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俺が理不尽です  作者: セロリM
足の引っ張り相い・試練を与える迷惑宮

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第八階層 憤焉幕終土 憤怒の顕神

 



 燃え盛る炎の音が静かにこの場を支配する。


 空間を圧迫するような黒が幕のように下がる、黒が晴れ景色が写すのは燃え盛る豪炎


 空を征する悪龍。


 天を突く黒い巨城。


 そして今も尚全てを塗り潰そうとせんばかりの黒い魔力



 超越の怪物同士の激突から分と満たない間に、激化の一途を辿っている




「魔力の押し合いじゃあ性質も込みで俺の勝ちか?」


 ━━━█▂▅▂█▂█(ゲラゲラゲラ)



 ありとあらゆるモノを喰らい自分の力とする魔力の性質を持つ理不尽が煽るように笑い言い放つが、

 ソレを”言ってろ”とばかりに悪龍は笑いとばす、しかし、理不尽なる怪物は目を細め、その口を弓のように歪める。


 理不尽なる怪物は見ていた、確かに七つある顔の一つが悔しそうに歪むその時を。


 そして悪龍の魔力や存在(Lv)が今の一瞬で跳ね上がるのを、


 正に【憤怒】らしい【スキル】だ、と理不尽なる怪物は笑みを深くし、笑う。




「────で、その抑え切った憤怒で俺とやる気か?」



 そして豹変した怪物の底冷えするような声と共に空を征していた悪龍は空ごと叩き落とされた。


 ──唯の魔力に



 翼を羽ばたかそうと、悪龍の落下は止まらない、旋風の一つも起こらない、暴風をも起こせた羽ばたき

 しかし光をも呑む重量よりも重い(・・)怪物(白夜)の魔力はその行動を制す、否。 それでも尚、翼を羽ばたかせられる力は流石は龍の神王。


 その理外の底知れぬ力は別格、と評すべきか。



 落ちてくる。魔力を神力を全開にし尚も緩まることを知らない重力に押され落ちてくる悪龍へ、笑みを一変、無表情となった怪物が身長の二倍はあろう長刀を軽く振るう。


 その一刀は悪龍の”世界全ての硬度を纏めても到底足元にも及べない程の硬度を誇る【龍鱗】”を含めた胴体を容易く両断した。



 夥しい血が撒き散らされる。 輝く龍鱗の破片は硝子のように。



 ────されど悪龍は笑みを浮かべる。



 見る物を狂わすような壮絶な笑みが七つ。


 その様子を眺め、怪物はちぇー、と残念そうに口を尖らせる。



「この程度の挑発はワザとらし過ぎたかぁ。」



 拗ねた子供のように、その手に持つ長刀を再度振る怪物。


 無造作に振るわれた長刀、されど振るうのは刃を持(・・・)たせれば修羅神(・・・・・・)仏全てを唯の人(・・・・・・・)の身で断つ(・・・・・)と謳われる怪物、


 その一刀は”未来を()”、理を曲げ、魔法で、【スキル】で身を守りながら、それでも。 と重圧の無くなった事で身軽となった身体を全力で動かし退いた悪龍の、”再生していた”胴体を再度絶った。


 ────有り余る斬圧は悪龍の背後に在った黒い城壁を削り取り、空を割った





 その斬撃を受けた悪龍はその余りにも過ぎた極みに目を細め嗤う。 あぁ何と至高の一振、なんと逸脱した一刀、世界全ての硬度を内包するに均しい吾が龍鱗をこうも容易く斬るか。 と。



 七つの顔を持つ悪神は嗤う。


 七つの頭を持つ悪龍は笑う。


 七つの首を持つ龍神は喉を鳴らす。



 ───不甲斐ない。


 不甲斐ない、不甲斐がない、不甲斐ないな。


 三度自らを罵り、《悪の王》と記される吾が身を呪う。


 燃ゆる、腸が煮えくり返る、魔炉が灼炎の如く燃え盛る。



 その身を焼くのは怒りだ、創成された訳すら果たせぬ自らに向けられる怒り。 産み出された理由に釣り会えない自らを憎む憎悪の怒り。


 グツグツと、まるで噴火寸前の火山のように、鳴りを潜め、その時を今か今かと待つ。




 怒りに染まる三つの頭を抑え、冷静に笑みを浮かべる四つの頭が次は此方の番と言わんばかりに攻勢に出る。


 ”二つの頭が”圧倒的な熱量を誇るこれまでの階層を引っ括め《最強》と名を付けてもいい程の《龍の息吹》を吹く


 今の亜樹ですら放てるか微妙な、


 ───触れる全てを焼却する灼焔の息。



 規模で言い直せば多重宇宙をも焼き払って余りある一息



 それを波の様に広げ、逃げ場を潰すように放つ、だがコレが直撃した所であの怪物(白夜)に火傷を負わせれるなどと甘い考えを持つ悪龍では無い。


 例え(ソラ)を焼き払えようとも、アレ(怪物)には無駄もいい所。 だからこの一息は猪口才(ちょこざい)な一撃、弱者が積む小細工。 最強種と謳われる龍が弄するにはあまりにも情けないモノ。


