魂源の暴露
轟、と空間を揺らす轟音と共に黒い光が周囲を染め上げ、黒い閃砲が放たれる
聖なる龍、天蓋を廻る光の輪、まるで天国や神聖を凝縮した世界は、黒い閃砲が放たれる度に、光は黒へ呑まれ、虚無へと誘われ、光溢れる世界は虚無へ堕ちる
───ォォン
しかし、ソレを阻止するかのように、ソレは現れた
天蓋を紙屑のように引き裂き、吐き気を憶える程の聖なる魔を身に纏い、”純白の龍王”は現れた。
”西洋の竜”の形、天使の羽を思わす純白な鋭利な翼
長く強靭な純白の爪、
凡そ理性と言えるモノを感じさせない龍の瞳はまるで機械のように無機質で十字架のように瞳孔が割れ
純白の角は枝のように疎らに分かれている
巨きな胴体、その胴体ですら不釣り合いとすら思う巨大な剛腕
背後に廻る二重の光輪。
その”純白の龍王”は他の聖なる龍すら本物では無いと錯覚させるような聖威を纏い、舞い降りる。
混沌と対を成すように、純白の龍王は、人型の混沌龍の前へ
─────降臨した
───オ”ォォォォオオオオオオオオ!!!!
純白の龍王が放つ咆哮は、声に色が宿り、景色が眩い純白と共に揺れる
「龍王ごときが、汝様と対を演出するだと……?
────役不足に程があろうが。」
気に入らなかった、ソレを、龍の王ごときが、演出、道化にも劣る演出であろうとも、龍の神たる亜樹には───気に入らなかった。
加減なしの亜樹の圧が”純白の龍王”の周囲の次元ごと純白の龍王を黄金の大地へ叩き付けた。
その光景は、引き金を引くは、”このボスっぽい? 龍の演出見てからでいいか〜変身と登場シーンは待つのがお約束だしねー、いや最近は破るのがテンプレだけど”と呑気に周りの龍からシューティングゲームの気分で掃除しながら見ていた白夜に思わず”可哀想”とゆう感情を抱かせるには十分なモノだった。
──しかし、それはそれとして、大地に叩き付けられた純白の龍王へ引き金を引いた。
純白の龍王が体制を立て直す暇も与えられずに放たれた黒い閃砲は、一砲で純白の龍王の翼を喰らい、二砲目でもう片方の翼を喰らった
両翼を失った純白の龍王は、本能で感じ取る、ここで再生と”神聖魔法”で自らの両翼を治しては、三撃目で何も出来ずに終わる、と
──なればこそ、純白の龍王は再生に回っていた魔力を遮断し、息を溜め込む。
「へぇ、なるほど、撃ち合いをお望みって事か。」
純白の龍王の行動の意味を理解し、白夜は引き金に掛かった指の力を緩める
なら俺もそれなりに手向けにでもなる技で応戦しようか
「汝様は律儀だな、その一撃でもアレには十分な手向けとなろうに、んや己もその律儀さのおかげで存在できているのだが……」
なんだか不満がありそうだな亜樹、よしよし、そう膨れるなって。
「己はまだ姫の種族名が取れんと言うのに、ヤツは色ごときで汝様の対と評されようなどと……」
色で言ったら俺のイメージカラー白じゃない? え、違う? 身から溢れる腹黒さ出てるってコト!?
……なんてね、霊魂の色の事だろう。
事実俺から見える純白の龍王の魂核は眩い純白、俺の薄暗い黒と比べればさぞ対に見えるだろうな、それが格好だけとは言え亜樹からしたらたいそう気に入らない、って事か。 いや”それも”、か。
まぁ、正直それを純白の龍王に言っても仕方ない気がする、が
それは俺が純白の龍王を視界にすら入れてないから言えることか。
──亜樹が不安を抱いてるなら取り除きたい、身体を一度重ねただけの中だとしても。
最適を探す、何を望んでるか、どんな想いを抱いてるか、奥底で何を切望しているのか。
「あー、ダンジョン内だけど、まいいか。」
油断するな、何があっても、命を第一に、ギルドで数々の教え説いてる口で、ぶつぶつと文句を綴る亜樹の口を塞ぐ。
「むぐっ!?」
──仕方なし、亜樹が望み、俺が善しとした。
目を見開く亜樹の内から溢れる安堵を安心を愛色を確認し、俺はそれが嬉しいと想い微笑む。
続きは夜な、と目で語り
なんか使い過ぎたのかテンションハイになってる黒刃へ魔力を装填、
「気分がいい、初のお披露目だ。」
魔力を爆発的に篭める、叩き込み、黒刃と唄う
───討ち滅ぼせ、”重冠の銃王”
これは魔法の武具に使われたモンスターが有していた本来の性能を引き出す、魔剣解放、魔装解放などの武器性能の向上では──無い。
意思のある武器、黒刃と、俺の本性を重ね合わせ、全く別の進化を器に強制する技法
──”魂源の暴露”
名前はまだ決めてない”魔法”を使った、道理なんて無視した全ての底上げ。
使用者の本質と意思が混ぜ合わさった或る意味の本質の暴露、結局意思や本質が脆弱なら意味はない技法、
その分、俺みたいな狂ったゴミみたいな精神をもっていれば、殺戮圧殺圧倒破壊崩壊に特化したモノとなる。
「じゃあやろうか龍王。」
宙に浮かぶ四本の砲身と片手に持つ、と言うより片手にくっ付く巨砲を、大地から俺らへ浄白の魔力を口から溢れさせ狙いを定める龍王へ向ける
四砲身へ魔力が集まり、白夜の持つ巨大な砲身を中心として四本の砲身が魔力を互いに回し、黒い魔力の残光が円を描き、円は巨大な砲身へ凝縮するように集まる、
──しかしそれを待つ気など無いと純白の龍王は溜め込んでいた”浄白の魔力”を咆哮と共に解き放った
───《白浄へ帰せる龍王の嘆きの咆砲》
「ばぁん、てね。」
世界を白紙へ回帰させる龍王の白光は天上へ留まっていた白夜達へ迫り、
──軽い声と共に放たれた黒い奔流に光は喰われた。
天上も天蓋も関係なく総てを呑み込む黒の崩柱に、喰い尽くされた。
「───もう一発、念の為ブチ込むか。」
「やめてやれ汝様、ヤツのHPはゼロだ。」




