黒い閃砲
へぇ、黄金の草に土、全てが黄金に輝く地平線、言ってみてしまえば黄金の大地かな、 綺麗だなぁ。
そんな呑気な感想を抱きながら1歩を踏み出そうとする白夜へ、天上から無数の光が降り注ぐ、攻撃性を持った死の浄化が
「うへぇ、んだよ探索ぐらい自由にさせろよ、見敵必殺って機械かよ。」
「普通のモンスターなどそんなものだ、特に母様の創り出す生命は”試練を与える”なんて性質が与えられてるせいか攻撃的なヤツが多い、探索したいなら」
───この階層すべての龍を鏖殺する事だ汝様。
そう亜樹は白夜へ告げると”次元に潜ませている”根を天上を飛ぶ龍の傍に出現させ、根を龍の顎の形へと変化させると、貪るように聖なる龍を喰らう。
「腹の足しにもならん。」
そうボヤき、亜樹は食材を見るような目で天上を舞う聖なる龍を見上げる。
う〜ん、正論。
仕方なし、殺ろうか。
降り注いだ”聖なる光”を無傷で受け切った白夜は、片手で亜樹を抱えたまま、もう片方の手に持つ黒刃を聖なる龍へと向ける。
白夜が黒刃へ命を下す。
「”黒刃”──”砲銃”」
主の命により黒い巨剣は、泥の様に形を崩し、二股に別れた大槍のような砲身を持つ銃へと変化した
その砲銃、”ルヴシナス”
異世界で、”穿つ双角”を意味する名を冠す物へ
魔力を装填する。
「さ、1万の魔力が籠った一撃だ龍の鱗を穿つ事は出来るかな」
試しだ、最初は軽く、な。
白夜は的を絞る必要の無い程、聖なる龍で埋め尽くされている天上へ、砲身を向け、引き金を引いた
────一条の黒い閃光
抵抗は無く、目に見える天を覆い隠す程の龍が、魔力を触れただけで破壊する鱗を持つ龍が──
────天蓋の景色ごと、消し広げられた。
黄金の大地を、反動だけで陥没させる程の”魔砲”をブッパした白夜はふむ、と
「予想外。」
そう言葉をこぼした。
それを腕の中で聞いていた亜樹はクスクスと笑う
「汝様の想定は進化前の己より少し下を想定してたようだが、ステータスを見てみよ、アレらは確かに魔力量だけならいっちょ前だが、魔力操作もスキルレベルもまるでなっていない
──なにより、一応己は”倒される前提”の存在では無かったのだぞ? あんな若龍共と、己を、進化前の自我も薄いとは言えども一緒くたにされては困るぞ汝様。」
そりゃそうだ
「失礼、お姫様。」
ん、どうした膨れて…?
「二度の失礼だ汝様、己は昨晩汝様によって立派なメスにされた、それを姫扱いとは」
えー、姫にどんな偏見もってんだよ、幾らS●Xしようとも姫は姫だろ、いや言わんが、なんとなく言いたい事も分かるし…。
ここは普通に謝るか。
「はい、ごめん、…愛しの妃様」
なし崩しの関係だけど、そんな言い訳は無しだな。
「うむ。」
なにより、この亜樹をヤ●捨てする気なんてサラサラ無いしな。
甘い空気を漂わせる2人に、天蓋に押し広げられた穴の周辺にまたもや集まって来た聖なる龍達が、
《龍の息吹》を一斉に放つ、空気を焼き浄化しながら天から降り注ぐ破滅の息
────ハァ……無粋な連中だ。
まぁ、無粋も何もこんな所に来てイチャついた空気だした俺が悪いんだけど。
「あぁ、だけど俺が何処で何しようが俺の勝手だよな、なら野暮、無粋でいいか。黒刃──"曲刃乱刀"」
白夜の片手の黒刃、砲銃形態がまたもや形を変え、その形は極限まで腕にそうように曲がった黒い12枚の刃へと姿を変えた。
「《覆い喰らう群影の大海》+《無常乱刃》
───【《影喰乱食》】」
とてもやる気のない声と共に放たれた12の黒い斬撃はヌルリと天上を覆う程、大きく巨きくなり、天蓋へ群がっていた聖なる龍を容易く喰らい荒らした
その様子を実験の結果をみるような目で眺めていた白夜は、あぁこの程度でも死ぬのか、と淡々と魔力の調整を測る。
「魔力は有り余ってるけど、"奥のアレ"が変な切り札持ってるかもだしな、最低限で殺せるなら最低限で効率良く、だな〜。」
「警戒心が高過ぎる、否、悪い事ではないのであろうが、な。 些か過剰じゃないか?」
そうかな? そうかも。
備えあれば憂いなし、とは言うが、よく考えたらこれまで備えて来た尽くが全部無駄になった憶えもあるんだよなぁ……、もう少し大胆になるべきかな。
ステータスの縛りも1回死ねばその場で解けるようになってるし。
うん、もう少し楽しむか。
そうと決まれば、
「少し掴まれるか?」
「うむ、その顔が見たかった、汝様の思慮深い表情も好きだが、何も考えず戦闘へ身を落とすその表情のが己の好みだな。 それとその返答には是と答えるぞ、この階層程度なら己の体力にも余裕がある。」
「そっか、うんじゃあ少し激しく行くぞ。」
小っ恥ずかしい事を言ってくれる亜樹の頭を少し深めに胸に抱え、黄金の大地を蹴る、
1歩で空中へ、2歩で天上
「──黒刃───、"多銃"」
珍しく黒刃の機能を多数使用するからか、手に握るファンタジー風のマシンガンへ変化した黒刃から"何時も以上のやる気"を感じる。
ありゃ、こりゃ過剰攻撃になるか? と頭の片隅に過ぎるが、"ま、いいや"と引き金に指を掛け、魔力を篭める、
一々何万篭めた等と考えず、どんどん篭め、
──3歩目を宙を蹴り踏み出す、俺達を見失った龍達へ、銃口を向け、俺は引き金を引いた
黒い閃砲《覆い喰らう群影の大海》の乗った砲撃が射線上のモノ全てを呑み喰らう、俺はその砲撃をマシンガンのように連砲する銃口を横凪に払い、無数の命を喰らう
魔力すら喰らう対象でしかない黒い閃砲は"聖なる龍"の護りなどものともせず喰い破り、背後へと抜ける
比較的存在の高い聖なる龍の"《龍の息吹》"も黒い閃砲とは拮抗すること無く、黒い閃砲によって喰い破られる
《護鱗》も《矛砕激鱗》も、守へ特化された"龍の武技"は紙のように喰い貫かれ
《災呀》《龍の絶哮》《翼墜》などの攻撃へ特化された武技すら無意味とばかりに圧倒的な魔力で押し流され喰われる
───あまりにもの理不尽。
されど、やはり聖なる龍はその光景に恐怖などの感情すらなく、ただ試練を与える、そう刻み付いた本能に従い、その命を散らしに赴く