 ───そんな事、どうでもいい。



 焔を吐く二首とは別の二つの首が杭を打つように頭を振り下ろす。




 原初の法理を(もっ)て打ち下ろすは、景色を後退させる程の力場。 重力。


 意志返しを込められ放たれたソレ(重圧)は、超越存在同士が暴れる事を想定され創り出された頑強すぎる大地を、────圧し砕いた。


 ”宇宙破壊の質を持つ攻撃すら無傷で済ませる物質”が集まり砂、土、大地と成す物が量子レベルで壊される、加えられる重力に、重すぎる重力は大地を圧し砕くだけに留まらず、逃れ切れない力が大地を走り破壊を撒き散らす。



 されど、されども、その圧倒的な破壊の対象とされていた怪物(白夜)は笑みを崩さず


 その少し立ち辛くなった足場に何事も無かったかのように立つ。



「 けはははっ、ぁー 鬱陶しい。 」



 一笑い後に、まるで自分に掛かったシーツを払うかのように五指(ごし)を立てた手で重力を軽く引き裂いた。


 ブラックホールを産み落とし(なお)お釣りが来るレベルの重力は怪物にとって鬱陶しい以上の感想が出るものではなかった


 あまりの理不尽、その(さま)に流石の悪龍も全頭部の目元を引き攣らせる。



 引き攣らせ、だからこそ、思考を止めた刹那にも満たない時の中、怪物(白夜)の挙動を把握出来なかった、それは致命となり得る


【憤怒】の【スキル】により身体強度が跳ね上がっていた悪龍の胴体が撫で斬られた。


 腹下から肩まで斜めに斬られ、龍鱗、皮膚、筋繊と絶たれた箇所から赤黒い血飛沫をあげる



 ────何が、起きた?


 斬られた、斬られたのだ。 分かっていようとも超常の存在が普通を思考に入れ、理解を拒む。


 斬撃を放つまでは納得出来る、魔力や気、エネルギーなどのそれらは扱う者の思いや思考、そうゆう ポイ モノにより影響を受ける、


 剣身を通し放てば”斬”の影響を。


 槍で突きとして放てば”貫”の影響を。


 これだ、とゆう法則は曖昧だがモノ(魔力)がモノなだけにそうゆう魔法のような現象は起こりやすい。



 ”だが、だがだ”



 先程から思ってはいたが。 アレは、なんだ、アレはなんなんだ…?



 魔力などの超常を纏わせず、斬撃を飛ばす。


 唯の逸脱(いつだつ)した技術で斬撃を飛ばす、巫山戯てる


 至高と括るにはあまりにも───出鱈目(デタラメ)だ。







 吾はコレに試練を与えれるのか。





 微かな不安が悪龍の中に渦巻く。 渦巻く、渦巻き



 ━━━憤怒に沈む



 情けなさが、怒りに転じる。 不安を思う()が、憤怒に沈む。



 憤怒が本領を発揮する。



 盛り上がる肉が傷を塞ぐ、龍神王の魔炉が鼓動する、存在が爆発的に膨れ上がる、段位が意味をなさなくなる。


 ──憤怒の魔神が今、本当の意味で顕現する。



 あまりの熱量を孕む魔力が神力が陽炎のように空間を捻じ曲げる


 ────スゥゥゥ……











 ━━━▂▅(ォォ")████████(オオオオオオオ)███████(オオオオオオオ)█████(オオオオ)




 魔力や神力を混ぜない肺活声量任せな純粋(シンプル)な大咆哮、【スキル】【憤怒】の効果により元から不条理の化身かのような身体能力は、更に上の領域へ


 その領域の身体能力を持つ悪龍が荒らげる七つの頭から無造作に上げられた大咆哮は、空間を押し広げ、咆哮を中心に絵の具を雑に伸ばしたように景色を後退させた。










 ☆★☆





 おー、憤怒の【スキル】が見えたから意図して怒らせてみたけど、大分上がったなぁ…


 元の Lv.(レベル) が進化()のLv.リセット込で雑に30666(三十万と六百六十六)として、今がパッと1000000(百万)位かな。 うん中々正確(?)な気がする。


