第5話 ブラッディ・ドール
竜騎士とは龍の帝国の宝物、故に龍を得た騎士は国王によって騎士爵を与えられる。つまり竜騎士とは最下級では有るが貴族なのだ。そして竜騎士は他の国においても抜群の知名度と人気を誇っている、今で言う有名人みたいなものなのだ。それ故に竜騎士は他の国から引き抜きを受ける事がある、過去何人もの竜騎士が他の国の美女や大金、貴族の地位等で引き抜かれた。これを国の一大事と見た国王は竜騎士の引き抜き防止策として竜騎士に従者を付ける事にした、他国の美男美女に対抗する為に龍の王国でも最高の美男美女を集めた竜騎士の従者達、そして彼等が通う学校は竜騎士従者専門学園。国営でエリート従者を育成する学校である、ここに入れただけでも龍の帝国で最も容姿が優れ、そして優秀であると言う事が証明された様なものだった。
「さて、皆さん。分かったザマスか?」
「はい、学園長先生」
「良い返事ザマス。貴方がたの役割は竜騎士様を他所の国に取られない事! これが一番大事な事ザマス」
「質問宜しいでしょうか? 学園長」
「どうぞ」
「取られそうになったら実力行使は有りでしょうか?」
「当然です! 竜騎士を取る様な不埒な者はぶっ殺すザマス」
竜騎士従者養成学園とは単に竜騎士の従者を教育する学園では無い、学園長の訓示の通りその学園の卒業生の第一の任務は竜騎士の国外逃亡を防ぐ為に存在するのだ。それ故に卒業生の戦闘能力は非常に高い、容姿端麗、一般教養完璧、そして戦闘能力激強の完璧超人が入れる学園である。この学園の卒業生はそれ故に、竜騎士の従者になれなくても貴族の護衛や商人の従者など非常に待遇の良い仕事につける事でも有名であった、競争率は常に1000倍を超える狭き門の真のエリート達で有る。
そしてその中に一人異質な候補生が居た。竜騎士のシュガーと同様、その存在自体が異質。シュガーは基本的に人畜無害であるが、彼女は人畜有害、非常にはた迷惑な存在だった。ただし、他の従者候補生と同様外見は素晴らしい、身長160cm、88・58・90のナイスボディで黒髪を腰の辺りまで伸ばしていた。その候補生の名前はコアと言う。
「よ~し、お前ら今日からは戦闘訓練を行う。覚悟は良いな」
「「「ハイ、教官!」」」
ここは学園の訓練場、彼等は一般教養や礼儀作法の他に厳しい戦闘訓練を受ける。彼等を鍛えるのは実戦経験の豊富な本物の兵士達で有る、だから戦闘訓練も非常に厳しい。道場で習う軟弱な戦い方では無い実戦に即した汚い戦い方を習うのだった。
「あ~、生きてて良かった。皆スゲ~綺麗だな、俺は幸せ者だぜ!」
「レビン教官殿、どうかしましたか?」
「いや、何でもね~。ビシビシ鍛えてやるから覚悟しろよ! お前ら」
名前でお気づきかも知れないが、戦闘教官はレビン。彼は一月前にシュガーに蹴られて医務室に叩き込まれた男である、シュガーが怖くて竜騎士の戦闘教官から逃げ出したのだが、彼は竜騎士の中でも10本の指の中に入るほどの強者なので、国としても扱いに困って今度は竜騎士の従者の戦闘教官として使おうとしていたのだ。
そして彼は独身、そして独身の男なら誰でもそうだが非常に美人でナイスボディの美少女達の教官を出来ると言うのは非常にテンションが上がる立場だったのだ。そしてレビンは彼女達に良い所を見せたくてたまらなかった、勿論下心が有ったからだ。男なら誰でも彼女達と仲良くなりたいし、結婚したいと思うのが当然なのだった。
「よ~し先ずは男から始めるか! 4人同時に掛かってこい!」
「ハイ! 教官」
今回の従者候補生は20人、そして男の候補生が4人居た。全員高身長で容姿端麗、運動神経抜群の男達だ。彼等は卒業後に竜騎士の従者に成れなくても貴族の娘達の護衛や、金持ちの娘の婿等に簡単になれる男達で有る。
「「「「ウグ・・・・・・グ」」」」
「ハハハ、だらしないぞ貴様ら! 4人で1分も持たんのか!?」
候補生4人を簡単に地に這わせたレビンはご機嫌である。実戦経験豊富な戦士が素人相手にすれば当然なのであるが、身長2m体重120キロを誇るレビンが本気を出すまでも無く候補生4人を簡単にあしらって教官が強い所を見せたのであった。
「さ~て、次はお嬢ちゃん達だな。順番に掛かって来なさい」
「「「え~! 怖~い」」」
「大丈夫! 怖くないよ~、ちゃんと手加減するからね~」
レビン教官はスケベだったので、女性の戦闘訓練は一人づつ行う事にした。男は1分で全員ぶちのめしたが、女の子は美人ぞろいなのでなるべく長い時間楽しみたいのだった。そしてあわよくば色々な所を触ったりしたいのだった。
「ウヘヘヘヘ~」
「いや~ん! 教官のスケベ!」
「デヘヘヘヘ~、御免、御免、わざとじゃ無いよ~、ウヘヘヘ~」
セクハラ全開のレビン教官である。戦闘訓練なので美少女の体に触り放題、レビンは最高の気分で戦闘訓練を行って居た。勿論男はぶちのめすが、女性に怪我をさせる様な事はしない、殴る蹴るはしないで直ぐにからだを密着させて相手を捕まえるのだ、その時にすかさず尻や胸を触る程の技能を彼は持っていた。彼は今人生で最高の気分を味わっていたのだった。
「うん?・・・・・・」
「宜しくお願いしますわ教官」
普通の訓練生はレビンの前に立てばその瞳に怯えが見える。なにせレビンは身長2m体重120キロ、普通なら恐怖を覚える。だがこの目の前の美少女はまるで怯えていない、それどころかレビンを獲物を見る虎の様な目つきで見ているのだ。そして彼女はレビン相手に綺麗なお辞儀をしてみせた。
「君、名前は?」
「コア、従者候補生のコアと申します。以後お見知りおきを」
そしてレビンは叩きのめされた、何度起き上がっても無駄。何をしてもカウンターで全ての技を返され彼女の体に触れない。そして彼女に慈悲は無い、体中の急所を攻撃され泣き喚いて許しを請うまで彼女は攻撃をやめなかった。
「やめで下さい! もう逆らいマゼン」
「ならばここまでにしましょうか、もっと精進をする様にね! 教官殿」
「・・・・・・」
そしてレビンは2度目の医務室入院となった。彼はベッドの中で泣きながら自分の弱さを噛み締めていた、彼は自分が強いのではなく周りが弱かった事に気がついたのだ。それからの彼は精進して竜騎士の中でも5本の指に入るほどの強者になったが、周りには、自分は弱いと笑いながら話したと言う。
そして戦闘教官レビンを血まみれにして医務室に送り込んだコアはこの日から2つ名が付いた、戦う時に人形の様に表情の無い彼女は、候補生からブラッディ・ドールと呼ばれて恐れられる様になったのだ。