第21話 パンが無ければ・・・・・・
国と喧嘩するために辺境を強化する事にした辺境の絶対支配者コアさん、今は子飼いの兵士達を集めて演説中だ。
と言っても今は全部の兵士を集めても50人程しか居ない、辺境を制圧して僅か半年程。これでは幾らコアが優秀でも兵士を育てるには時間が足らないのだった。だがこれで限界って訳では無い、軍隊って奴は基幹になる兵士が居れば幾らでも普通の兵士を量産出来ちゃうのだ。自衛隊で言えば陸曹が沢山居れば彼等一人あたりに10人の新米を持たせることで兵力を直ぐに10倍に出来ちゃうのである、一般兵って言うのは特殊な能力や才能は必要無いから簡単に増産出来るのだった。まあ優秀な兵士になるには何年か掛かるのだが、何年かけてもダメなものは駄目なので年数だけじゃ能力が測れないのは一般の社会人と同じなのだ。
「貴様ら良く聞けい!」
「「「イエス! マーム!」」」
因みにコアに対する返答にはイエスしか無い、コアの辞書にNOと言う言葉は存在しないのだ。万が一イエス以外の言葉が発せられれば問答無用の鉄拳制裁である、性根を叩き直すまで鉄拳が顔面に炸裂するのだ。運が良ければ生きているし、運が悪かったり根性が足りなかったら一足早く神の元へと旅立つのだ。だが辺境の兵士にとってコアの鉄拳は怖いが、シュガーに殴られるよりはマシであった、シュガーに殴られれば人間の頭が赤い霧になってしまうのだった。すなわち一撃で存在自体を抹消される必殺の鉄拳なのだった。
「今日は子爵様からお褒めの言葉を賜った! 貴様らの働きに子爵様も感謝しているのだ!!!」
「「「「・・・・・・」」」」
急に褒められた兵士達は当惑して言葉を無くしている、コアに褒められるとは誰も思っていなかったのだ。それに他人から褒められた事等ない連中ばかりだったので、どう反応して良いか解らなかったのだ。
「馬鹿者ども!! 喜ばんか~!!」
「「「「「ウオオオオオオ~!!!!」」」」」
折角褒めてやったのに喜ばない兵士達にコアは青筋を立ててご立腹である、仕方ないので喜ぶように命令するのだった。そして兵士達はコアが止めろと言うまで全力で喜んで疲労困憊するのである。
「良し! 諸君。君たちを兵卒から兵長へと格上げする、給料も待遇も良くなるぞ!」
「「「「「ウオ~! バンザ~イ! コア様バンザ~イ!!!」」」」
給料と待遇が良くなれば皆喜ぶのはどの時代でも地域でも変わらない、兵士達のコアへの忠誠心は天元突破状態だ。ダガしかし、飴だけを与えて甘やかす程コア姉さんは甘くない、飴より辛い鞭が必ず付いてくるのだ。
「今日から貴様らは兵長、よって全員に10人ずつ部下を持ってもらうぞ。なお、兵士は居ないので自分達で調達する様に! 以上、解散!」
「「「「・・・・・・イエス!マーム!」」」」
コアの丸投げ作戦が発動した。昔の偉い人は(パンが無ければケーキを食えばいい)と言ったらしい、ならば兵士が居ないのなら捕まえれば良いのだ、悩む必要などどこにもないのだった、昔の偉人は立派な事を言った、つまり諦めるな、諦めたらそこで終わりだと言ったハズなのだ。それに都合が良いことに我が軍の兵士達は元は盗賊達だ、人さらいのプロ達なのだ!
