肩慣らし
「あー、暑い。」
真っ白な炎に薄皮をチリチリと焼かれる感覚に身を委ねながら、ぽつりと呟く
「しっかし、何処を見渡しても真っ白だなぁ。 てか龍神さんあんな木属性ですよ、みたいな見た目していきなり火ブッパしてきたんですけど。」
とりあえず浮かんで来た疑問を脊髄反射で口に出しながら、どう、どうやってこの白い炎を突破すればカッコイイかな、なんてくだらない事を考える。
「まっ、いいかぁ! 」
背に巨大な翼腕を生やし、黒刃を生やした巨大な翼腕で握り、縦に振り下ろす。
取り敢えず”燃ユル惑星”とか詠ってたから、惑星を両断する力加減で振り下ろした。
──一刀両断される”惑星規模の白い炎”
次の瞬間、俺に見えたのは、俺を貫こうと全方位から迫る黒い槍状の木の根、それら一つ一つに感じるあらゆる状態異常を引き起こすだろう害のある付与魔法の痕跡。
「受けてみても良いけど、変な超反応起こされて対処出来なくなったらダサいしやめとこ。」
指を擦り合わせ、パチンと必要ないモーションを挟み、火魔法Lv1で発動出来る、《 火 》を発動、迫る根を全て焼き払う。
「あと見えてるぞ。」
「──ああ、承知の上だ。」
”隠龍の力”で気配を断絶し俺の背後に回っていた龍神にそう声を掛けるが、返ってきた返答は承知の上。 成程、気付かれても対処が難しい技を放つ気か。
「【龍戦技】」
あぁ、そりゃ”龍”神だもんな、使えない筈がないか。
口角が歪に釣り上がる、ああ、楽しそうだ。
「──【龍戦技】」
技比べと行こうか龍神
「《爪撃》」
「《爪撃》」
互いの立てた爪がぶつかり合い、空間を揺らす。
空間に走った衝撃波が周囲に浮かぶ星や惑星を粉砕し、尚も広がり続ける。
しかし互いの損傷は、俺が無傷、龍神が腕に亀裂。
よし、勝った。
少し万年は生きてそうな龍神に勝てるか、少し心配だったが、勝った。
「ふむ、悔しい。」
「ステータスが違うからね、仕方ない。」
俺がそうフォローを入れようとしたが、やはり下手だったか、呆れた表情を浮かべた龍神が蹴りを放ちながら言う。
「瞬間的に一緒の力になるように調整した上で技量で汝が尚も上回ったのだ、下手な慰めなど、不快なだけと知るがいい。」
「うっす、すいません。」
俺は謝りながら龍神の蹴りをいなし、カウンター気味に龍神の顔面を掴み投げ飛ばす。
ぶっ飛んだ龍神に、【龍神顕化】で手の平を割り、龍の口へ変える。
《龍の息吹》を球体状にし放つ。
属性はあえて、”闇”
龍神に《龍の息吹》が着弾するのと共に、黒い波動が結構離れてるコッチまで伝わってくる。
”闇”の属性は色々な効果があるけど、注意が必要なのは”吸収””崩壊””触れれないモノへの攻撃可能”
”崩壊”の効果で硬い外皮は無意味と化し。
そして”吸収”は魔力、物質すら吸い込み、魔法の力へと変えてしまう。
さらに、闇属性は、他の属性よりも、圧倒的に破壊力がある理由がある。
”吸収”これは敵性のモノを吸収すると思われているが、違う、”吸収”は自分の魔力も無駄なく吸収する、その為魔法に込められた魔力量が違う、自ずと他の効果も強くなる。
「んま、闇属性耐性とか吸収耐性、崩壊耐性のスキル持ってるみたいだし、効果薄いだろうけどね。」
だからあえて、だ。
黒い波動が途絶え、龍神の姿がハッキリ見えるようになった、そこにはボロボロだが原型を保っている龍神の姿。
しかし、すぐにボロボロの姿は傷一つない姿へ、うん、再生能力高ぇな。
「《護鱗》を発動してこのザマだったのだが?」
《次元渡り》を使い背後に移動して来た龍神がそう、言う
「当たり前だろ、魔力どんだけ注ぎ込んだと思ってんだよ、逆にそこまでしか負傷してない事に白夜さんは驚きだよ。」
そう言い返し、振り返る、そして互いにふっ、と笑みを浮かべる。
俺は挑発気味に、龍神は笑みに獰猛さを乗せ。
「さぁ、肩慣らしはこの辺りで十分だろ? 能力の把握は終わったか?」
「汝に心配されずとも、既に終わったさ、
────では子供っぽい事を言うが、次は本気でやろうか。」
人の形から龍としての腕を新生し初めて出した龍神が拳を振るい、俺も迎え撃つように【龍神顕化】した腕で拳を振るう。
──────────ッッッ!!!!!
ドン! ともバキン! とも鳴らず、その衝突は次元に大きな巨大な、大穴を開けた。