「まったく、インフレが激しいドラゴンさんだ。」


 身体能力に任せた大声量を受けながら軽口を叩く


 強靭な巨躯を眺めながら、おお、思わず声が漏れるのと同時に俺は悩む、

 御相手さんはこの闘いを続けようと変身してくれた、それこそ変身のワクワク度合いなら亜樹にも迫るほど、だけど──


「──普通に斬れるんだよな。」


 俺のあれこれ考えずに誇れるモノの1つ、それが”剣術”───ではなく、”斬術”


 こと斬り合うなどの行動は苦手だが、ただ斬る。 だけならば誰にも負けないと自負出来る


 伊達に兆や京と年月刀を振ってない。


「ま、いっか。」


 強化後の小手調べとばかりに放たれた”灼焔の火球”を軽く振るった黒刃で斬り散らしながら、背後のサタナス(悪龍)を上下で斬り飛ばす。


 おおー、


「やっぱり再生はぇー、しかも魔力とかでの再生じゃなくて筋肉で再生かよ、脳筋極まれりだなぁ。」


 斬れた傍から肉が離れる前に筋肉で傷を塞ぐ、んー、出来てもやろうとは思わん芸当だな。


 視線を横へ向ける、この刹那の間に、それも何の動作も無く現れた紅い龍腕に横から殴られる

 あれー、おかしいぞー。 この悪龍さん先程まで腕なんか無かったと思うけど。 え、なに。 筋肉で生えたの? 元のキ●グギドラ見たいなフォルムどこに置いてきたのぉ…?


 溶解した巨城の壁を突き破り吹き飛びながらそんな事をぼんやりと考える


 あ、殴られた拍子につい斬り落とした腕がもう再生しとる……。 筋肉はやっぱり万能の筋なのかな、おにいさん錯乱しちゃう。


 ……? 勝ち筋の筋だっけ。



 叩き潰すつもりなのか吹き飛んでる中の俺の真上に現れたサタナス、その腕は振り上げられている



 それを見ながら俺は思う、あ、魔法アタッカーやめたんだ、と。

 振り下ろされた龍神王の爪はまぁ、痛かった。


 受け流し切れなかった衝撃が体を走る、んー、痛い、HP少し削れたかも。 てか受け流した衝撃が背後の大地を破壊して砂に変えたのを感じた。 えげつねー。


「てか退けよ、何時まで人の胴体に爪立ててんだ、重ぇよ。」


 俺が体重を軽いと感じるのは親しい人の好感度次第だから、抑えられてない腕を振り龍腕を縦に割く。


「はぁー、っと。」


 サタナスの纏う超高度の灼焔の魔力のせいで熱せられた空気が肺に溜まり、その暑苦しい極まりないない空気を吐き出しながら胴体を起こしそのまま立ち上がる

 再度振り下ろされた龍腕を力の向きを逸らし(はた)き落とし、反撃に黒刃を無造作に振るいサタナスの胴体を袈裟斬りにする。


「ありゃ、嘘だろ。 今回は不死殺しの技法で斬ったのに、再生しとるがな。」


 え、やば思わず挑発じゃない言葉が漏れるんだが、え? え、魂を斬ったのに魂盛り上がって再生したんやが、魂筋って事……!?


 読み方たまきんになりそうだけど大丈夫そう…?


 あ、くだらない事本心から思ったのバレたっぽい、今度は渾身の一撃で拳振るわれた。

 てーか、この距離無視してるっぽい動きどうなってるんだろう魔法とか【スキル】とは違うぽいけど


 龍、神、悪魔、魔人。


 これらのどれかが使う御業だとは思うんだが、神が使う神法……? んや神法はどっちかというと規模重視、だもんな、

 龍…は、司るモノの自由度は高いけど、それ以外は人種が使う魔法よりも大分高い、ってレベルだからなぁ、ここまで動作もなくいきなり転移(とばす)レベルじゃないしな、魔法はそれなりに手段を踏むしな、やれる事は全能と見紛(みまが)う程だけど。


 神・龍は違うとすると、魔人か悪魔か、ふーむ


 魔人は魔法とか御業ってより種族特性が多く強力なのが主でそうゆうのとは違うし、

 口が多いとか腕が多い、獣の姿を取れるとか、なんか違う。


 なら悪魔か、悪魔はー、契約が多いって聞いたけど、んぁぁ、原初の魔、原初の法則ってやつか。


 魔法の原型にもなった、って話しだっけ。 んな事実ないねぇ、て明華に否定されたし魔法開発秘話も見せて貰ったから興味無くして忘れてたけど。 魔法開発秘話の方がおもしろかった(小並感)



 ……んー確か、こうか?


