閑話 劣化なれど、人にその優劣は意味をなさず
エヴァやリェンファ、タイラン、そしてNoーズ達は、それぞれの楽な姿勢で待機している、
理由は簡単、モンスターの討伐にあたり、ある程度よ情報共有とポジションを決める為に、機空戦艦に乗るパーティーの纏め役、またはリーダーが、一ヶ所に集まり話をまとめているからだ。
エヴァやリェンファはその話しを取りあえずディランに丸投げした、本人達は”大変めんどくさかった申し訳ないとは思っては、いるかもしれない”と供述している。
エヴァ達が集まる場所に、ディランが小走りで戻ってきた。
「お疲れェディラン、」
「ご苦労ネ。」
「お、お前らなぁ、はぁ…まぁいいや。」
一切合切悪びれる気のない二人の態度にディランは思わずため息を溢すが、エヴァから投げ渡されたいちごミルクに免じて、まぁいいや。と苦笑い気味に呟き、まとまった話しをエヴァ達に単純に伝える。
それほど時間があるわけでは無いからだ。
「俺達はアタッカー、前衛だな、」
その言葉にエヴァ達は文句なく頷く。
「まァ、妥当だな、俺達に後ろに居られちゃぁ、おちおちと討伐に集中できねぇだろうし、前衛ともなれば俺達が裏切りみたいな動きを見せても後衛でやられるよりゃア対処しやすいだろうしな。」
身も蓋もないが、昼に起こした問題もある、艦長が認めたとしても冒険者達全員がエヴァ達の事を信じれるかどうかは別問題だ。
「そうゆう事だ、それでもバフは掛けてくれるらしいし、怪しさ満点の俺達に歩み寄ってくれる、話し合いの意見も邪険にはされなかったしな、俺からすれば満点な結果だと思う、あ、それとだが。No.1」
「疑問、どうしたんだディラン上官。」
そう首を傾げるNo.1と呼ばれた小さな黒マントをディランは撫でる、
なぜ撫でられた…? と困惑の色を隠せないNo.1にディランは言う
「No.達はタイランの指示に従いながら後方支援をしてもらう。」
「疑問1、我らが後衛をしないのが冒険者の安心に繋がるのでは無かったのか。」
「それとこれは話が違う、いや、…適材適所、ってやつだ、No.達は連携が得意だろ? それも俺達より」
「是。」
「ならばある程度のリスクを背負ってもNo.達の連携力が欲しい、ってことだよ、お前らの連携力はそれだけ卓越している、必要だと思われてるってことさ。」
そう弟や妹を諭す兄のように告げるデュランに、No.1はなんとも言えない感覚を覚えながら、コクり、と頷いた。
どうしても気になる疑問を一つNo.は上げながら。
「疑問…2、」
「ん?なんだ?」
「我等が後衛をすれば、皆は、助かる、のか。」
ここで初めて、あまり驚きを見せないディランは驚きの感情を見せた、
目を開き、そしてすぐに嬉しそうに微笑み、No.1の頭を優しく撫で、言った
「ああ、助かる、お前らが後ろに居てくれれば、俺達は背後の心配せずにあのトカゲをぶっとばせる!」
その返答にNo.達は仮面の奥で微かに笑みを浮かべ、No.達は任せろ、そう言うように頷いた。
「No.の代表としてNo.1が言う、上官ディラン、戦士エヴァ、武道家リェンファ、タイラン、汝らの健闘を祈る。」
「あぁ、ま、こう見えて俺も真っ正面勝負が苦手、って訳じゃないんだ、まかせな。」
ディランは茶目っ気を入れながらも安心させるような笑みを浮かべ
「あァ、武器倉庫なんて付けられた俺の二つ名、篤と見せてやる、少し俺の戦闘は過激だぜ?」
背を向けながら軽く手を振り、鼻歌混じりにエヴァは歩きだす
「ニシシ、まかせるヨロシ」
短く、しかし確かな安心を持てる笑みと共に、リェンファは体を解しながら歩きだした
「な、なぁ…、な、なんでオデだけ名前の前になにも付かないんだな?」
「……??」
「?、?」
No.達は顔を見合せ、タイランに向き直る。
期待するタイラン、
「「「がんばれ、タイラン」」」
「や、やっぱりオデだけなにもないんだな……」
機空戦艦の機体の周りに、魔法陣が浮かび上がる、
この魔法陣の効果は三つ、
一つ目は、重量の向きの変換、
向きは機空戦艦を中心に。
二つ目は、空気の操作、
上空だからこそ起こる現象の、空気の薄さ寒さ風圧、
それらを戦闘できるだけの環境にするためのモノ。
三つ目は、固定、
いくら重量を機空戦艦を中心にしようとも必ず足場が悪くなる、その問題を解消するために、機空戦艦から少し浮いた位置に足場となる磁場の固定。
これら三点と、細やかな調整により、これより機空戦艦は───空を飛ぶ戦闘盤と化す。
「はァァ、感心するぜ、全く、よくこんな大胆なことを思い付くヤツがいるもんだぜ、」
「アイヤー、ワタシもそう思うネ、てか考えても普通やるカ?」
「すげぇな、マジで空気が冷たくねぇ、てか地上より快適か?」
そう三人は感心するのか呆れるのか、どちらともとれる顔で、獲物を見る。
「んで、あのデカブツが俺らの獲物か。」
「うわー、マジでっけーネ。」
「あのバケモン見てそんな感想を即座に抱けるお前らが味方で俺は心底安心するぜ。」
そんな呑気な会話とは裏腹に、三人、───否
ここに出てきた10を越える勇士達は、臨戦状態を刹那の時間を立つに連れて高める、いっそ気を張ってる精神力だけで、死んでしまうのではないかと思う気迫を纏い、
─────ソラを支配するソレから目を逸らさずに睨み付ける。
トカゲの頭に生える強靭極まる二つの角、
アパートを振り回しているのかと錯覚するような大きな二対四の豪翼、
体を覆う鱗は妖しくも惹き付けられるような光を放ち、
尾は長く、太く、強靭だと見てとれる、先には鋭利な刃を備え、その刃は振るえば容易く鉄をも両断するだろう、
見る者の精神を圧する、時が重苦しく乗し掛かる、
最強の生物、その劣等種、しかしそれは生物全体で見てしまえばの話し、
このソラを在るだけで支配しているも錯覚させるコレは紛れもなく、
───災害をもたらす怪物なり




