龍の神と理外のバケモノ
龍神が纏う”神力”と白夜が纏う”魔力”の籠った、とんでもない力の籠った拳の衝突が引き起こした衝撃波は、次元を空間を押し広げ、崩しかけた。
宇宙の世界観が押し広げられ、見えたのは真っ白な世界観や、無数の別次元宇宙。
しかし、そんな物、どうでもいいとばかりに、殴り合いを続ける龍神と白夜。
互いに一歩も引かず、押されず、仰け反らず、常にノーガードで殴り合う。
しかし、殴り合いには白夜の方に部があるのか、龍神が空間を神力で補強し、次元を操り自分の体を固定してるのに対し、白夜は自分の拳に魔力を篭めるだけ、遂には、龍神の固定も解け、というより固定ごとぶっ飛ばされた。
その際に貰った一撃で、龍神の肩から腕にかけ消滅。
「グッ……!! 汝は暴力の化身か何かなのか!? 龍神たる己に殴り合いをする行為すら不条理だと言うのに、まさかズルまでしてる己を関係ないとばかりに殴り飛ばすとは……!! 二、三周回って改めて感服するぞ!?」
「ハハハハハッ!! ズルってならこっちだってしてらァ!」
ちゃっかり武術の”外し”や”流し””流動”と呼ばれる技術で全部避けてるからな!!
「それはズルじゃなく技術だ!!」
「殴り合いには無粋な事には変わりねぇだろ!?」
「汝は自分のする事なす事全て否定的に捉えすぎだ! 聞いてる己がムカムカしてしまう、止めよ!」
そう強く断言し、龍神は回し蹴りから、繋げかかと落とし、そして腰から生える尻尾で叩き付けてくる。
その一撃一撃なんとも重い事か、回し蹴りやかかと落としは俺以外の全てを切り裂き、尻尾での一撃は鋭利な刃状だからか、俺の皮膚すら切った。
「フフッ、あーそーかい! ならもっと軽く行くかァ! 楽しみに水を刺して悪かった、なっ! と。」
つくづく良い性格、悪い意味ではなく、本当に良い性格してる龍神だと思う、俺はそれはそれこれはこれの精神で、お言葉に甘え、魔法を使用する。
無詠唱で放たれた《雷刃》に対し、鱗を黄緑色に変えた龍神はその腕で、《雷刃》を払う様に手を薙ぎ払い消した。
「俺の魔力量で傷一つ付かないって事は、雷龍系の鱗に変質させたのか。」
「汝の猿真似だがな、中々であろう?」
純粋な魔力を圧縮し、螺旋状の槍にし、龍神へ放ち答える。
「百点中、八十二点!!」
龍神はどの属性かを考え、対応しようとしたが、どの属性か検討が付かず、闇属性の龍の鱗で身を守ったが、ハズレ、受けて初めて純粋な魔力だと気が付いた龍神は顔を苦々しく歪め、笑う
「赤点は免れたか、しかしほとほと己は詰めが甘い、まさか純粋な魔力とは。」
消し飛ばされ再生した腹を撫で、戒めなければな、と呟き、翼を生やし────消えた。
なるほどなぁ、脚だけで、跳ぶより、翼も合わせて跳んだ方が、速いのか、そりゃそうだ、だって本来は脚なんか無くても龍は翼だけで空を飛ぶんだ、それだけの力がある。なら、合わせてしまえば脚だけより跳躍力が上がるのは自明の理か。
ま、全く同時に羽ばたきと跳躍をしなきゃ意味は半減してしまうが、それでも速いか。
同じ技で相殺してやろうなんて意地の悪い事考えてたけど、こりゃ無理か。
普通に防ごう。
気が付いた瞬間には、俺の腹に両手の爪を突き立ててる龍神。
【龍戦技】の技名を龍神は唱えなかったけど、俺はこの技を知っている。
──《双爪十貫》
人龍と呼ばれる、ドラゴンをそのまま人、と言うより、人狼の骨格にしたようなドラゴンが生み出した【龍戦技】、突き立てた両手の爪で、相手に十の風穴を開ける技、まぁ大概が強過ぎて肉片しか残らない感じになっちまうみたいだけど、同じ龍同士の戦いでは重宝したらしい。
それを今、龍の神にしかも背丈が俺より小さいからマジで十本全部突き立ってる、を食らいそう、てか避けれん。
思考加速でなんとか呑気に考え事はできるけど、よし。
腹に【龍神顕化】、そして【龍戦技】
「《護鱗・流》」
名前の通り、《護鱗》の派生技、《流》相手の力を操り流す事に特化した技。
なんだかんだ【龍戦技】ってのは知識、知性のある龍が作ってるから何かとこうゆう使い易いく強い技が多い、これは”武龍”とか言う、【人化】を多様した龍が人の使う武術に心打たれ、その長い寿命の中、研鑽を重ねに重ねた、中で出来た多数ある中の一つみたいだ。
ん、全部流し、体の中で衝撃を廻す、ヤバいと思ったのか、また翼と脚力を活かした超速移動で距離を取ろうとする龍神だが、そうは問屋が卸さない、ぜよってね。
首を掴み、体の中で貰った衝撃を体の中で光速回転させて増幅させた衝撃をそのまま、龍神の腹に優しく指を乗せ、押し付ける。