 空間を丸で区切り、その内部にブラックホールを発生させてみた。


「お、過程を省略出来るのいいな、便利。」


 ブラックホールを焼いて出て来たサタナスの靭尾の一振を斬り防ぎながら呟きお返しに適当に脳内に浮かんだ女神像を頭上から落とした。


 ちなみに自由の方の女神像


 材質はこの巨城の石、拘りの一品でございまーす、硬いですよー序盤の戯れあいで原型とどめてた材質ですから。 硬いですよぉコレはぁ、多分本(コア)の方が硬いけど。


 あ、龍鱗に触れる前に蒸発しちゃった。


「てか頭飛ばしたら再生、…するか。」


 するかなぁ、と疑問を声に出そうかと思ったが、魂も魂筋? で再生するヤツだもんなぁ……


 巨靭翼を羽ばたかせ超速で大気圏らしき場所を突破するサタナスを眺めながら次はなにをしてくるんだろうか、と思いながら幾つかの《魔法》を待機させておく


 ”斬った方が速いと愚行致します。” と黒刃から思考が伝わってくるけどぐうの音も出ないから無表情で真剣さを演出して誤魔化す。 使ってみたいななんて理由で待機させてる《魔法》に戦略もクソもない。


「んじゃ、偶にゃあ俺から撃つか。 いつも受け身ばかりだしな」


【スキル】【龍討魔法】のLv.(レベル)9で放てる魔法──


「 《憎悪の根を(セトヌハサ)討ち断つ殺槍(・ダゼノウス)》 」


 何となく聞き覚え? がある名前がピックされてる魔法を放つ


 憎悪と名を付けられてるだけはありその槍は禍々しく、一目見ただけでコレは龍を殺し得ると確信できるだけの”想い”が込められていた、……軽い気持ちで選んだのを少し後悔するくらいには。


 ……放った龍討の魔法で超速で飛んでる悪龍の翼へ穴を開けてみる、お、体勢崩れた、落ちるかな? …持ち直したな、てか再生しだしたな。


「ムキムキムキムキィじゃねぇんだよなぁ、アイツだけコレまで会ったモンスターの再生の仕方と違ぇんだよなぁ……!」


 オラの友達もそうだけど筋肉族って頭おかしいんかな。


 なーんであの筋肉龍距離取ったのかな、絶対殴りに来た方が速そうだけど、多分ブレス撃つ為だろうけど。


「とりま喉に孔開けとくか。 んぁ、避けられた」


 一応光速なんだけど、結構ひょいって避けるな。


「んじゃ 《ルー・セシウス(光を閉じる)》 」


 広範囲を覆える規模の結界、見渡す限りの空を覆い尽くし対象に向かい収縮する結界、結界魔法Lv.8で使える結界で空を飛ぶ悪龍を捕らえる、で破られる前に次の魔法を発動させる。


 堕鎖魔法Lv.5──


「──《空堕》 」


 無数の深緑色の手が悪龍を閉じ込めた結界へ貼り付け、空に有る悪龍入り結界を地上に引き摺り下ろす。


 結界が破られるのと同時に頭上へ落雷を落とす、

 ────先程放った龍討の魔法から龍特攻の性質を模造させてもらった落雷を。


 が、流石、悲鳴の一つも漏らさない、七つも頭あるのに。 でもかなり魔力を込めただけあって立ち上がればしないみたいだ、畳むか。


 大地に頭を垂れ、這い蹲る悪龍へ待機させていた(・・・・・・・)億を超える数の魔法の槍《憎悪の根を(セトヌハサ)討ち断つ殺槍(・ダゼノウス)》を雨のように降らせる


「さて、これはどうかな。」


 基本サイズは鉄槍(てっそう)の《憎悪の根を(セトヌハサ)討ち断つ殺槍(・ダゼノウス)》を針程のサイズへ圧縮する、そして圧縮したそれを上空から無造作に悪龍の頭上へ無数の針を降らせた。


