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俺が理不尽です  作者: セロリM
足の引っ張り相い・試練を与える迷惑宮

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第五階層”腐死籠堕園” 【 5 】

 




 ヨシヨシと撫で、愛で、感想を言いながら歩く事、5分ちょい、漸く第六層へ続く門が見えてきた。


 心做しか豪華になった巨大な門を見ながら、やっぱり門は凝ってるんだ…、 と思いながら、足を進める、


 ──どうせこのまま普通に通れるなんて事は無いんだろうな……


 なんて妙な信頼感と共に。


「嫌な信頼感だな。」


「もう五層分の信頼だからな……

 あ、ほら。」


 俺と亜樹の視線の先に有った”巨大な門”が、


 景色を割くように出て来た巨大な”龍の五爪”が巨大な門を鷲掴む、そして───何処かへ、引き込んだ


「ありゃりゃ、手癖の悪いヤツだなぁ。」


「もしもや、万引きなどと同じ扱いしてないか?」


「きゃー、ひったくりよー!」


「ふ、そっちで、あったか…。」


 亜樹が肩をすぼめ、腰に差した柄に手を置く、何時でも抜剣出来るようにだろう。

 俺もアクセサリーへと変化させてた黒刃を何に変化させるか、と頭にリストを用意しておく。


 出来れば考えてたお通りに機腕を使いたいが、斬る突くならまだしも、ゾンビ系の肌は掴む殴るなどはしたくは無いんだよなぁ……と微妙な拘りで、俺は俺自身で俺の浪漫を遮ってしまう。


 いや、あとで消毒(浄化)すればいい話しなんだけどな。


 そんな下らない葛藤をしていると、先程まで赤く大地を照らしていた三日月がフッ、と──消えた


「汝様。」


「ありがと、大丈夫、わかってるよ。」


 俺を掴もうと、景色を割いて出た龍の巨腕を、斬り捨てる。


 両断した龍の手の平が二分割された状態で動き大地へ爪を突き立てた。


 そして咄嗟にナイフへ変化してもらった黒刃を、機腕へ変化させる、今度はばっちぃ相手じゃなそうで良かった、と思いながら。


「さて、殴るか」


 ガチンッと良い音を奏でる機腕を構える。

 俺のロケットドリルパンチが火を噴くぜ。


「なんとも、……それは向こう(異世界)の科学と魔力の発展した国にあったものを再現した物か、

 ……投げた方が速くないか…?」


 一見で機能を見抜いた亜樹が呆れを纏わせ無表情で言う、

 まったく、……その通りだけども!


「あ、ほら来たぞ!」


 ナイスタイミング! 苦しませず殺してあげるな!


「話題の転換下手か?」


 あーあー、聞こえなーい!


 と、その瞬間、眼前に龍の手の平が現れた、「汝様…!」


 思わず、と抜剣し龍の手の平を切断しようと神速さながらの速度を持って剣を振るうが、こりゃ相手の方が速いな、多分時間でも(もてあそ)んでるんだろ。


 しかし、凄いな、冷静さを欠ける隙間(・・・・・・・・・)を狙ったとしても、刹那といえあの”亜樹の眼を騙す”なんて。


 迫る手の平に目を向けず、遥か彼方から此方を嗤い見る”赤紫色の鱗の龍”を見返し


 俺は”赤紫色の鱗の龍”を見ながら頭上から迫ってた龍の手の平を殴り、──砕く。


 その衝撃で周囲の大地が陥没し、軽い腐骨などは宙を舞った


 それを見ていた”赤紫色の鱗の龍”の見覚え(・・・)のある赤い三日月のような歪な笑みが引き攣る。


「二度目だな、その笑みが引き攣るのは。」


 口には出さないけど……、その場所、気お付けた方がいいかもね、今、とんでもない怒気と殺意を纏った亜樹が其方に向かって跳躍したけど、あ、空中踏んで更に加速した、──ありゃダメだもう間に合わん。


 もう亜樹の──斬殺圏内、


 しかも”龍眼”を一瞬の怒りによって進化させた亜樹の眼はもう騙せないだろう。



 俺の視線と亜樹が俺の隣に居ない、その状況から今の状況を理解したのか、”赤紫色の鱗の龍”の身体が膨張しだす、その膨張率は”刹那以下の時”で山を越し、更にその膨張は加速……



 ────が、残念無念また来世、

 名前も知らない龍の頭部が”不死殺しの戦技”と共に放ったれた斬撃にて飛ばされた。



 ホントに残念、と肩を落とす、せめて再生の見込みがあればなぁ……


「ロケットパンチ……」


 俺の小さな呟きは空間を割いて落ちてきた巨大な門の着地音に掻き消された。















 気持ちを入れ替え巨大な門を潜った俺は、改めて先程の亜樹の斬撃を思い出す


 怒りと殺意が篭っていたからか、無駄に力は込められていたが、それでもその力を拡散させず、一閃に全て乗せた技量は感服ものだった。


 特に膨張、再生を繰り返すあの龍の首を抵抗もさせず落としたのだから、流石、技も力も兼ね備えた一振だと思う。


 しかし……


「次は油断せぬ、次は油断せぬ、次は油断せぬ、次は油断せぬ、次は油断せぬ、次は油断せぬ……」


 その一振を放った本人が次は油断せぬ、ボットになってしまっては、褒めづらい……


 取り敢えず撫でてはいるし、胸元から離れないから、自省の念で済むならいいのだけど。


 それにしてもあの龍、騙すの上手かったなー、と考え、歩いた。



















 そこは地水火風が入り交じる、天災などとは生温い、圧倒的な破壊の顕現



 大地は波打つように隆起し、剣山を生やし、天へ昇る大陸はさながら昇星



 大海は渦を巻き、姿を形作り、水位を無限のように増やし続ける、陸を大海へ沈めんとする水の概念



 竜巻はありとあらゆる物を巻き込み、刻み、進む、その進路後は塵も残らず、ただ滅びの進行を進めるのみ



 獄炎は覆う、地獄から抜け出た獄炎は地底で飽き足らず、天を覆う、破壊し焼き尽くし、総てを灰へ帰さんが為に



 四つの最悪が、試練を課す、形を持たない最悪が。




【第六階層───四神戦暴域(シジン・センボウイキ)










”赤紫色の鱗の龍”


──”紅月の邪龍ロロキ・グリュタフ”


 八つの腕と、四つの黄金の瞳、そして三日月のように歪に浮かべるイヤらしい笑みが特徴的。


 その者は、かつて悪神と祀られ零落した存在、

零落した悪神は邪龍の王として君臨し、その八つの腕を駆使し、全ての生命を冒涜する為に振るった。


 空間を超え、景色を割るように顕現する一腕は時に一国の王を連れ去り、無惨な姿に変え、飽きたとばかりに玉座へ投げ捨てた。


 ある時は歴代の英雄を、またある時はなんの取り柄もない村人を、女を子供を、連れ去り、弄り殺した。

そんな時、決まって月は悪辣な笑みを浮かべ浮かんでいた。


 かの邪龍は”九大邪龍”と名を連ね、最期には

”黄金の夜明け”と評された”大英雄”達に、討たれた。


 その邪龍の名の由来は、かの”悪神の王ロォ・シキ”が、ある土地今やぺんぺん草も生えない、”悪神の遊び場”と伝承に語られる村の訛り、”悪神の王(ロロ・ォキ)”から付けられたもの、”グリュタフは残酷なる者”からだろうとされている。



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