試練を乗り越えた者にはそれ相応の──
終わった、か。
なんとも呆気なく終わらせてしまった闘いに寂しいなんて感情を抱きながら、熱せられた大地に横たわる偉大なる魔王を見る。
「楽しかった、うん。 凄いな魔王、」
焦げ付いた龍に変化した腕の皮膚を見ながら改めてそう口にする。
全体的に見てしまえばその焦げは2cmしかない擦り傷もいい所だが、俺は無傷でやり過ごすつもりだった。
その証拠に龍の息吹を俺は両断した、届く前に。 斬ったモノを全て殺すつもりで、然し。 確かにあの灼焔は俺の腕を撫でたのだ、死ぬ前の火の粉とは言えども。
もう火傷すら残ってない腕を撫で、魔王に背を向け次の階層へ歩く。
いつの間にか横を歩く亜樹が悔しそうに眉を顰めながら口を開いた。
「汝様」
「またせたな亜樹、ん、どした? 」
「んや、対して待ってはいない、
───強かったか、あの龍神の王は。 」
「強かったよ。 終始口を聞いてはくれなかったけど、喋ってみたかったな、と思うくらいには、ね。 」
「そうか。」
俺が強かった、と言ったことに膨れっ面になったお姫様を「かわいぃ」などと少しアホとなった思考をし、即座に”切り替える”
膨れっ面のお姫様をお姫様抱っこし地面を蹴る、
加減なく蹴ったせいで割れた大地の隆起を背にそれなりの速度で探知し見付けた門へ急ぐ。
「? どうかしたのか汝様」
俺の急ぎ用に疑問を持った亜樹、その疑問に走りながら指を空に向けながら答える。
亜樹が首を傾げながら上を向き、驚愕に黒目を小さくした。
「少し斬り過ぎたみたいだ、世界が死んでる。 このままだと門が虚無に呑まれるからな、折角ここまで全部門を通ってきたんだし、転移ではい終いは勘弁したいからなー。」
あっはっはー、なんて笑いながら上へ少し目を向ける、
そこには俺が斬った箇所に向かい、景色が吸い込まれる光景。 それは世界の修復能力が間に合ってない証拠に違いなかった。
なにより不味いのがその吸い込む箇所が段々と拡がってる所、 放置すれば後四十秒でこの星位なら飲み干す虚無に置き換わる事だろう。
直せばいいって? その疑問には「まぁ、はいそうですね」としか返せないけど、この後にもしかしたらもう1戦あるかもだしね、俺も温存できる事はしとかないと。
そも、俺は殺す壊すは大の得意だけど、直すは苦手なんだよなあ、それも一回俺が殺したものになると特に。 だから(?)仕方ないネ。
「お、門の目視完了。」
「汝様の剣術の腕は、分かっていたことではあるが、とんでもない出鱈目だな。」
「それほどでもあるかもなー」
照れるぜ、ってな。
黒い装飾の施された大きな門を、「創ったヤツの趣味が分かる門だなあ」と思いながらその門を、
───蹴破る。
門を通れば、目に付くのは黒一色の雲道、そして血のような真っ赤な空、そして全容が見えない程長い玉座。
玉座には”真っ赤な王冠を被り””血、と表現するよりは猛る炎のような長い紅髪を流す”この世の者とは思えない美幼女”が──
────土下座していた。
「──しょ!!初手土下座から入る謝罪術ゥ!!!!!」
「こすい事この上ない謝罪術を初見で披露してきたんやが……!! 恥とか威厳はないのか……!? 」
「……母上様。 なんともセコイ……!! 」
”挑戦者””或る意味娘”に罵られてる(?)に等しい言葉を投げられながらも幼女は頭を上げることなく玉座へ押し当て続ける。
「うぉぉおおお!! 幼女が土下座までしとるんじゃ許してくれやがれェエエエ!!!!! のじゃ!!! 」
「ひ、開き直り方が最悪だ…!? 」
「あ、或る意味だが、尊敬すべきなの、かもしれん……」
「血迷うな? 絶対尊敬しちゃいけない部類だから…!」
てかこうゆうツッコミはキャラじゃないんだがっ! タスケテ…………雫!
「んてかさ……? 何故に謝罪……? 」
「……? 」
………?