 威力が全く落ちてないソレを。


 結果は──なんとも故ないモノだった、削れる悪龍の龍鱗しかし削れる肉体よりも悪龍の筋肉の増幅の方が早かった。 確かにダメージは与えたが、受ける。 受けきってみせると覚悟を決めた筋肉の宮を削りきる事は出来なかった。


 ………筋肉ってぇ…そうゆうものじゃないとおもうんですけどぉ……


 弱気の心を捨て置き、…す、捨て置けねぇ… 特攻の乗った魔法を雨あられと降らされて筋肉で耐え切るってなにぃ? 怖すぎなんですけど。


 ふんむ、巫山戯んのもこの辺にして、これを最後に真面目にやるか。


 俺の一挙一動を逃すまいと全神経を研ぎ澄ませる悪龍(サタナス)の懐に特殊な歩法で潜り込む、そして悪龍の巨躯に手を置き魔法を発動する


 発動する魔法は【崩壊魔法】のLv.9



「───《 内崩八孔(ないほうやこう) 》」



 ”内崩八孔”

 ある戦争で”最上位魔法使い”が発動し、内部崩壊により大地に大崩落と呼ばれる八つの国を覆う程の大孔を開けた大魔法。



 そんなモノ(魔法)を、生物の体で発動してしまえば、答えは簡単──



 全臓器から骨に尽くすまで、全てがボロボロと崩壊する。 グロテスクに、何処までも残酷に、無慈悲に、内から崩壊を及ぼす。



「んでも首まで届いてない辺りコレ(内崩八孔)じゃ決定打にならんか。 時間稼ぎには使えるだろうけど」


 筋肉再生と魔力による再生を重ね掛けてるにも関わらず今も再生に手一杯だしな。 筋肉再生ってなんだよ…



 仕方ない、”肉体”能力を強化するか。 ゴリゴリ近接戦でやろう。 魔法でちまちま削っても埒が明かなそうだしな、

 ……そろそろ近接戦したいな、って思いがない、訳では無い。



「───【龍神顕化】重ね色(追加)





 ────《 醜黒(しゅうこく)








 ☆★☆






 憎悪の雨に晒され、抜け切らぬ傷を植え付けられ悪龍は憤怒を滾らせる。 折れない、屈しないと反骨心にも似た精神に怒りを抱えながら悪龍はその巨躯をズリ起こす


 未だに呪いのように永遠と纏わり付く痛みを無視しながら、紅く染まった視界にこの理不尽を引き起こした張本人を入れる




 ────心を、軽く折られ掛けた。




 一瞬前まで確かに ”人” に留まっていた化物が、龍に、転じた、命の鼓動、身体、纏う概念、全てが人ではありえない。 人の範疇を、軽く──飛び越した。



 紅く、赤く、黄色く、青く、緑に、あらゆる色彩が混ざりドス黒く濁る



 黒い、黒い、ドス黒い。



 認識が出来ない、全てを見通すと謳われる龍の眼を持ってしても、グロテスクな黒に妨げられ──認識が出来ない。




 間違い無い、──超理の外に居座る存在だ。



 ”罪悪の席を用意された訳では無く”そうであれ。 そう原初の母により産み出された原典を持つ悪龍だからこそ、断言する。


 アレはダメだ、と。



 試練を課せない、力が不足している。 何処の誰が”その有り余る力だけで多重世界を含む者共が住まう世界を創造せし原初の母”と同じ規模の化け物に、試練を?


