以外にも、一人用の机もあって、使おうと思えば使えそうな部屋だ。
「あの部屋って使わないんですか?」
そう先輩上司に尋ねると、あ〜……と何か思い出したかのように手を叩いた。
「あそこね、一応使おうって話になってたんだけど、あれじゃあ狭いから一人か二人が限度でしょ?テレビもないし、電子レンジもないし、それに冷房もないから暑いしね。」
「なるほど……。」
確かに二人が限界のその部屋は、元々は倉庫用だったらしく、冷房などの完備もない。
だから、誰も使いたくないという理由で誰も使っていなかった。
「なら、自分使ってもいいですか?」
「えっ!いいけど……。」
もしかして居心地が悪かったのかと心配してくれる先輩に、慌てて否定する。
情報量がキャパシティを超えると、たまに混乱状態になる事がある自分。
こうした狭い所で思考をリセットできる環境は、ただただ有り難い。
それを説明すると、先輩は全然いいよ!と言ってくれたので、自分は皆がご飯を食べている部屋に挟まれた、通称『中間倉庫』を使わせてもらえる事になった。
その倉庫部屋は上の方が空いていて、片方の部屋と繋がっているから、クーラーや暖房の風がそこを通って入ってくる。
だから他の部屋より少し居心地が悪いものの、一人の空間が手に入り
大満足だった。
「最高の空間だな。家より落ち着くかもしれない。」
ゆったりできる一人の空間に喜びながら、仕事を続けていたある日、不思議な事が起きる。
その日は社長の都合で、昼休みをいつもの倍くらい長く取ることになった。
「やった〜!」
「嬉し〜い!時間結構あるから、家に一度帰ろうかな〜♡」
「俺は外食してきま〜す。」
各々、その時間を有効に使おうと考え、その結果自分以外の職員は外出してしまうことに。
ってことは、ここに残るのは俺だけか。
そう理解したが、結局自分はいつも通り、中間倉庫で過ごすだけなので何も変わらない。
「いってらっしゃいませ〜。」
そう皆を送り出したあとは、中間の倉庫内で暇つぶしをしつつ時間を過ごしてしたのだが────……?
────ヒタヒタ……。
…………ヒタ……ヒタヒタ……。
突然誰かの裸足?の足音がした気がして、思わず隣の部屋に通じている、隙間部分を見上げる。
忘れ物かな?
それとも誰か帰ってきたのかな?
とりあえずそんな所だろうと予想して、作業に戻ると、また妙な音がした。
────パカッ……。
────ポチッ…………ポチッ…………ポチポチッ……。
何かを開く音とボタンを押す音。
それが何処かで聞いた音と似ていて………なんだっけ?と必死で思い出していると、パッ!とある記憶を思い出した。
「ガラケーだ。」
パカッと開く音は、折りたたみ型の携帯……通称ガラケーを開く音。
そしてポチポチと言う音は、携帯のボタンを押す音だ。
これは一時期何処にいても聞こえた音だったが、今現在では違和感しかない音だった。
ちなみに会社の中でガラケーを使っている人を、見たことがない。
「…………。」
この時点でサァ〜……と血の気が引いたのは、このガラケーの存在が、この会社の人じゃない可能性を思い浮かべたから。
……お化け?────いやいや、昼間だぜ〜?そんなわけ……。
窓は、眩しいからか閉め切っているため、部屋の中は全て薄暗い。
だが、昼間だということ、ハッキリ聞こえすぎる事、この二つが恐怖心を和らげ、俺は確かめようと立ちあがった。
部屋を出て、問題の音が聞こえるドアの前に立つと、もう一度パカッと開く音とボタンを押す音が聞こえたが無視してドアをノックする。
────トントン。
すると、ボタンを押す音はピタリと止まり、訝しげにドアを開けると──…………誰もいない。
「…………え。」
さっきまでハッキリ聞こえていたのに、誰もいないし、物音一つしない。
それに恐怖心がぶり返し、慌てて部屋を出て中間の部屋に戻った。
そして皆が帰ってくるのを待っていたんだが、その間、もうあの音は聞こえなかった。
その後、少し悩んだが、その体験談を同僚にこっそりと話してみたのだが、答えは非常にアッサリしたもんだった。
「あぁ、ここって昔病院だったからじゃない?
建物内がフルリフォームだったらしいから見る影もないけど。
ただ、部屋とかの構造的に不自然な間取りは残ってるよね。」
「えっ、病院だったの?知らなかった……。」
自分が働いているオフィスを見回し、ブルっと震えたが、そもそも何でガラケーのお化けが?と疑問が勝つ。
「普通病院っていうと看護師さんとか、患者さんのお化けとかじゃないのかな。
どうしてガラケーなんだろう?」
それについて二人で考えて考えて────同僚があっ!と思いついたことを聞いて固まった。
「あの休憩室、多分待機室かなんかだったと思うのよね。
ほら、一つの部屋の横に個室のトイレがあって、もう一つも同じ間取りの部屋があって────……ね?ちょっとそんな感じで使われてたから、待っている人達が携帯使ってたんじゃない?
それが念となって残ったとか?」
同僚はニコニコとその考察を口にしたが、俺は全く別の恐怖で固まったよ。
だってその考察が正しいなら、俺が使ってる部屋って────……。
トイレの跡地だよね?!
それが何よりの恐怖で、その後もあーだこーだと色々な考察を喋り続ける同僚の声は耳に入らなかった。




