閑話 空中の死闘
────ヒ"ァ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"""""""
空気が、極寒の大気が、その一鳴きで押し広げられた。
魔力の籠った一鳴き、ソレはタイミングを計っていた冒険者達の動き出すきっかけと成った。
一人の冒険者が戦闘盤と化した魔法陣の上を駆ける、
握る弦に、力が入る
狙うのは王道、どんな生物でも脆い筈だと言える眼孔、
矢を引き、
「ヒュ───ッ!!!」
一息の間に六矢を放つ。
放たれた六矢は風を割き、ワイバーンの眼孔へと吸い込まれるように突き刺さった、
────ル"キ"ァァ""ァアアア"""
悲鳴の絶叫を上げるワイバーン、
「怯んだぞォォオオオオ!!! 動く隙を与えるな!!!! あれが動く前に殺せェえええええええ!!!!!!!」
一人の冒険者が吠えるように声をあらげ、自分を含めた仲間を鼓舞するように我先にと走り出す、
その声に一切の遅れを見せず者達は走り出す、
片眼を失ったことにより体勢を崩したワイバーンは、───落ちるように加速する、
本能が叫ぶ飛行技法に従い、ワイバーンは加速する、機空戦艦を回るように加速する。
「そして最高速度で叩き潰すカ? させるわけないネ、」
その加速の間にワイバーンから見てしまえばあまりにも矮小な生物が割り入る、
このまま速度に巻き込み引き殺す!!
────ア""ァ"ァ"ア"ア"アァ"アアア""""
牙を剥く、鋭利に尖る牙を、鉄をも越える硬度と柔軟を持ち合わせる獣をも喰い破る牙を、
「ハッ……!!! 上等!! 正面から叩き割ってやるネ……ッ!!!!!」
拳を握り、体を剃らし限界まで引き絞る、
ギチギチと鳴る筋肉を力で操る、
リェンファの眼前に迫る牙を
リェンファは回転を纏う拳で迎撃する
勝負は一瞬、結果────引き分け
重量に従い魔法陣の上へと叩き付けられるワイバーン、
加速の残力に大きく吹き飛ばされ、魔法陣の上をバウンドするように叩き付けられるリェンファ、
しかし、即座に立ち上がったのは大きく吹き飛ばされた筈のリェンファだった、そのリェンファの側で固定砲台と化すエヴァが笑いながら軽口を投げ掛ける
「ハッ──ハァ!! えらく大袈裟にぶっ飛ばされたなァリェンファ!! 」
「当たり前ネ、アイツ自分の牙じゃ届かない、そう判断した瞬間にワタシに加速の風圧諸々押し付けながらあの羽でワタシを殴たネ、その力流さなければワタシ今頃ミンチネ。」
そう言いながら立ち上がりリェンファは服に付いた埃を払い、
何時もよりも鋭くなった眼を、這い上がるように立ち上がるワイバーンへ向ける、
「チッ、全部叩き割るつもりだたのが、たたの五本ネ、これじゃ修行不足ババジジに嗤われるヨ、」
「ははハッ!!! アレの牙五本も叩き割って修行不足かよっ!! 随分厳しいこったなァ!!」
そう笑いながらエヴァは足元に円型の影を出現させる、
その横で今回初めて構えらしき構えを取るリェンファ、
「────さァ! 【 武器倉庫 】のエヴァが闘争を始めるぞォ!!」
宣言のように声を高々に上げ、エヴァは影から銃火器を取り出し、
始まったのは圧倒的な速射連射、弾丸と爆撃の雨霰だ、
そしてその全てに膨大とは言えないまでも、ワイバーンの鱗に傷を付ける魔力が込められている。
これがエヴァの戦い方、すべての銃火器を十全に扱い、それらを効率よく、そして軍隊を相手しているかにも感じるほどの隙間のない弾丸の連射攻撃、
────ァハハハハッ!!! 潰れろ潰れろォ!!! 消し炭になっちまいなァァ!! ヒハハハハハッー!!!
狂ったように笑い、エヴァは攻撃を途絶えさせない、撃ち撃ち撃ち、弾がなくなった銃火器を影に沈め、その間も片足で速射を続け、片腕でピンの抜かれた手榴弾を五つ投げ、弾丸の詰まった銃火器を取り出しブッパなす、
ワイバーンは立ち上がるも、自分を焼き傷付けるソレらに、思うように動けない、
その間にも冒険者達の猛攻撃は続く、
剣に羽を傷つけられ、
弓によってもう片方の眼を狙われ、
魔法により、常に体力を奪われ、弱体化の付与をされ続けられる、
このままでは為す術なく、封殺される、怪物たる自分が、
痛いのは不快だ、だが失った片眼の怒りを上げることなく、死ぬのは本能が否定する、
だから、ああだか、、、不愉快だ、
鬱陶しい、矮小なゴミ風情が、
──────■"■"■""■"""■"""■"■■""""""ッ
ワイバーンの纏う魔力が色を纏う、無色から黄緑色の、雷のような荒ぶる雷鳴を、
瞳は狂気を纏い、赤く染まる
羽の一振と共に暴風を巻き起こす、雷鳴を纏う暴風を
第二幕の始まり
開幕の糸を引くのは、黒い影




