閑話 艦長は知ってる
”機空戦艦”操縦室──。
ここは、艦長──大空紬の為に専用で作られた部屋だ、
操縦室にしては生活感が強く、とゆうか完全なゲーマー部屋みたいな部屋であった、
広く作られた部屋に詰められた娯楽用品、完備された冷蔵庫にその他諸々。
操縦には必要とは思えない物がとにかく広がっていた。
なのに操縦に必要な物は一つも見当たらず、敢えて関連付けるとするなら、室内に最近”ギルド”が作り出したと言われる”オートマタ”と呼ばれる、人間と遜色ない人形が二体。
興味本位で室内を見渡していた集団に声が掛けられる。
「ふむ、 怪しい方々、飲めないモノ、キライなモノはあるかな?」
そう首を傾げ、紬は問い掛ける。
その問いに、口下手な者も居るため比較的普通に話せる面々が答える。
「んにャ、ワタシは大抵なんでものめるネ。後の大男が辛いものが苦手くらいネ。」
「俺もキライなモノや苦手なモノはありません。」
「俺ァ苦いモノが少し無理だな。」
そう答える三人以外はプラカードのようなモノに全部いけると拙いが日本語で書かれてる物を上げる。
それに対し頷くと紬はオートマタに指示をだしながら、自分も紅茶、珈琲やジュースを淹れていき、各自に差し出す。
その差し出されたモノに、各々が微かに驚きを表には出さずしかし確実に動揺が広がる。
なぜなら、その差し出されたモノは自分達の好みだったからだ。
今日、いやさっき会ったばかりの他人に好みを把握されてる。
その事実に驚くな、と言うのが無理だろう。
だが流石、そっち方面の者達、驚き動揺はあるが表には一切出さない。
「ふふっ、話の前に少し喉を潤そうではないか。」
なにが楽しいのか、弾むように笑い紬は手元のカップに入ったエナジードリンクを飲む。
それに続くように手元の紅茶を飲む、猫背の男は思う。
(機空戦艦に乗る冒険者以外はごく普通の訓練をこなした一般人、って話だったが、これはガセを掴まされてる、と考えたほうがいいな、国単位で。
ははっ、まぁ敵対する気が微塵もない俺てきには考える、知識としての価値しかないけどな。)
(この桃のジュース美味しいネ。)
(リンゴジュースうま。)
(ミルクティーが俺の好物ってバレてるのァ、若干ハズイな……)
「ふふっ、満足して貰って艦長は嬉しいぞ、さて今さら感が否めないが、互いに自己紹介と行こうか。
───艦長の名前は一度言ったが改めて、名字を大きな空で大空、丈夫な糸のような人生をと言う意味で付けられた紬を合わせて、大空 紬だ、宜しくしてくれ。」
「ではえっと、俺から。」
そう答えるのは猫背の彼。
「昔からの家業で政府からの依頼を請け負う事を生業としている、名をディラン・サリバンと言う、宜しくお願いします。」
それに続くように、薄い赤の化粧が似合う女性が
「李 蓮花、一応"武道家"ネ、暗殺はジジイの方が専門、今回は日本に用事が会ったから請け負うたネ。」
そう言うリェンファは後でオドオドしてる巨漢を裏拳でべしっと叩く、
それを受け巨漢はごもりながらも自己紹介を始める
「お、オデは……名前…泰然、梟、ともいわれてるだな…」
そうタイランは自己紹介を終えるとチラッチラッと、赤毛の古傷が多い女性を見る、
それに対し女性はわかってるよ、とばかりに手をひらひらさせると自己紹介を始める。
「俺ァ、エヴァ・バートン、なんでも屋をやってらァ、日本には家の弟が受けた恩を返しにと、入院中の弟を見にきた、ヨロシク。」
そうエヴァは自己紹介を終えると、他の自己紹介、すると言うには少し無理がある面々を見ると、紬にそう伝えようとするが紬は手を前に出し止める。
「ふふっ、ありがとう、宜しくねみんな、他の子達も、ね? 」
そう笑みを浮かべる紬に、面々は何度目かの驚愕を覚える”どこまで知っているのだ”と。
「さて、みんなが何で、艦長達の事を”守ってくれたのか”はなんとなく”知ってる”からさ、みんなが受けた? 依頼の内容を教えて欲しいな、少し面倒だと感じるかもしれないけど、艦長はみんなの口から聞きたいな。ダメかな?」
そう片目を閉じ悪戯っ子のような笑みを、誰かの影が被るような笑みを浮かべ、紬はそう言った。
───あぁ、この人には敵いそうにないな。