 戯れ言は死んでから吠えろ。



 折れ掛かる心を憤怒へ堕としながら心を何とか奮い立たせる。


 敵対者の意地を見せ付ける





 大敵を睨み付け、刹那で1つの首が”消し飛んだ”そして流れるように横凪にされた長刀により残り6つの首が斬り飛ばされた。


 魂そのものが肉体(ごと)両断される。


 再生が間に合わない、死に至る現象はなんとか焼き尽くしたがそのせいで再生に回す余裕がない。




 ───だから、落ちた六つの首を犠牲に周囲を焼き尽くす


 時間を一秒でも稼ぐ為に、少しでもこの化け物を自分の周囲から離す為に


 瞬間的に出せる火力ならば(ドラゴン)()息吹(ブレス)をも超える一撃を、超広範囲を焼き尽くす灼焔を


 ────炸裂させる。



 瓦礫と成った黒き巨城が熱に晒され無惨に溶け蒸発、この階層で最も強度がある巨城が蒸発すれば自ずと大地も同様の末路を辿る


 触れるモノ全てを焼却する紅閃は膨れ上がり、星の表面を紅く染め上げ、星の形状を崩す。






 だが本来の目的は果たせなかった。

 化け物(白夜)は一切の距離を置かず、その身に灼焔を受けながら悪龍を掴んでいた、首をなんとか再生させようと足掻く悪龍の胴体を。



「……? 」



 悪龍の龍鱗ごと胴体の肉へ指をめり込ませ掴む理不尽の権化のような化け物は微かに首を傾げる、その疑問は先程より遥かに再生能力の落ちた悪龍への疑問だ。


 鑑定や観る事を戦闘を楽しみ過ぎ、怠っていた白夜は”過ぎた死を乗っけ押し斬られ”再生に回す余力が一切残っていないことに気が付いていなかった


 だがそれ程の怠りですら全くの問題とならない程に、 ”悪たる龍神の王 サタナス”と ”理不尽の化け物 白夜”との間にはそれほどの力の差があった。



まぁ(・・)いいか(・・・)。」



 そんな一言ともに化け物(白夜)は掴んでいた悪龍の胴体を手放し、洗礼され尽くしていた先程まで太刀筋よりも明らか雑に長刀を振る


 ゾッ" と何かを削るような音ともに”悪龍の胴体”が”縦に”削れた、


 真っ二つに裂かれた胴体は力無く灼熱大地へと落ちる



 落ちるソレを愉しげに見下ろす白夜、起きるはずのない悪龍を見ながら、白夜は確かに悪龍の魂が小さな火のように消える間際を見る。

 猛々しく燃え盛っていた悪龍の魂が、見る影も無く消える刹那、


 世界が再度熱く成ったのを白夜は感じ、笑みを浮かべた






 ────【 再命の灯火 】




 日に三度、再命の奇跡を起こせる【スキル】


 しかしこの【スキル】の出鱈目具合は蘇生にあらず、この【スキル】の真価は───無に還った命をもまたこの世に戻す事にある。



 白夜の殺せないモノを強制的に殺し得る斬術により、増え強度が上がり続けていた魂を、斬り殺し尽くされた悪龍の魂が、【 再命の灯火 】により、全盛期(・・・)時の魂となり、復活した。


 それに伴い、肉体は破片から再生し、


 白夜の視界を覆う(・・・・)程の魂規模の内部で行われた超速再生により、悪龍の完全顕現を許した。




 ───これは奇襲だ、自らの全死(・・・・・)をも使った大奇襲、


【 再命の灯火 】の三度の復活を一回に集約し、自らの魂を大きく巨大にし、余りあるエネルギーを肉体の再生へ注ぎ込む


 そして、復活する


 ────あの化け物から遥かに離れた地点に。



 復活する為に使った肉片は、六つ首を犠牲に発動した”灼焔の大爆発”時に彼方へ吹き飛ばした肉片、距離にするなら大陸数百個分離れた場所、


 その場所にて悪龍は完全な顕現を遂げる。



 紅黒い龍鱗、強靭で強大な巨躯、七つの首、天覆う巨大な十二対八の巨龍翼、六つの龍腕(・・・・・・)、燃え盛る神力を身に纏う。



 ────放つは全てを捧げた一撃。



【 七紅光輪 】 悪龍 サタナスは背後に紅黒く輝く七つの光輪(マキナス)を発現



 ────憤怒の魔哮(第一極法)魔王の全壊(第二極法)龍神王の咆哮(第三極法)



 光輪(マキナス)の全能権限を【 憤怒 】へ



 ────最終試練全権限を行使 『 焉世 』



 前方の全てを焼き尽くす。






 ━━━━【《 憤神灼黒(サタナシス)()龍咆(ドラゴロア) 》】




 触れるモノ総じて焼却する黒い灼焔が放射状に進む


 星の表面を焼却し、化け物へと突き進む、概念的な熱を持つ神秘が




「──」



 それに相対するは理不尽なる者の名を欲しいが儘にする化け物こと白夜


 振るうは究極の斬閃。


 白夜が”最も”得意とし、意味不明だと誰もが口を揃え言う”居合い”


 明らかに居合いが出来ない、そう断言できる長刀から放たれる居合いは”抜けば(しま)い”を冠する




 最大の技にはそれ相応の技で応える、そんな軽い考えと共に繰り出され、ぶつかり合った二つの技は、


 ───”抜けば終い”



 その名のもとに、なんとも面白みも意外性もない幕斬(まくぎ)れを迎えた。





 悪龍 サタナスごと第八階層の上下両断とゆう結果で























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