やっと顔を上げ、その”綺麗”なお顔で小首を傾げる幼女の顔を見ながら俺も同じように小首を傾げる。
互いに首を傾げ、数秒。 やっと俺の疑問に答えてくれるのか口を開いた幼女、
「打首獄門断頭締首内蔵破壊臓物引出魂滅はご勘弁を、なのじゃ……? 」
「……人聞きの悪い言葉を並べやがって、俺は何世時代前の野蛮人かよ」
「しないのじゃ…?」
「しませんが………? ……………多分。 」
ポツリと最後に面白半分で呟いた言葉が悪かったのか土下座したまま後ろへスライドしてった幼女、
てか俺、そんな物騒な事常日頃にしそうにみえるのかな……? 客観的に見れば…するように見えるな、うん。
悪い事したか、……したかなあ? なぁんか前に煽られた覚えが、ある気がする、 一発殴って叩くとも誓った気がする。
しないけど。
「汝様どうするのだ…? 母上様が面白機動で後退してったのだが。 」
「んんん、どうしようもないでござる。」
ンー、てか俺。 どうしてこのダンジョンこんなムキになって攻略したんだっ、け、思い出した。
なんか試練の度合いを高める為にダンジョンの階層をリニューアルする時間が欲しいとかどうので”転移の魔法”を飛ばしてきて、そこまではいい。 んでも普通、大気圏より外に転移させるか? しかも異世界の、俺じゃなきゃ即死トラップもいい所よ? 一言その件で文句言いたくて急いだんだ、それに折角俺用に新調してくれたみたいだし、の気分で来たんだったんだ、…楽しくて忘れてたわ。
「ふむ、冗談、It’sジャパニーズジョークヨ、ンハッハッ」
「虚言じゃ!! 顔笑っとらんもんッ!!! のじゃ!!! 」
自然に笑うとか以外で笑顔作んのが下手なのはデフォなんだよ、てか土下座のままよく俺の顔見えん? あ、なんか玉座の後ろから監視カメラみたいなのあるわ。
「まぁ、いいや。」
「まぁ、いいやではないのだが、一応母にあたる方が土下座のまま会話進行は何故か、こう、精神にくるものがある、ぞ……? 汝様…? 」
言葉にしずらいモヤモヤを押し込めた雰囲気を醸し出す亜樹の肩を優しくポンと叩く
「大丈夫、会話する気ないから」
「……? ……!?」
「そうか、それなら善かった。」
「 !? 」
良くないのじゃが!? とでも言いたげに顔を上げ驚愕の表情を貼り付ける幼女、
だが、しかたない。 ここまで来てなんだが話したい事が丸でない。 マジで。
「んじゃ失礼しまし「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ待っ、待つ、待つのじゃ。」 ? 」
「本気で帰る気じゃったじゃろ!?」
「ん、まぁ。」
「ん、まぁ!? ここまで来て!? 帰るの!? 正気かのッ!?」
「ぇぇ…… 正気も本気で帰るつもりですけでど…?? 」
「試練を乗り越えた褒美も受けずになのじゃ!?」
「あ、母上様…褒美とか出す気存在したのですね…… てっきり試練与えるだけ与えて賛美の言葉を贈って終い(に出来れば上等)だと思ってました。」
「娘が失礼の権化なのじゃが!? 」
「ああ、そうだな。」
「突破者もそう思うじゃよな!?」
「───俺も褒美なんて概念があるとは思ってもみなかった、「思ってもみなかった!?」──し。「し!?」──個人的に試練を乗り越えた後の褒美とか嫌な予感しかないから勘弁……いらない! 」
「オブラートで包もうとした瞬間に破り投げ捨てるのやめんかのじゃ!? 」
「いらない!!」
「予感は予感、もしかしたら違うのではないか、そう擁護したいのだが、ろくでもないのは否定が出来ぬな、仕方無し。
──大事な事なので」
「二度言いました、じゃな!? 喧しいのじゃ! 擁護するなら諦めぬのじゃ! 」
息ピッタリ、母娘だからかな…? 常世と智核もそんな所あるし、そんなもんか。
うんうん、仲良しな事は良きかな。
「なにいい雰囲気だな、一件落着とでも閉めたげな顔でシレッと転移の魔法で帰ろうとしてるのじゃ! 褒美を受け取るまで粘り強くストーカーするぞなのじゃ!! 」
「なんと傍迷惑な褒美の押し売り、しかも堂々のストーカー宣言かよ、」
てかやっぱり嫌な予感当たったな、なんかひねた当たり方したけども。
受け取るだけ受け取って帰るか……? 付き纏われるよりマシだろ、…多分。
なんか特別な武具とかかな、【スキル】とかか? んん〜デメリットとかありそう……、物語であるデメリット付きの能力は好きだけど自分が使うとなるといらねぇんだよなぁ…… ……。 一応もう少し好感度下げとくか、ゼロ当たりまで……




