閑話:元暗殺者? 達の現在 《3》
「それで? 白夜が俺達を呼ぶなんて、よっぽどの用事か?」
議員の人達を全員帰し、一息を着いた所でディランが話を振ってくれる。
正直どう切り出そうか迷っていたから丁度よかった。
俺は頷き、今回集まって貰った理由を話し始める。
「先ず、今回集まってもらったのはここに居る皆の殆どに関わりがある事が一つ。」
殆どなのはカロナにはあまり関係が無いから。
「どうでもいい話が一つ、あとは受けてもらいたい依頼の話が一つ。 その三点が今回、皆を呼んだ用事だ。」
三本の指を立て笑みを浮かべ、思う。
あー、なんか道化師みたいな身振りが板に付いてきてしまったな、と密かに内心苦笑いをする。
ディランが一つ頷き、小さく手を上げる。
「はい白夜せんせーい、」
「はいなんですかディランくん。」
「ハッ、くんって面じゃないネ。」
「くんって付くにャァ少し捻くれ過ぎだよなァ面がよォ。」
「──暴力は悪ですか。」
「哲学かな? ディランくん…その握り締めた拳を収めるんだ、見ろ女性陣の顔を、暴力は正義ですって獰猛な笑みを浮かべてるから、完全に返り討ちあうぞ。」
「拳を握り締めたァ隣人には鉛玉を。」
「粉骨粉砕、鉄拳一殺ヨ。」
「この世は理不尽だ…!!」
「そんな絶望に瀕した主人公みたいな台詞を……てか話が脱線し過ぎた。」
「レールをブン曲げたのは正義の使徒ですよ、俺は悪く無い。」
「まぁその曲げられたレールを走った俺達も悪いって事で話を戻そうか。」
渋々と”はーい”と言うディラン
「じゃ疑問をてか確認を一つ。」
先程の巫山戯た雰囲気を潜め、歴戦の戦士を彷彿とさせる目でコチラを見るディラン。
「──戦争、俺らが原因か?」
ほんと、頭の回転が早い人だよ。
誤魔化せない、だけど正直に言う必要もない、そう決め俺は片目を閉じ茶目っ気を演出しながら答える。
「違うよ。」
「嘘だな、いや嘘じゃないが誤魔化す気だな?」
「正解、何故なら原因は多数に渡るから、引き金を引かせたのは誰かなんて、話に終着は無いしそんな問答に意味などないだろう? だから俺は事実になる事を口にする──皆が原因じゃない。」
重い沈黙が場を支配する。
内心思い詰め、思考を回すディラン、話に付いてきてないが何となくで分かってしまうリェンファとカロナ、”こうゆうこと”を割り切れてると自分では思ってるエヴァが口を一文字にしながら黙り込む。
「今回の件は組合が圧を「──戦争は地獄だ。」……。」
一見、睨んでいる様にも見えるディランの目に含まれる感情は”達観と強い心配、そしてほんのひと握りの怒り”だ。
ディランの話を遮らず聞きに徹する。
「血は川のように流れ、腐臭は精神を蝕み、心は壊れていく、そこに救いなんてない、あるのは無数の死のみ、正義と名のついた殺し合いは泥沼のように後退させる足を鈍らせ、後戻りを出来なくさせる。
───お前なら、一人で片付けられるから、大丈夫? 分かってて言ってるだろ、白夜。
いくらお前が強くても、殺戮はお前を蝕むぞ、その時はもしかしたら無関心でいられるかもしれない、だがお前に子供ができ、育て、愛する者を抱く時、必ず悩み殺戮の限りを尽くした赤い手を見てお前は苦悩する。」
「……」
しない、なんて言わない、その時にならないと分からない事だから。
だけど言わんとする事は分かる、サラの髪を撫でる時、ミヨの頬を撫でる時、キサラと舞へ手を伸ばす度に、思ってしまう想像してしまう。
でも、───狂う事を善しとした俺には遅い言葉、だが有り難く受け取ろう。
「……くふっ、ふふっはははっ、──まったく心配性だなディランは、そんなんだから弟妹にウザ兄とか言われんだぞ。」
「茶化す、……? …!? 初耳だが!?」
流石に愛しの愛しの弟や妹にそう呼ばれてるのは茶化すなの一言では流せなかったらしい、ふふ。
「まっ、色々語ってくれたが、マジでそんな心配する話じゃないよ、有り難いこっただけどな。」
そもそも今更幾ら殺そうが、俺の歪みはどうしようも無い。
まだ言い足りなさそうなディランだったが、俺の瞳を見詰め、諦めたように息を吐くとヒラヒラと手を振った。
「あー、はいはい、……まったく依頼、受けるよどんな内容でもな。 それが俺が返せる数少ない恩返しぽそうだ。」
「え、マジで? ディランにはバニーガール姿で猫カフェの宣伝をギルド内でしてもらおうと思ったんだが、正直ゴネられると思ったわ、んじゃ頼むよ。」
「おっと、恩人今から恩人との交渉席、予約取れるかな?」
「現在交渉不可となっております、バニーガール姿で出直しや狩りなさいませ。」
「誰得だよォ!?」
顔の造形は整ってるから、意外と…と思うヤツは思うじゃないかな?
知らんけど。
「その無責任の塊みたいな笑みをやめろォ! お前の場合マジでやらせそうで怖いんだよ!」
「ははっ、そんな食欲も動かん事強制する気はないから大丈夫だよ。」
「でも面白そうと思ったら迷わず着せるだろ?」
「そりゃ、まぁ?」
「強制する気はないを即座に掌返したヨ、この人畜無害そうな顔した小悪魔。」
「てか依頼ってならよォ、俺達もそのバニーガールやんのかァ?」
エヴァの言葉を聞き、それなら見たいかも、と少し正直になったエロ欲を出してみるが、
そりゃこんどディラン合わせたおふざけで着させればいいかと思い、否定する。
「んや、ジョークジョーク冗談だよ。」
「ケハッハ! んだよ白夜が望むんなら着てやろうと思ったのによォ。」
「そりゃ残念な事をしたかな。」
そんな冗談をエヴァと交わす間にディランとリェンファがコソコソと話をしている。 なんの話だろうか…?
「(前者は完全にマジネ、後者はからかわれてると思てるけどナ。)」
「(ーん、普通にバニーガールじゃなくてキラーラビットになりそうだから遠慮したとかじゃないのか?)」
「(ポテトがホクホクでモチモチ、美味しい。)」
聞くのは無粋か、まぁ聞かなくてもカロナは絶対違う事を言ったんだろうなってのは分かるけど。
「ま、その話は置いといて、この話の流れだから簡単に依頼の内容を言うよ。」
即座に切り替えコチラの話に耳を傾けてくれる皆に俺は言う。
「──皆に、俺個人から依頼を出す、内容は
『12月に起こる2度目の暴走期への特別対応』それの核となる部分を任せたい。」




