芽生え、育ったソレは複雑に捻れ巨大に彩やかな緋色を魅せる
端から殺すつもりなど無かった、だが殺すつもりで打倒を掲げた。
でなければ龍、巨星すら吸い尽くした龍神ですら、アレが刹那でも全力で殺しに来られたならば龍神など抵抗すら出来ず斬られ終わるだろう、と。
だから、この結果は些か龍神には想定すらして無い事だった。
終始圧倒たとは言えど闘いのような体を取れるとは。
だがその原因はやはり汝が龍神の全力を本当の意味で出せるように、手心を全力で掛けた、からなのだろう、と。
──それも殺す気で、矛盾しているようでしていない、死んだらソレまで、そして生きて生き抜くならば、ソレもまた善し。
上位者のような思考だが、龍神たる己と己が汝と呼ぶアレでは確かにそれだけの差がある。
あってしまう。
光輪を発動させ、内包した理が跳ね上がった己だから気が付いた、否、
──薄々気が付き目を逸らし続けた事実にやっと直視しする覚悟が出来ただけなのだろう。
何故ならコレが正真正銘の己の全力なのだから、最後になるのかも知れない、やっと、やっと思えたのに、自分で思考出来たのに、己が成したいと思う事が、 ……出来たのに。
こんな所で己の果てを運命てたまるか、強欲に行こう、
▅▂▅たる母の階層主としては強欲を掲げるのは如何なる物かとは思うが、──致し方なし、と口元を歪め笑い己を肯定する。
「何故なら己は使命を抱き、汝に階層主として挑むのでは無く、己は己の意志を汝にぶつけてみたいから、そうだ己は生きたい、打倒したい、汝を、なん、じを……
フッ、フフ……フハハハ、ハハハハハハ!!!!」
「……?」
腹が熱く乾く、抱いた狂気に思わず溢れ出る笑みに、そうか己はここまで、──らしくなってしまったのか! そうだ、そうなのだ、汝を打倒するだけならば、この姿形を取る必要など無かったのだ。
顔が太陽にでも成ってしまいそうだ……、
「大丈夫か?」
汝は何処までも甘いのだな、フフッ
「ああ、大丈夫、己は正常だ、──最後だ。」
「…? ぁ、そうか、ああ、殺ろうか。」
己は見る、眼に汝の姿を焼き付けるように、もしも、ここで尽きてしもうても悔いなど残さぬように。
己の全力を叩き潰す為に姿を変貌させる汝を見る、
一目見た時と変わらない、純白の長い髪。
未だに性別詐欺なのではと疑うような綺麗な、人外たる己から見ても魔性だと思う顔。
瞳は暗く、黒く、薄く蒼掛かった宇宙を思わす瞳は、奈落のような黒一色へ。
本来なら白目な部分を黒く染まらせ、その黒から流れる出る黒い紋様は、窮屈な世界から溢れ出る汝の力を連想させる。
頭部から後ろへ流れる一対二の黒く巨大な角は龍神たる己の眼を惹き付ける程の物。
白かった四肢は黒く異形の龍へ
腰から生える純粋な黒い尾
どれもこれも、汝の総てが己を魅力してしまう、
ただ其処に在るだけで世界を塗り潰さんとしてしまう力が、その在り方が、数々の雌を侍らせているであろう匂いが──、
その在り方が己にはまるで力で総てを捻り潰す”龍の神王”に見えてしまう、しかし、しかしだ、ソレは容認出来ない、しない、神龍姫たる己は、王を否定する。
「《光輪》──第二解放《神装》」
さあ、己は何処まで汝に届く?
龍神たる己に相応しい装具を纏う、その有様は龍らしからなく。 されどここまでしてもまだ届かぬ。
己は心の臓を抑え、鼓動を速く、回す。
無尽蔵の力を纏う、されど届かぬ、汝は余りにも遠く。
「──【龍、戦技】、《龍の逆────、」
否、己は龍の神、なれば。
「《龍神の逆鱗》」
トク…ン、と胸の奥から形容し難い激情が溢れ、力がソレに呼応する。
感覚が曖昧になる、よかった、コレを最後に回して、でなければ、最善を尽くす前に飛び出していた。
自らの法則内に潜ませていた根を取り出す、仕上げだ。
取り出した根に、龍の頭部を再現し、己の肺に異界を創り上げる。
そして、吸う、空を、虚無を宇宙を、世界を。
己の肺に圧縮し、放つは《龍の息吹》
──では、無い。
肺に溜め込んだ総てを漏らさぬように、歯を食いしばる。
そして肺に”魔素””神力”を込める、篭める、焚べる。
コレが己の最大の一撃、全てだ。
龍の頭部を再現させた根を、全て汝へ、向け───
口を開き、放つ────【《樹神龍姫の絶咆》】




