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俺が理不尽です  作者: セロリM
足の引っ張り相い・試練を与える迷惑宮

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蛮行なる帝国”セスティフ”

 



 白い髭を長く、威厳の象徴のように伸ばした老人が玉座に座し、苛立ちを隠そうともせず奥歯を噛み締める、──ギリッ…ィ。 と、心底この世を憎んだような薄汚れ濁った瞳を吊り上げながら。


 そんな老人から、(こうべ)を垂れる者達へ、言葉を叩き付けるような怒鳴り声が発せられる。



「───なァ…?·····オレの聞き間違えか···ァ"!? オレは言ったよな? 命令したよな? な? あの”混ざり共”を鏖にしろ、ってよォ!!! ソレが謎の援軍により何の成果も得られず敗走して来た、だと?」



 大きな肩幅を小さくし、黄金の鎧を身に纏う大男が膝を着き、更に頭を低くし、謝罪の言葉を口にする



「申し訳ありません…ッ」


「··········ッッッグ、…ッソガァ!!!!!!」



 黄金の鎧の騎士の謝罪の言葉に対し、老人は近くにあった小型の丸いテーブルを蹴り砕く。



「…言い訳の一つでもすれば首を跳ねれたものを……ッ、チッ…!!」



 テーブルを蹴り砕いた老人が怨さが籠ったような呟きを一つ残し、頭を片手で抑え、思考を冷静にさせる。



「……帝国の剣である、貴様の失態は貴様の部下の命で禊ぐ。」



 ゾッと冷えるような声で告げられた老人の言葉に、黄金の鎧の騎士は思わず立ち上がり──


 ───しかし、この世の憎悪を一身に宿したような老人の瞳の前に黄金の鎧の騎士は、蛇に睨まれた蛙のようにその身を縮ませる。



「───それとも、貴様の家族の命で、貴様の失態を禊ぐか? なァ?」



 憎悪、嫌悪、悪意、その全てがごった煮されたような言葉に対し、黄金の鎧の騎士はそれでも、と立ち上がり老人──


 ──”セスティフ帝国”百二代”皇帝”《黒血帝》グラセフ・セスティフ・ミーツの瞳を仰ぎ見、それならば自分の命を、と答えようとした黄金の騎士の心を、容易く──圧し折った。



「こ、皇帝陛下の望むがままに。」


「元より其のつもりだ、オイ、誰でもい、いや、違うな。」



 ”外にいる役立たずの無駄飯食らいのクビを落として来い”そう告ようとした皇帝グラセフの皺が目立つ顔が悪辣に愉悦に歪み、嗤う。



「《黄金の剣》皇帝騎士、第一団長、命じてやる、”貴様の剣で外にいる役立たずの無駄飯食らいのクビを落とし城下町へ晒して来い”わかったな? わかってるよなァ?


 ───二度目の失敗は貴様のガキ共の臓物が豚のエサに成る、って事を、さすがにその愚物の脳ミソでも理解、してるよなァ。 二命目は言わせるなよ、さっさとオレの眼前から消え失せろ。」



 不愉快、そう顔に出る感情の一切を抑えようともせず、皇帝グラセフは黄金の騎士へ言葉を叩き付け、玉座へ座する、それと同時に拳から血を滲ませながら黄金の騎士は消えそうな声で、「はっ…」と小さく了承の言葉を何とか捻り出し、その大きな肩幅が小さい、そう感じられるような覇気のまま、”皇帝の間”を出る。


 その姿をまるで見世物を見て不機嫌なのか、それとも愉悦を感じてるのか分からないような表情で皇帝は冷笑れいしょうを浮かべる。



 それを観ていた配下達は言葉を挟まず、あの狂った皇帝の指が自分達の首に触れられないようにする事しか出来なかった。



 一度の失態、そのような事で騎士を殺しては戦力の低下に繋がります。


 今の帝国にそのような戦力を補充する時間はありませぬ。



 至極真っ当な意見すら配下達は述べれなかった、何故なら今の皇帝にそれを言った所で、皇帝の矛先が自分達に向き変わるだけなのだから。


 皇帝の間は重い沈黙に包まれる、今この帝国に、狂った皇帝を咎める者も止める覚悟のある者も居なかった。



 ”ドボドボ”と今では貴族ですらたまの贅沢品とでしか飲めなくなったワインを瓶から移さず、そのまま口に流し込む皇帝グラセフの喉の音が重苦しい沈黙が続く皇帝の間に響くばかりとなる。



 そんな時、皇帝の間が赤く輝き、次の瞬間、とてつもない轟音と共に、城が揺れた。



 ────ゴォ"ォ"ン"



 と。



「なんだッ!?」


「襲撃か…ッ!?」


「この音は……薔薇の園かッ!!」



 ざわめく配下達、唖然と玉座からズレ落ちる皇帝グラセフ。


 その騒ぎは城の内部に留まらず、詰所から”帝国騎士”、帝国の結界の維持を担っていた”魔法使い達”が続々と”皇帝の間”へ。



「「「皇帝陛下!! 御無事ですか!?」」」



 ”狂った皇帝”と陰で囁かれようとも、今の皇帝はこのグラセフ、その身を案じ、続々と増える兵。


 だが、そんな事、知らぬとばかりに皇帝グラセフの頭は憤怒で埋め尽くされていた。



 避難を! どうか! と懇願する騎士や魔法使い、配下達を押し退け、轟音の地へ歩を進める皇帝グラセフ、その心の中には自分にこんな恥をかかせたモノへの制裁の事だけだった。


 そこにもしも自分の身になにか、等の慎重さは一切無かった、それは(ひとえに)に自分が”偉大なる皇帝の身分”だからと言うなんの根拠も無い自信から来るものだった。



 ──いや、心の何処かでは”この城、帝国で最も戦力の集中するこの場でもしもなんてある筈が無い”という考えもあったのかもしれない。









 その歩が先程残酷な命令を下した”黄金の騎士”とその部下達と被ったのは偶然だった、しかし黄金の騎士は驚愕に目を見開き皇帝の後ろを付き歩き皇帝を止めようとする者達へ向き、直ぐに皇帝グラセフを見るが


 グラセフの視界には黄金の騎士は入らなかった、その憤怒に染まった視界には。



「陛下ッ!! 危険ですッどうかッ避難をッ!!」


 身を乗り出し、皇帝グラセフの歩を止めようとする黄金の騎士は怒り狂う皇帝グラセフの



「皇帝たるオレの道を妨げる気かッ!? 退けッッッッ!!!!!!」



 怒号と共に振るわれた魔力により強化された腕に、その枯れ木のような細腕に、弾かれた黄金の騎士は城の壁に大きな音と共に激突し、力無くずり落ちる。



「「「騎士長ッ!?」」」



 黄金の騎士を退けた皇帝グラセフは妾の一人の要望に答え拵えた”薔薇の園(ローズ・ガーデン)”と呼ばれる帝国で最も綺麗な地に足を踏み入れる



 ───事は叶わなかった。



 ──ゴォン、と猛る炎が吹き荒れていたからだ。



 あまりの熱量に思わず後退る(・・・・・・)皇帝グラセフ、そして無様を二度晒す原因となった炎を睨み付ける皇帝グラセフは近くにいる魔法使い達に怒号を飛ばす



「なにをモタモタしているッ!! この火を消せェ!!!!」


「「「「「は、はっ!!!! 直ちに!!!」」」」」








 ──────あぁ、来たのか。



 燃える炎の中から、イヤに黒く堕ちるような暗いナニかが彼らを凪ように見た




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