力と技量比べ
────ッッ!!!!
質量の暴虐、速さでも、見た瞬間には振り下ろされていた。 そんなレベルの理不尽な災害、数京ある中の一本の根でコレだ、さすが”龍の神”
だけど────
「この程度じゃ潰れてヤレねぇなァハッハハハハハ!!!!」
跳ね上がった”力”のステータスを試す為、軽く拳を振り上げる。
それだけ、たったそれだけの動作で圧倒的な質量は塵へ
しかし、それも分かっていたのだろう、重ねて巨大な根を叩き付けてくる。
「鬱陶しい! 《凶月》」
それらを黒刃で【刀術Lv9】の《武技─凶月》で
──凪斬る、だけには留まらず黒い線が龍神の胴体に切れ込みを入れる、 ……だが直ぐに再生してしまう。
ふぅんむ、さすが”樹木系統の龍神”、治癒と再生の重ね掛けで瞬間的に治したな。
俺と龍神は暫く眺め合う、互いの心境はこうだろう。──どう殺すか。
この三階層に用意された巨星の中央に生える巨大な大樹、全長は雲を超え、伸ばした枝は巨星を覆う程、太さはマジでデカいとしか表現が出来ぬ程。
────【多界樹の樹龍神】
さっき【龍神の瞳】にして見た情報がコレ、さてどうするか、 ……って別に線の攻撃しなきゃいいのか、この巨体を消し飛ばす程の範囲を消滅させれば。
言ってもなぁ、コイツ、さっきチラって見たけど魔力への耐性めちゃくちゃ高ぇんだよなぁ、魔法だと最悪、塵一つは残る、んで再生してしまう。
コイツ、ちゃっかり俺のリザルト報告聞き終わるの待ってるのかと思ったら、俺が殺戮し尽くした龍の肉片とか血を吸収してたんだよな、そのせいで炎龍とか氷龍、雷龍、水龍とかが持つ、各種の属性の完全無効耐性が付いていやがる、勿論打撃斬撃にもな。
だから──厄介、迫り来る無数の巨大な槍のような枝の攻撃をただ魔力を体から発散させる”魔力放出”で消し飛ばし、
──自分の言い訳がましいそれっぽい理由に苦笑いを浮かべる。
そうだな、あーだこーだ言ったが、結局のところ、俺はコイツと遊びたいんだ、あの破廉恥鬼娘に毒されたな、おかげさまで闘争が楽しいと感じるようになってしまった。 思わず良かった事なのか、悪い影響を受けてしまったのか、どちらかな。 と苦笑いが浮かんでしまう。
──唸らせ迫る巨大な根、それも太陽のような熱量を発しながら、先端を剣のような形状にした根が大気を焼き、迫る。
────ドッッッギャッ!!!!
それを片足で踏み潰し、笑みを浮かべ言う。
コイツになら通じるだろう、と。
「今度は俺が待ってやらぁ、だからさっさと完全体に成れよ。【特別個体】」
俺がそう告げ笑うと、
──巨大な大樹は胴体から大きな亀裂を口のように割り、轟音なんて生優しいモノじゃない声量で笑い声を荒らげた。
底から感じる感情は、畏怖と恐怖と使命と愉と楽と嬉、六つの感情が混ざった笑い声は以外にも聞き心地がいい音をしている。
まぁ、その笑い声で残ってた幾つかの大陸が砂に成ったけど、そこはさすが最強種の頂点手前の存在だな、と感じる。
俺は物質創造の出来る龍、創龍の力で椅子を創り出し腰を掛ける、……が。壊された、いや、襲撃とかそうゆうんじゃないんよ?
「あ、あの〜、一体全体なにが気に食わなかったのでしょうか…黒刃さん?」
そう俺の愛刀がいきなり創って腰掛けたばかりの椅子を木っ端微塵にしやがった、結構デザインも凝ったのにィ!
んえ? 拙僧にお座り下され? い、いやー? 刀剣類の武器は座り心地悪いんよ? あ、椅子にも変化出来るのね……。
てか、何処で食ったのこんな椅子……。
「ま、まぁええや、ん、座り心地いいな。」
自分ながら敵を前になんて呑気な感想を、とは思うが仕方がない、今の俺じゃ、この龍神ですら殺ろうと思えばただの”魔圧”で塵一つ残さず消してしまえる。
ズゴゴゴゴと、重く腹に響く轟音を鳴らしながら、あの巨大な根が吸収しきれて無かった龍の死骸を吸収しているのを眺める。
美しかった翡翠色の巨大樹が、赤く、紅く、鮮血に染め上がる様を見て抱く感想は、綺麗だな、だ。
少し生物の死骸を喰らってなんてやってる事に対する感想としては不謹慎かな、とは思うが、なんて言うのかな、言葉にならんが、まるで紅葉を見ている気分になる。
しかし、龍で思い出すが、【アイテムボックス】から大きな卵を出す。
あの”真なる巨龍”を殺した時にドロップ? した卵だ。
「オマエはいつ孵化すんだ? いい加減”俺の魔力”も十分蓄えただろ?」
あんま遅いとマジでオムライスにして食うかな、なんて思ってると卵がぷるぷると震える。
………やっぱ、俺の思考、分かってるよな? それか本能か? んー、アイテムボックスに入れっぱなしが良くねぇのかなぁ、いやコイツのボックスは時止めしてない広い空間みたいなボックスに入れてるしなぁ。
そう俺の【アイテムボックス】は色々な機能がある、実はアイテムボックスなんてスキル名じゃないのはこの際置いといて、色々な機能がある! まずは自動管理機能に、何が入っているか、どんな個数が入っているか、それを”何となく”で分かる機能、それと時関連の設定機能に自動解体機能、自動修復機能、さらには自動回収機能まで! それに入れる空間は自由自在、宇宙空間みたいに漂わせる無重力空間、または個室のような空間、本当に様々、それに俺のアイテムボックスは”アイテム”ボックスって言うよりかは”何でもボックス”って言った方が正しいのかもしれない、アイテムボックスは文字通りアイテムのボックスだから生物は入らないが、俺のボックスは生きてる生物も入れられる、そう、だから。
この巨龍の卵が一年くらい経ってるのに孵化しないのがおかしいんだよ、ポkットモンスターだったら憤怒モノだぞ、なんだ歩数が足りないのか? 世界一周と言わず百週くらい走ってやろうか……!