「ははっ、ぶっ飛べ。」
「────ゴボッ?!!」
腹に風穴、いや大穴を開けた龍神が思わずとゆうふうに血の塊を吐き出す。
それでも尚も、俺から視線を外さず獰猛な笑みを浮かべれるのは流石、龍、龍の神。
龍神は血の垂れた口で笑みを作り語り掛けてくる。
「まった、く。 容赦が無いな汝は。」
「だって龍神様、容赦したら怒る所が激怒するでしょ?」
「良く、理解している、ではない、っかっ!」
掴んでた腕を切り飛ばそうと腕を、斬る事に特化させた龍種、”斬皇龍”のモノに変え振るってきた龍神。
たぶん、《護鱗・絶》とか使えば防げたけど、
────離す。
その変わり、コレは貰って貰うがな。
背後に準備させてた【光魔法】の中でも強力な
──《極光に輝く神槍》を発動待機させてたのを射出準備させる。
《極光に輝く神槍》
投げれば光速で相手を焼き貫くと呼ばれる、異世界の武神に属す”光神ルーオ”その光神ルーオの”神格武装”の一投、”神の雷”と呼ばれるソレを魔法で再現したモノ、破壊力は”そのまま”使えば劣るだろうが、俺が込めた魔力量なら本家の
──神格武装の投擲を遥かに超える威力を出せる。
それを──十本
「ヒッハッ、 青ざめたな?」
「──当たり前だッ! 《鎧鱗》!!」
跳躍での離脱を不可能と諦めた龍神は翼を割り、四体の皮膚から腕へ、変化させ、その龍の腕に生える鱗全てに《鎧鱗》の【龍戦技】を掛けた。
さて、だがその程度で防げるかな? ヒヒッ
十本の《極光に輝く神槍》を同時に射出させた。
放たれた十の《極光に輝く神槍》は容易くとは言わずとも龍神の護りを貫き、下へ吹き飛ばす。
しかしその結果は想定内。
「吹き飛ぶ一瞬、鱗が全部真っ白になってたから光龍系統の鱗を全部引き出し防御に回したんだろうな。」
光耐性、どころか”光の破壊”すら出来てしまう光龍の鱗を更に性能を上げ護りに全振りしたんだ、防げて当然、か。
────な訳ねぇだろ、お前の未熟な結果だ、相手を賛美してもこの結果を当然だと甘んずるな。
魔力を練れ、圧縮しろ、濃く濃く。
俺に全力を向けてくれる龍神を侮辱するような怠慢は辞めろ、挑まれるなら挑まれるだけの圧倒を見せろ。
出来なきゃ惨たらしく死ね。
十本の《極光に輝く神槍》に貫かれ落ちる龍神へ追撃を加える為に練り上げ圧縮を繰り返した魔力を魔法へ転じる。
発動するのは【深淵魔法Lv13】の魔法。
「──深淵へ沈め、《黒の転廻》」
使った事のある【短文詠唱】のスキルを思い出しながら、縛った今の状態で再度習得、そしてその【短文詠唱】によって規模が底上げされた《魔法》が発動する。
黒い俺の手を、落ちながらもがき、《極光に輝く神槍》を三本抜き、四本目を抜こうとしてる龍神へ向ける。
黒い俺の手のひらの中で魔力が”黒い魔力が円状に廻る”それを龍神へ──堕とす。
距離を破壊、距離を無視した魔法《黒の転廻》が──
────龍神の傍に現れ、龍神へ直撃、次の瞬間、黒い魔力が宇宙を覆う程広がり、廻った。
黒く塗り潰される、景色が、宇宙が、色が、深淵は総てを墜とし、何もかもを虚無へ還し、深淵と成す。
黒く染まり上がった世界で俺は、笑う。
ああ、一応、マジだったんだがなぁ、と。
数多のスキルを封じた状態とは言え、今出来る俺の技術を乗せた魔法。
その魔法で創り顕現深淵を破るように覗く深緑の巨大な根を見ながら口角を釣り上げる
巨大な根は一本、二本と深淵を突き破り、最終的には十本突き破って来た。
そしてその十本の巨大な根は、グンッ、と左右へ開かれ、深淵は扉のように破かれた。
所々、黒く侵食された肌の跡を残す龍神は笑い言う。
「今のは死んだと思ったぞ。」
そう言いながらも再生を終えようとしている龍神へ俺も笑いながら言う
「あぁ、俺も殺したと思ったよ。」
樹木の生命力に、あれだけの理違いの龍種を取り込み、尚も適応してるんだ、そりゃ深淵なんぞ、適応したら唯の魔力か、ふふっ
十四対七の深緑色の翼を広げ、背後に黒緑に暗く輝く光輪を浮かべる龍神を見ながら、次で倒すと意思を固め、笑みを浮かべる。
”神力”
神気が、自然のエネルギーに近いのに対し、神力は自分の体内で生成した魔力に近いエネルギー、違いは”神気”が取り込み熟成させるのに時間が掛かるが、あまりどれも差が無く、あるのは量のみに対し、神力は自分自身の実力次第で薄くも濃くもなる。
ちなみに神力は”神”と分類される中でも、”種族”として実体を持った者にしか持てない。