そしてその日の夜に辺境の警備隊員達は集まることにした、コア姉さん帰還祝いと兵長への昇進祝いである。この宴会を開くためにコア姉さんからたっぷり金と酒を貰った兵士達は喜んで辺境の居酒屋に集まっていた。娯楽の少ない辺境での唯一の楽しみ呑み会である。
「今日はコア姉さんが辺境へ帰ってきて下さった祝いと、俺達全員の兵長昇進の祝いだ、皆好きなだけ呑んで食ってくれ! 因みに費用は全てコア姉さんの奢りだから皆心しておくように!」
「「「「(ノ゜ο゜)ノ オオォォォ-!!!! コア姉さんバンザ~イ!」」」」
宴会は大変な盛り上がりかたであったが、冷静な一人の言葉で全員が素面にかえってしまった。
「でもさ、隊長。コア姉様がおっしゃってた、自分の部下は自己調達ってどういう意味なんですかね?」
「そりゃあオメ~、自分の部下は自分で探せって事だ」
「成程~、流石は隊長! 頭良いっすね!」
「まああれだ、要するに自分の舎弟を10人つくれば良いって話だ。俺達は若頭になったんだから舎弟が必要って事だな」
「な~んだ、簡単っすね! 其処ら辺の奴らを少し脅せば良いっすね!」
「バッ! 馬鹿! なんて言う事言うんだオメ~!」
「辺境の人間に手を出したら、コア姉さんマジギレするぞ! シュガー様も黙って無いからな! シュガー様に殴られて赤い霧になって死にて~のか!
「か・・・・・・勘弁してしてくだせい。折角昇進したのに赤い霧に成りたくね~ッス!」
「良く聞けお前ら!! 辺境の人間はな、俺達の兄弟だから手を出したら駄目なんだよ! 分かったか! この馬鹿!」
「・・・・・・ウッス、スイマセン。俺馬鹿だから良くわからなかったッス」
「フヒ~、寿命が縮まったぜ。仲間が辺境の人間さらったりしたら俺まで殺される所ろだったぜ」
仲間の安易な考えで素面に帰ってしまった、兵士達。シュガーやコアが怒る所を想像しただけで寿命が縮まる程のトラウマを抱えているのだ。何せ彼等の仲間は大勢居たのだが、生きているのは此処にいる50人だけなのだ。
「じゃあ、どうしたら良いっすかね? 隊長」
「そりゃあアレだ、コア姉さん王都から子供を4人攫って来ただろ!? 俺たちも真似すりゃ良いんだよ」
「おお! 成程、姉さんの真似すりゃ怒られないっすね!」
こうして辺境の兵士達は馬車に乗って王都へと旅立って行った。元々王都のスラム出身者が多いので、この手の事には慣れきっている熟練のプロ集団なのだ。
しかし、王都に出かける前にコアに挨拶に行った兵士達はコアに酷く怒られる事になる。
「姉さん、王都に行ってきやす。ちょいと部下を調達してきやす」
「うむ、ご苦労。期待しておるぞ隊長」
「ウッス!人さらいなら得意でさ」
ニコニコして言う隊長にたいしてコアはチョット片方の眉が上がった。その場の気温が一気に20度程下がった感じがして兵士達はその場で死を覚悟した。何か知らないが、コアの機嫌を損ねた様だ。隊長の顔もまっ青になる。
「人聞きの悪い事を言うな! 私は子供を攫って来たわけじゃ無い!」
「私は彼等を保護したのだ! 良いか! 保護だ!」
「・・・・・・保護?・・・・・・」
「帝国に虐げられた哀れな子供たちを保護して新しい幸せな日々を与えるのだ! 言うなれば此れは聖戦なのである!! 良いか諸君! 正義は我にあり! 我々こそが正しい! 帝国は悪である!」
「「「「「「オオオオォォォォォォ~!!! 聖戦バンザ~イ! コア様バンザ~イ!!!!」」」」
コアのアジ演説に簡単に引っかかる兵士達、庶民や小悪党って奴は正義が大好きなのだ。何かする時に大義名分って奴がないと不安でしょうがないのだな、だからコアは彼等に大義名分を与えてやったのだ、コアは生まれながらの政治家なのかも知れない。
そして兵士達は正義を胸に秘めて王都や周辺の街に意気揚々と旅立って行った。




