閑話:元暗殺者? 達の現在 《2》
しがない、一議員な私は、
あの最悪の一日、大厄災以降、上辺だけでは無く皆、誇張なしに”議員の皆”が一丸となり国を良くする為だけの装置として活躍出来る今を噛み締め、議論を積み重ねる、
いささか昔と比べると分かり易くなり過ぎた弁論の会場だが、それでも家族や知人が住むこの国を良くできるなら、この分かり易さも良いのだろう。
───例え、話す者の殆どが傀儡だろうとも。
愚者以下の喋る屑共より、いや比べるのが失礼と感じる程、遥かに良いと言うべきだろう。
『我ら連盟との条約──』
『恥知らずではないか、私はそう──』
『それについては──』
だから、これらの足の引っ張り合いを上手く躱すのも”全て用意してもらった一大人”としての責務位、なんて事もない。
なにより、”最悪どうとにもなる”そう心強い後ろ盾がある今、楽な部類ではあるのだろうがね。
それより、各国の追求、無理な相談、理不尽とも言える後出し条約、言ったもの勝ちの弁論、それらより、斜め辺りから感じる冷たい空気の方が私は恐い、実質総理大臣……! 何故彼女をこの会場に呼んだかを問い詰めたい! 小一時間程!
各国の身の程知らず共が貴方を貶すような発言をする度に真夏なのに真冬の外のような温度になるのだが……!? 室内に設備された”魔力検知機”が反応しないのもより恐怖を煽るのだが…!
せめて戻って来てはくれぬか…! と言うよりもあそこで悠々と食事に励む方々は誰かな…!? 唯ならぬ雰囲気なのは分かるが…! と言うよりどうせ知人ですよね…!? お腹の虫と肌の冷たさにより体が不調を起こしそうなので直ちに回収をして下さると嬉しいのですが……!
荒れる内心をポーカーフェイスで押さえ付け、弁論を続ける。
「ええ、ええですから───」
微笑みを貼り付け、暴言とも取れる戯言を流す。
すると隣に座る”昔は気に食わない所か嫌いな奴その一”が私に向け手のひらを机の下で向けてくる、淡い緑が私のお腹を癒す………。
───回復して下さいって意味じゃないんですよぉ………!!
政治家達の会議が終わり、帰った数十人の政治家達を除き残ったもの達が顔を合わせながら会話を交わす。
そこには組合の総長としての”立場の顔”の白夜も居た。
「て事で、インフラ整備や建築も組合が担当させて貰うぜ、って話でした。
態々悪いなこんな事で時間を取らせて。」
そう淡々と費用、時間、必要な物のetcを纏めた資料を見せ、特に効率が悪い不足が無いかを擦り合わせた白夜は会話を終わらせようとする。
資料を魔法で片付け整理し、白夜はああ、そうだ。 と残りの会話を立ち上がり”お疲れ様です”と返そうとしていた者達へ伝える。
「───どうやら日本と戦争をしようとする国があるみたいだから、その報告だけな、通信や書き物だとここ程対策されてないから世に流れるかもだから、ここでしたぞ。 そんでその対処には俺がする。」
戦争をしようとする国があるみたいだから、その言葉が出た瞬間に覚悟を決めた顔のした大人達、しかしその覚悟は次に笑みと共に出た白夜の発言に呆気に取られる。
なぜ組合、それも政治に直接は干渉する事の少ない白夜がこの”大厄災”の際に破壊尽くされ新たに作られた”第二国会議事堂”に組合の総長として来たのか。
その理由に納得し、気軽に告げられた発言に脳が止まった。
(対処する、……戦争、つまりあの魔窟となった海を、支配された空を渡る術がある国は限られてる、だが犠牲を覚悟すれば渡ることが不可能な訳では無い、しかし戦争を出来る、いや”スキル”と呼ばれる超常の力か! それを組み合わせれば、戦争が可能な戦力を持続したままに出来る、それを可能とした国があるのか。)
だがさすがは”選ばれ残された”良心と愛国心や知略の高い者達、すぐに思考を柔軟にし、与えられた情報を自分なりに整理し幾つかの仮説や今後の情勢を考える。
もちろん考え付き、整理した心でも納得出来ないものもある、特にいくら化け物じみてるとは言えども子供たる白夜に全てを片付けてもらう、それも大人たる自分達が頼られない事など様々だ、だがそれを押し殺し、自分を納得させ、”足を引っ張るくらいならば良案を出す1つでも多く”と心に決める。
カッコ悪くてもソレが最善だろうかと悩みながらも決めた。
「部隊を動かしますか、訓練の完了部隊を考えると無理せず11部隊、無理すれば25部隊まで可能です。」
「んや、まだまだ地力を鍛えてもらって11月も近いしね、訓練は変わらず持続、あ、だけど第二まで完了してる部隊には秘密部隊として警戒を頼むよ。」
「分かりました、5部隊を動かし警戒を強化します、ココとココ、そして後は広く、別の部も動かしますか……。」
「頼むよ。」
「はっ…。」
「その国の産まれの人達は拘束は必要ですか。」
「あぁ、そっちは大丈夫、対処済み。」
スパイや横流しを警戒した一人が、強行だがやらないよりはの案を出すが、白夜はそれに対し視線をディラン達へ向けると案を出した一人が納得の表情を浮かべ頷き納得すると下がる。
「そこまで切羽詰まった話しじゃないからまた別の機会で話そうか、今回は報告だけだから、な。
……それに戦争と呼べる状況にするつもりは無いし。」
そう小声で呟く白夜の笑みを見て、底冷えする感覚を覚えた者達は深聞きをやめておくことにした。
それらの行動を見ていたディランは呟く。
「なんか羨ましいくらい上がしっかりしてるんだが、俺の国ならこんな状況なら、利益の話と足の引っ張りあいだぞ。」
「傀儡の数からしテ、厳選されタ、が正しいと私は思うヨ。」
「ハッーハァ! モンポケかよっ、そういやぁ新作出たんだっけ? 弟に買ってくかァ。」
「ゲームはいい文化だとカロナは呟きます。」
”傀儡”
白夜が不要と断じた人材を殺し、世間の混乱を抑える為に立場だけを利用する為に操る人形。
それらは生きた者と解剖しようとも見分ける事が不可能、限られた強者の磨かれた勘でなんとか分かる程度、傀儡にされた者の家族からは”綺麗になった夫、お父さん”など言われている。
女議員なども傀儡にしている為、操ってる白夜本人はお母さん役をするのは苦手と語っている。