「なんてな」
卵を一撫でし、微笑みを浮かべてしまう。
なんだかんだナニが産まれてくるのか、どう産まれてくるの、それが楽しみなのだ。
「早く産まれて来いよ、それによっては考えた”名”が没になるかもなんだから。」
俺は手を置いたまま【アイテムボックス】を発動させ、コイツ専用の空間に放り込む。
そして、つい先程とは文字通り桁違いの強さになった龍の神を見る
形状は全身が樹木で構成された西洋のドラゴン、腕と足の四本で地に付き、大き過ぎる羽、巨翼を広げ座する。
色は先程の綺麗な翡翠色とうって代わり深緑、所々禍々しい血のようなモノが線状に走り、葉は尻尾に集中し集まっている、そして背後には二階層の主が切り札として使っていたであろう光輪が、それも【蟲地白死龍】よりも規模もエネルギー濃度も次元違いで、違うのは光輪の色も、だ。 ヤツが太陽のような光なら龍神の光輪は深緑。
効果が違うのかなんなのかは分からんが、 ハハッ。
───面白い。
「はは、ハハハハッ!! さっきの巨大樹みたいな姿も良いが、今の姿も神秘的で好きだぜ!? 但し見掛け倒しじゃねぇ事を祈るがな!!」
───ッッッッッッッッッッッッッッオ!!!!!!!
俺の開戦の口上に、樹木の最上種、龍の神は”ほざけ”と怒鳴るように口角を上げながら咆哮を上げる。
「シシッ♪ さっきは先手をくれてやったんだ、今度はコッチな?」
拳を握り締め、回転を加えた拳を振り抜いた。
────────────────ッ
音が死んだかと思う程の静かな拳圧と龍神の鱗の激突音、そしてそんな激突の末、攻守制したのは、俺の拳圧では無く、龍神の鱗だった。
しかし、俺の拳の拳圧を受けた龍神の体が数千メートルぶっ飛ぶ、いや、それだけで済んだのだからやはりこの龍神は強いのだろうな。
今の一撃は星の表面は螺旋状に抉れる程の威力誇っていた、しかし、ぶっ飛ばされたとは言えど、龍神の鱗は掠り傷一つだ、どんだけ硬ぇんだって話だ。
なんて戦闘中にするには少し不躾な思考をしていると、──眼前に迫る宇宙を思わず巨大な葉。
「なるほど! ぶっ飛ぶ瞬間に尻尾を振ってコッチに飛ばして来たか! 面白いな、それに速さも威力もある!」
巨大刀に変化した黒刃で巨大な葉を、守護龍とか言う龍よりよっぽど頑強で柔軟な葉を斬り捨て笑みを浮かべる。
「速さは光速未満、音速以上だな!」
斬り捨て二枚になり落ちた巨大な葉が大陸に突き刺さる様を横目に乗ってた威力と速さに思わず声を上げる。
そして見た、さらに数十万枚の葉が放射状に此方に放たれる奥で、龍神が口内でエネルギーを圧縮する姿を。
なるほど、この葉は囮で、本命は【龍の息吹】か。
「いいね、乗った。」
本来ならこんな雑に放たれた葉っぱなんて、幾ら追尾機能が在ろうとも囮にすらならないが、龍神の息吹……面白そうだ、受けて見たい、感じてみたい、どれ程の破壊力か、どれ程の威力か、そして──斬り伏せたい。
黒刃をイヤリングへ変化させ、 【龍神顕化】と進化させたスキル、その影響で向上した龍の腕や脚で、全ての葉を砕く、または散らす、斬る。
その際の拳圧や脚撃の衝撃で何度か龍神の体にヒットしてしまったが、堪えた様子も無いからおっけーとする。
さて、待ったぞ、どうだ?
そう期待し見たのは、深緑色のエネルギーが凝縮され龍神の異界と化した巨大な肺から放たれる息吹寸前だった。
──笑みが零れる。
次元が捻じ曲がり、空間がエネルギー量に圧迫され崩れ行く程の超エネルギーのブレス。
速度は俺じゃなきゃ思考も認識も出来ない光速。
【龍神顕化】を解く。
勝負、斬りたい、斬れるか? 俺の技量で。 【龍神顕化】の圧倒的な力もない、速さも無い。 素の技量で。
ははっ、どうでもいい。
斬れる、斬る。
──斬れなきゃ、そこで無様に死に晒せ俺。
「勝負。」
既に居合の状況へ変化してくれた黒刃に手を乗せ。
──────斬った。
斬った際に生じたズレた次元に吸い込まれる龍神の超エネルギーのブレス、そしてそのズレた先には両断された龍神。




