15 石
我が家はいわゆる幽霊の通り道だと思われているのだが、本当にごく最近、その大元の原因らしいモノを見つけたので、その話をしてみる。
二世帯が住んでいたかなり大きな三階建てだった我が家、ここはもう長い事、父が一人で住んでいた。
元々は母の名義のこの家、母と離婚した父が勝手に居座っていたのだが、ゴミ屋敷化した家に嫌気がさしたのか、やっと出ていく事にしたらしい。
大量のゴミだけ残して、さっさと出ていったのだ。
残るのは、多種多量なゴミがこれでもかと詰め重なっているゴミ屋敷。
よくテレビでゴミ屋敷特集!とかやっているが、かつて住んでいた家は、そのレベルの廃墟の様な家になっていた。
小さい頃の思い出なんてミジンコほども見当たらない程の汚染家。 それを作ったのは、父と痴呆症の祖母だった。
正直、今も文句しか口からは出てこないが、弟と俺、母は淡々と片付けるしかない。
「もうちょっと綺麗に使えなかったのかよ、あのクソ親父が。」
「親父、家事全然できなかったからな。────うわっ、使用済みの介護オムツが大量に出てきた!」
ブチブチ文句を言う弟の相手をしつつ、片付けをしていると、押し入れの中から大量の使用済みオムツや吐いた形跡のあるシーツやタオルが出てきて、悲鳴を上げた。
祖母と祖父が住んでいたのは一階のエリアで、とくにそこが一番汚い。
畳もほぼ半分以上腐っている状態であった。
嫌で嫌で仕方なかったが、家を売るにはとにかく片付けるしかないと、とにかく無心で片付けた。
「そろそろ帰るわ。また来週〜。」
「私も明日早いから帰るわね。鍵よろしく。」
遠方に住んでいる弟、そしてそれよりは近いがやや遠方に住んでいた母は、夕方になると帰ってしまい、その後は俺一人に。
比較的家が近かった俺は、もう少し片付けしていこうと思い、一人で一階を片付けていると、突然妙な音が三階で聞こえた。
────トンッ……。
トッ……トッ…………。
…………トトトッ……。
それは木が軋んでいる音に聞こえなくもないが、小さな子供の足音にも似ていた。
「…………?」
ネズミの可能性も……?
嫌な妄想をしながら、恐る恐る三階に行ってみたが……誰もいない。
一応キョロキョロと周りを確認したが、その原因らしきものは一切なかった。
やっぱり木が軋んだだけか。
そう考え、階段を降りようとしたその瞬間────……。
──────トンッ…………。
まるで片足だけ軽く踏んだ様な音が背後から聞こえ、慌てて振り向く。
たが……そこにはやはり誰もいない。
「?────あ、まさか……。」
そこで思い出したのは、かつてこの家に住んでいた時に経験した霊現象(?)についてだ。
足音だけ聞こえていた霊現象たったのだが、どうやらまだこの家にソレは居るらしい。
窓を塞いでいたモノをどかしたらいなくなったので、てっきり足お化けもいなくなったとおもっていたのに?
「……もしかして、また部屋がゴミ化したから??」
至る所の窓が塞がれていたため、そのせいかと思ったが、足音らしきものは、今度は一階から聞こえてきたのだ。
トンッ……。
トットッ……トトトッ。
その足音は、前みたいに激怒しているモノではないように聞こえて……もしかして『久しぶり!』って言ってる?と勝手に解釈した。
少し怖かったが、二回手を叩き「早々に片付けるのでごめんなさい。」とだけ謝って作業を続ける事にする。
とりあえず、最後はゴミ処理業者を呼ぶとして、回収しやすいように、一階にいらないモノを集結し、持っていきたいものは少しづつ持って帰った。
そうして、ゴミが詰め放題!な状態になった一階。
それからまたきても妙な事が一階で多発する様になっていく。
────ゴトッ!!
…………ガザガザ!!!………ガガッ。
何かが落ちる音、まるで指でゴミを漁っているような音、何かをぶつけ合う様な音……上げるときりがない程変な音が頻繁に一階から聞こえるようになった。
「……ネズミ?……いや、それにしては、ちょっと……。」
母が訝しげに音がした際に見に行っても、その時に音は止む。
弟も気持ち悪がっていたが、多分一階が完全に塞がっているから通れないモノがウヨウヨしてるのでは?と思った。
母も同じ事を思ったようで、「早くゴミ回収してもらわないとね。」と言ってとうとう1週間後に回収を手配してくれたので、俺と弟はホッと胸を撫でおろす。
そして、とうとう明日回収会社が来るといった日の事、一応最後たからと、家を見に行ったのだが、一階の階段下にあるクローゼットの中身を出していない事に気づく。
「そういえばら洋服が大量に入っていた気がする!」
祖母の服が入っていたそのクローゼット、それだけ出しておこうと、ゴミをかき分け、そこを開けると────中から出できたのは予想通りの大量の服。
ブツブツ文句言いながら出していくと、奥に鉄製の大きな箱が2つ出てきたのだ。
「??なんだこれ?」
よくよく見れば、それはしめ縄みたいな太い紐で縛られていて、何かを封印しているの?と思えなくもないモノだった。
箱は重く、振ってみると、何か硬いもの?が大量に入っているのか鉄の箱に当たってガチガチ!という音が聞こえる。
「…………中には何が?」
正直気持ち悪いが、中身を知らないと業者も困ると思ったので、殆ど腐りかかっていたその縄をハサミで切った。
────パラッ……。
呆気なく切れた縄を見つめた後、意を決して箱を開けて────………。
「────はぁ?」
中のものが目に入った瞬間、俺は素っ頓狂な声を漏らす。
中から現れたのは大量の石。
綺麗でも何でもない、本当にただの石で…………なんじゃこりゃ?とその石を持ち上げて観察してみた。
すると、その石の裏に、何か書いてあるのに気づいた。
『〇〇県、〇〇、〇〇月〇〇日』
どうやらこれは、記載されている場所で拾ってきたモノらしい。
「お土産的な感じで拾っていたのかな?多分じいちゃんだろう。」
父と祖母は、何かを記載するなどの細かい作業は絶対しない。
そう考えると祖父だろうと予想する。
もう一つあった箱も同じモノが入っていたので、俺は中身をむき出しにしたまま、業者が持っていきやすいように置いておいた。
後日、家の中のゴミは完全撤去されたのたが、話のネタにとその事を話した部下が神妙な顔をする。
「それ、ヤバいっすね〜。石って持って帰っちゃダメって昔、お祖母ちゃんから聞いたことあるっす。」
「へぇ〜それってなんで?」
東北のかなり奥地に実家があるこの部下は、色々な伝承や言い伝えを知っていて、たまにこうして教えてくれる。
興味津々で耳を傾けると、部下は必死に思い出しながら理由を説明してくれた。
「俺の住んでいた地域だけで言われている伝承かもしれないっすけど、確か死んだ後に渡る川?とか、サイの河原?だったかな?
そこには石が積んであって、そもそも石っていうのは、死者の川と現世の川を繋具モノらしいです。
だから持って帰っちゃうと、死者の川と繋がって、たまに鬼たちが来ちゃうって話だったかな。
悪い鬼が来るから絶対に石は拾ってくるなって。」
「…………。」
もしかして家って死者の川と繋がっちゃった?
ただの迷信と言い切るには、ゴミを回収後はピタリと変な現象は起きてない。
だから、処分を一緒に頼んだその石たちが今、何処にあるのか……ちょっと気になってしまった。




